• コラム

お金に関する意思決定と自己評価

お金に関する意思決定と自己評価

過信も卑下も要注意

 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、2024年10月から25年3月までに新規で住宅ローンを利用した人々の4人に1人、25.5%が35年超の返済期間を選択した。22年4月の同調査では10人に1人(9.3%)だったことを考えると、返済期間長期化のリスクはローンの貸し手と借り手の双方に影を落としそうな気配である。

 背景の一つは住宅価格の上昇である。国土交通省「不動産価格指数」によると、中部地方の戸建住宅価格は上記期間に5.2%、マンション(区分所有)は10.6%上昇している。前述の実態調査では、購入資金の確保にあたり変動金利型ローンを選ぶ利用者が増加していることが示されている。月々の返済負担の軽減も家計管理には大切だが、日本銀行による政策金利の引き上げは変動金利上昇につながり、返済負担が増加する可能性もある。

 固定金利型のローンは利用開始以降に政策金利の影響を直接受けることはないが、近年の物価上昇や収入環境の問題からか、状況の厳しい家計の増加も示唆される。固定金利型ローン「フラット35」関連商品を扱う同機構の投資家向け説明資料によると、24年度のリスク管理債権(返済に不安が生じている債権)は6649億円で、22年度の7730億円から減少している。しかし、利用者の破産などで回収の難しい債権や3ヶ月以上の延滞に直面している債権の比率はリスク管理債権の48.7%(24年)で、22年度の39.8%から上昇傾向にある。リスク管理債権以外を含むすべての債権に占める比率は1%台前半で、全体への影響は限定的だが、債務返済に困難を抱える世帯の増加が懸念される。

 住宅ローンなどの債務管理に対する金融行動は、金融に関する基礎知識(金融リテラシー)を身につけることで向上できると期待されている。特に、金融教育プログラムや専門家のアドバイスはお金に関する意思決定をサポートし得ることが海外の研究を中心に確認できる。

 ところが、実際の知識以上に「自分はよく分かっている」と過信する人は金融教育やアドバイスに対してさまざまな思いが心を巡るようである。アドバイスを求めたがらない、複雑な仕組みの住宅ローン商品にチャレンジする、合理的でない資産保有をするなどの特徴が複数の研究で示され、結果として滞納などの事態に陥る傾向があることも報告されている。

 では、リテラシーは高いのに「あまり理解できていない」と卑下する人はどうか。過剰に自己評価が低い人はかえってローンを滞納する確率が高いと指摘する研究もある。自分の知識への不安が強いと専門家などにアドバイスを求める傾向が高まるものの、その情報に依存しすぎることで効果的な判断を損なうのかもしれない。

 金銭が絡む判断は容易でなく、アドバイスが必要な場面も多い。知識の取得も必要だが、過信にも卑下にも偏らずバランスの取れた自己評価に努めることがお金に関する意思決定の要点だろう。

Profile

遠藤秀紀 経済学部 教授

  • ※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2026年1月15日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

この記事をシェアする

一覧へ戻る

企業・メディアの方々へ

本サイトに掲載された記事について、執筆者である本学教員への取材および、記事の使用、リンクのご要望、情報提供のご要望などのお問い合わせは下記までご連絡ください。

nfu-contact@ml.n-fukushi.ac.jp

日本福祉大学 学園広報室 0569-87-2212
営業時間 9:30~17:00(土日、祝日を除く)

関連する記事