わが国は世界有数の長寿国であり、認知症と共に生きる人々の数も増加しています。65歳以上の高齢者を対象に行われた2022年の調査では、約3人に1人が、認知症あるいはその前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)の人に該当すると推計されています。誰もが認知症になり得ることを前提に、たとえ認知症になってもその人らしく暮らせる社会の創造が求められています。
今回の夏季大学院公開ゼミナールでは、認知症と共に生きるご本人やご家族の語りに触れながら、社会福祉学、医学、看護学、工学、保健学など、さまざまな分野の実践者や研究者と共に、Well-beingについて考えます。領域を超えた対話を通じて実践知をつなぎ、「ふくし」のあり方を広げていく機会にしたいと思います。 皆様のご参加をお待ちしております。
日時 |
2025年 7月26日(土) 10:00~16:30(9:30受付開始) 7月27日(日) 10:00~15:30(9:30受付開始) |
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会場 |
日本福祉大学名古屋キャンパス (名古屋市中区千代田5-22-35) (一部の企画を除きオンライン会議システムZoom との併用) |
主催 |
日本福祉大学福祉社会開発研究所 |
後援 |
日本福祉大学同窓会 |
【1日目】7月26日(土) ※午前・午後ともオンラインでの参加が可能です。
基調講演 10:15~11:25
「語りの生成との出会い:時・人・場
~語り手は聞き手の姿勢を見抜き、受け止めている~」
野村 豊子(日本福祉大学 客員教授、福祉社会開発研究所 研究フェロー
日本社会福祉士会認定社会福祉士認証認定機構 参与)
認知症の人との出会いは、40年以上前カナダの老人ホームでの日系一世のご夫婦とのケースワーク、及び8人の入居者の方々との回想グループに始まります。以来、私の目の前には、回想法・ライフレヴューをはじめ、各方面での臨床実践と諸研究の狭間の体験がうず高く積まれており、聴く者の倫理・価値観を問われて、今に至っています。
高齢者ご自身、ご家族、対人援助専門職、院生の方々が一同に出会い、話を交わされるこの得難い機会にお呼びいただいたことに、改めて感謝申し上げます。本講座では、語りの生成との出会い:時・人・場と題し、認知症の人が本来持たれている可能性、時を超えて、あるいは時の認識を変えて、今と未来を生きる方向性をご一緒に考えることができれば幸いです。
研究報告 11:35~11:55
「認知症当事者を対象としたインタビュー調査方法の検討
-ショートステイを利用する認知症高齢者へのインタビュー調査を通して-」
西村 朋美(ショートステイつつじガーデン三条裏館 看護師)
認知症ケアでは、当事者の声を聞くことが重要です。実践の場では、声を聞こうとしていますが、難しいこともあります。研究においても、認知症当事者から語りを得ることは難しいとされています。そこで、私は認知症当事者を対象としたインタビュー調査方法を検討しました。先行研究のレビューに基づき、インタビュー調査を実践し、工夫することで認知症当事者の語りを引き出すことができました。そこで得られた知見をお伝えします。
当事者の声 13:00~14:00
「認知症の人と家族の一体的支援 ―出会いなおしの実践-」
鬼頭 史樹(一般社団法人ボーダレス 代表理事 ソーシャルワーカー)
認知症の人と家族の一体的支援事業(一体的支援プログラム)は、令和4年度より地域支援事業となり、全国に広まりつつあります。このプログラムでは、参加者(本人、家族、専門職など)の”やりたいこと”を話し合い、それをともに実現するプロセスを通じ、本人と家族の関係性、あるいは本人・家族と専門職の関係性にアプローチします。岐阜県各務原市にて取り組んできた”出会いなおし”の実践を本人・家族とともに紹介します。
シンポジウムⅠ 14:10~15:10
「Well-beingを支える多職種・多機関連携」
本シンポジウムでは、医師として活躍する洪先生より「認知症当事者の思いを大切にした食を通した多職種連携」についてお話しいただきます。さらに、愛知県みよし市で認知症地域支援推進員として活躍されている近藤氏から、「当事者の声を起点とした地域づくりの実践」についてご紹介いただきます。当事者の思いを尊重しながら多職種・多機関が連携していった取り組みを参考に、今後の支援の在り方を考えたいと思います。
シンポジスト | 洪 英在 | (日本福祉大学 社会福祉学部 教授) |
近藤 隆彦 | (愛知県みよし市 保健師/認知症地域支援推進員) | |
コーディネーター | 伊藤 美智予 | (日本福祉大学 社会福祉学部 准教授) |
シンポジウムⅡ 15:20~16:20
「暮らしのデザインとWell-being」
本シンポジウムでは、岡橋先生より「ユニバーサル・フレンドリ・ファシリティを創る実践的研究」についてご報告いただきます。毛利先生からは、工学的な視点から「穏やかな暮らしのための施設デザイン」についてお話しいただきます。認知症の人にとってもそうでない人にとっても、すべての人にとって暮らしやすい環境について、皆さんと共に考えていきたいと思います。
シンポジスト | 岡橋 さやか | (和歌山リハビリテーション専門職大学 教授) |
毛利 志保 | (日本福祉大学 工学部 准教授) | |
コーディネーター | 横山 由香里 | (日本福祉大学 社会福祉学部 准教授) |
【2日目】7月27日(日) *分科会により定員・参加方法(対面・オンライン)が異なります
分科会テーマ「研究力を磨こう」
A分科会
定員30名(対面参加のみ)
実践研究の方法を学ぶ-実践研究に「相対化」をどう取り入れるか?
平野 隆之(日本福祉大学 名誉教授、客員教授、
福祉社会開発研究所 研究フェロー)
社会人院生の多くは、自らの実践経験を研究的に振り返る方法の習得とその示唆を目指して大学院に来ます。しかし、自らの実践に焦点化することで達成感は得られますが、同時に相対化の視点をもつことで、より大学院での学びの意義が高まります。その相対化に挑戦するための研究実践を紹介します。二人の報告者の修士論文のプロセスから、自らの実践の相対化のための調査対象の抽出や組織化、その成果を踏まえた論文の構成の工夫などを学びます。
報告者 | 市川 貴大 | (静岡県社会福祉協議会) |
報告者 | 猪俣 健一 | (阪南市社会福祉協議会) |
B分科会
定員30名(対面参加のみ)
「プロセス」を可視化するための質的研究-複線径路等至性アプローチ(TEA)を学ぶ
田中 千枝子(日本福祉大学 福祉社会開発研究所 研究フェロー)
日本福祉大学質的研究会は、毎年、質的研究を適正に行えるよう「質的研究事始め」、「夏季大学院公開ゼミナール分科会」「継続研修会」の3つの研修を行っています。5月の「事始め」では質的研究の基礎の学習とインタビュー実習を行いました。本分科会では、質的研究とは何かを理解した上で、「プロセス」の内実や影響した要因を「見える化」して当事者の変化や歩みを明らかにする「複線径路等至性アプローチ」による分析の実際を演習形式で学びます。分析の演習は、本分科会が最初になりますので「事始め」に不参加だった方も一から学べるものになっています。なお、「継続研修会」は、11月2日(日)、23日(日)の2日間の日程で実施します。
講師 | 田中 千枝子 | (日本福祉大学 福祉社会開発研究所 研究フェロー) |
鈴木 俊文 | (静岡県立大学 短期大学部 教授) | |
坂野 剛崇 | (大阪経済大学 人間科学部 教授) | |
篠原 直樹 | (東海大学 健康学部 助教) |
Ⅽ分科会
定員 対面参加15名、オンライン参加15名
量的研究の読み方と分析方法を学ぶ
横山 由香里(日本福祉大学 社会福祉学部 准教授)
本分科会の目的は、①量的な先行研究を「読む力」を身に着けること、②基礎的な量的分析に挑戦すること、の2点です。質的な研究を検討されている方でも、量的な研究の読み方を知っておくことが有用です。本分科会では、査読を経た実証研究論文を教材にしながら、論文の読み方を解説します。また、教育目的用のデータを使って、皆さんご自身で分析する演習を予定しています。初歩的なところから説明しますので、統計に苦手意識のある方にもご参加いただき、実践の評価やご自身の研究に役立てていただければと思います。
※C分科会は、統計ソフトの都合上、対面参加を15名までとさせていただきます。
オンライン参加される方は、ご自身のPCに統計ソフト(SPSS)がインストールされていることが参加条件となります。
ご参加について
参加料金 ※対面参加・オンライン参加ともに同料金
一般 |
5,000 円 |
本学 在院生・在学生 |
2,500 円 |
申し込み方法
ご希望の申込フォームからお申し込みください。
※参加をご希望される分科会ごとに申込フォームが異なります。
なお、対面での参加をご希望される方は、先着順となりますので対面参加をご希望いただいても、オンラインでの参加をお願いすることがございます。
申し込み締切 ※参加人数に定員のある企画では、定員に達し次第締切となります。
2025年7月16日(水)
入金期限
2025年7月18日(金) ※詳細は申込のあった方に通知します
個人情報の取り扱いについて
個人情報は、本ゼミナールの運営および本学が実施する各種講座などの案内に利用させていただくことがあります。その他の目的には一切使用いたしません。
対面会場のご案内
日本福祉大学名古屋キャンパス
【アクセス】JRまたは地下鉄「鶴舞」2番出口より徒歩約5分
(〒460-0012 愛知県名古屋市中区千代田5-22-35)
※会場に駐車場はございません。公共交通機関をご利用ください。
・全企画(オンライン参加を除く)の会場は名古屋キャンパスです
・オンライン参加の方への受講用Zoom情報の送付は、開催数日前に行う予定です

問い合わせ先
日本福祉大学 研究課
(夏季大学院公開ゼミナール事務局)
Email: kakidai_entry@ml.n-fukushi.ac.jp
(お問い合わせは上記メールアドレスまで)
〒460-0012 愛知県名古屋市中区千代田5-22-35