第17回日本福祉大学夏季大学院公開ゼミナール
社会人大学院教育のあり様と
大学院生・修了生の研究の学び

   日本福祉大学夏季大学院公開ゼミナールでは、毎年、様々な方向から「研究」についてアプローチするテーマを提示してきました。今年度は日本福祉大学大学院の教育システムを題材に、院生修了生らを通じた実践現場への研究の諸活動の影響性や多様性が展開されている現状と課題を確認します。日本福祉大学では当初より社会人大学院を構想し、通信・通学の両システムの導入、領域演習方式、系統的な研究計画指導をはじめとし、ケースメソッド学習、実務家教員制度、質的研究会による教育と研究の循環、学び直しによるフィールドワークなど、多面的な実践家でもある社会人学生への教育システムの開発に取り組んできました。午前のシンポジウムⅠでは、これらの大学院教育上の取組みと展開を振り返り、その到達点と課題を検討します。

   午後のシンポジウムⅡでは、これらの教育システムを体験した修了者を含む院生の立場で、大学院の研究に対する学びからわかったことや実践家の研究への参加が現場にもたらしたものの評価を行うとともに、実践者の多様なキャリア形成を支援する現場への研究文化の醸成に貢献できるシステムの開発を検討する基盤を考えたいと思います。

   日本福祉大学大学院では、先駆的に通信教育におけるオンライン上の掲示板やオンデマンド教育が行われてきました。それに加え、昨年来コロナウイルスの感染防止対策ではじまったZoom等を用いた教育・指導・研修の経験とその成果は、今後の社会人教育のあり方に大きな影響を与えることになりました。近年博士課程への進学希望者も多くなり、大学院にはより高度なかつ多様なキャリア形成の支援が求められており、博士課程における教育プログラムの充実も重要な課題となっています。

   この2つのシンポジウムを通じて、社会人大学院における教育システムのさらなる発展と開発を研究することを目指します。なお研究者の語りでは、長年大学院教育に携わってきた田中千枝子先生が、現場と研究の融合をめぐるアプローチを振り返ります。

日時
2021年
731日(土)
10:00~16:30(9:45受付開始)
8月1日(日)
10:00~15:30(9:45受付開始)
開催方法
オンライン会議システムZoomミーティング形式
主催
日本福祉大学福祉社会開発研究所
後援
日本福祉大学同窓会

7月31日(土)

シンポジウムⅠ 10:00~12:00

「日本福祉大学社会人大学院教育システムのあり様とその評価・課題」

社会人大学院教育への通信制の導入と
博士課程への展開・充実に向けて

シンポジスト 児玉 善郎 (日本福祉大学学長・大学院委員長)

実践現場での研究活用と
研究文化の醸成を中心に

シンポジスト 平野 隆之 (日本福祉大学大学院特任教授)
座長 小松 理佐子 (日本福祉大学社会福祉学部教授 ・ 大学院 社会福祉学研究科長)

 日本福祉大学では当初より社会人大学院を構想し、通信・通学の両システムの導入、領域演習方式、系統的な研究計画指導をはじめとし、ケースメソッド学習、実務家教員制度、質的研究会による教育と研究の循環、学び直しによるフィールドワークなど、多面的な実践家でもある社会人学生への教育システムの開発に取り組んできました。この教育システムを題材に、これらの大学院教育上の取り組みと展開を概観しつつ、院生・修了生らを通じた実践現場への研究の諸活動の影響性や多様性が展開されている現状と到達点の評価およびよりよく機能するようにその課題を検討します。

【休憩:1時間】

シンポジウムⅡ 13:00~14:45

「社会人院生による研究の学びの評価と、現場文化への還元」 

シンポジスト 山内 哲也 (日本福祉大学大学院実務家教員・
障害者支援施設リアン文京総合施設長)
シンポジスト 宇佐美 千鶴 (日本福祉大学大学院博士課程・
NPO法人東海福祉移動研究協議会・
ケアマネジメントセンター和奏)
シンポジスト 榊原 麻子 (日本福祉大学大学院博士課程)
座長 篠田 道子 (日本福祉大学社会福祉学部教授)

 シンポジウムⅡでは、これらの教育システムを体験した修了者を含む院生の立場で、大学院の研究に対する学びの活動からわかったことや、実践家としての研究への取り組みや参加が、現場や社会にもたらしたものの自己及び活動を振り返りその評価を行います。そして日本福祉大学大学院の教育システムが実践者としての多様なキャリア形成を支援する現場への研究文化の醸成に貢献できるよう、さらなる開発を検討する基盤について考えたいと思います。

研究者の語り 15:00~16:30

「理論と現場の架け橋になる 実践と研究の融合をめぐるアプローチ」 

語り手 田中 千枝子 (日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授)
コメンテーター 小西 加保留 (元関西学院大学教授)

 大学院修了から15年間実践者であった私は、かねてから実践現場と実践理論の乖離に問題意識をもってきました。そこで理論と現場の架け橋となるつもりで、大学教員となりました。そこで次代のソーシャルワーカー養成教育を試みる中で、私にとっての「研究」の意味とアプローチの方法を学びなおした思いを持ちました。今回この研究アプローチを振り返る機会をいただき、私の「実践:研究観」に影響を与えていただいた環境や方々への感謝を込めつつ、実践と研究の融合をめぐる私のアプローチをナラティブに整理しお伝えしたいと思います。

8月1日(日)

分科会 10:00~15:30

A分科会  定員:20名

量的研究の進め方とアウトプットの仕方
-査読付き雑誌への掲載に向けて

  末盛 慶 (日本福祉大学社会福祉学部教授)
  小沼 聖治 (聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科助教)

 本分科会は、量的研究の進め方とアウトプットの仕方について学びます。量的研究の進め方に関しては、研究テーマの決定から仮説の設定、調査方法、調査実施、分析までのプロセスを説明していきます。その後、手もとにある分析結果をどのようにして学術的な成果としてアウトプットしていくかについて説明していきます。
 以上の説明を踏まえ、ゲスト講師の方に、実際の量的研究の進め方とアウトプットの仕方について実体験を交えながらわかりやすく説明していただきます。どのように調査を実施したのか、どのように質問紙を回収したのか、そして、その成果をどのようにアウトプットしてきたのかについて説明していただきます。具体的には査読付きの雑誌にどのように投稿して、どのように掲載されていくのか、そのプロセスについて具体的に語っていただきます。
 量的研究を用いて、自分自身の問題関心を表現したい方、すでにデータがあり、どのように分析していけば何が明らかにできるのかを知りたい方、ある程度分析結果はまとまっているが、どのようにしてアウトプットとして発信していけばいいのかを理解したい方等、多くの方々のご参加をお待ちしております。

B分科会 定員:21名

質的研究(調査)法への誘い

  田中 千枝子 (日本福祉大学社会福祉学部教授)
  塩満 卓 (佛教大学社会福祉学部准教授)
  山内 哲也 (日本福祉大学大学院実務家教員・
障害者支援施設リアン文京総合施設長)
  坂野 剛崇 (大阪経済大学人間科学部教授)

 本分科会は、質的研究に関し2つのことを学びます。 一つ目は、質的研究による研究テーマ・分析テーマの検討の仕方です。分析テーマの検討は、研究の最初の一歩であり、その方向、歩幅によって、その後の到達できる距離、見える風景(ゴール)は変わってきます。分析テーマの検討の仕方について概説した上で、演習を通して深めていきます。
二つ目は、質的データ(インタビューデータ)の分析方法です。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を手法として取り上げ、その特徴と具体的な分析の手順についての講義の後、分析ワークシートを用いた演習を行います。クリアな結果を出すための分析方法の取得のためには、「習うより慣れろ!」 です。ぜひ体験的に学んでいきましょう。 なお、10月16日(土)・17日(日)には、M-GTAによる概念・カテゴリー生成、現象特性の図解、ストーリーラインまでを演習形式で体得する「継続研修会」を予定しています。
本分科会と継続研修会を通して、充実した研究へとステップアップしてほしいと思います。

C分科会 定員:25名

学術雑誌に受理される研究の魅せ方;
先行研究を踏まえてナレッジギャップを整理する

  斉藤 雅茂 (日本福祉大学社会福祉学部准教授)

 どのような研究手法を採用されるにせよ、誰もが行うのが先行研究のレビューです。「先行研究を的確に踏まえているか」は学術雑誌への掲載可否を決める一つの評価項目でもあります。先⾏研究のレビューは「調べること」がゴールではありません。単に先⾏研究を羅列するのではなく、これまでに何がどこまで明らかになっていて,未解明の事柄は何なのかを魅せることが求められます。その際に、学術論文の基本的な構成を押さえておけると1本の論文を読むのに要する時間を大幅に短縮できるだけでなく、受理されやすい学術論文を執筆できるようにもなります。本分科会では、学術雑誌の基本的な構成や主要な統計解析の読み方を概観したうえで、学術論文の収集からレビュー、ナレッジギャップの言語化までを演習形式で行います。加えて、研究成果を学術雑誌に投稿することを念頭に置き、「査読」という関門の突破にむけての考え方や具体的な対策について演習できればと考えています。そもそも学術論文や研究活動というものにご関心がある方、先行研究レビューで躓いておられる方、今後学会報告や学術論文の投稿を予定されている方、論文投稿をしてもなかなか良い結果をもらえずに困っている方など多くのご参加をお待ちしております。本分科会はZoomによる遠隔会議システムでの運営を予定しています。遠方の方もご気軽にご参加頂ければと存じます。

D分科会 定員:制限なし

フィールドワーク研究

報告者 吉村 輝彦 (日本福祉大学国際福祉開発学部教授)
「フィールドワーク研究の紹介」
原 智美 (伊那市社会福祉協議会)
「フィールドワーク研究から課題研究へ」
加藤 慎康 (合同会社カモケンラボ代表社員・
木曽三川電力みのかも株式会社代表取締役)
「福祉開発実践による新しいフィールドの開拓」
コーディネーター 平野 隆之 (日本福祉大学大学院特任教授)

 地域再生のための「福祉開発マネジャー」養成プログラム(大学院)でのフィールドワーク研究を紹介するとともに、同プログラム修了者による課題研究の内容を紹介します。また、修了者による「福祉開発実践」によるフィールド開拓の実際を学びます。狭い福祉領域を越えた実践をどのように開発してきたのか、そのプロセスでどのようなことに悩んできたのか、また、プログラムを通して自らの取り組みをどのように振り変えることができたのか、その実践内容を紹介します。

参加申込方法

参加料金

4,500 円
(2日間参加:1 日のみ3,000 円)

*本学院生・学生2,500 円(1 日のみでも)

※参加料金は事前にお振込みいただきます。お支払い済みの参加料金は、開催中止の場合以外、払い戻しはいたしません。

申し込み方法

以下の申し込みフォームからお申込みください。

申し込み締切

2021年7月16日(金)

個人情報の取り扱いについて

個人情報は、本ゼミナールの運営および本学が実施する各種講座などの案内に利用させていただくことがあります。その他の目的には一切使用いたしません。

お願い

  • 申し込み完了後、入力いただいたアドレス宛にゼミナール受付メールが届きます。
    参加料金は、ゼミナール受付メールに記載の口座に、7月19日(月)までにお振込みください。
  • Zoomの注意事項
    • 予めご自身で情報機器、通信環境、Zoomアプリケーションソフト及びアカウントをご用意ください。
    • Zoomのアドレスは、ゼミナール申込時のメールアドレスに7月29日(木)に送信予定です。
      届かない場合には、7月30日(金)問合せ時間内にご連絡くださいますようお願いいたします。
    • Zoomミーティングに参加する際には、名前の前にゼミナール受付Noを入れてください。
  • 今後の社会情勢によっては、当ゼミナールについて、開催方式の変更・開催中止となる可能性があります。予めご了承ください。

問い合わせ先:平日10:00 ~ 17:00

日本福祉大学研究課
(夏季大学院公開ゼミナール事務局)

TEL:090-4855-3590
Email: kakidai_entry@ml.n-fukushi.ac.jp

《Zoom接続についてのお問い合わせ》

TEL:052-242-3075【名古屋キャンパス研究課】