5.システム導入の効果

 実証試験を通じて、専門職からは現在の健康データを確認できることや、動画により住民の表情が確認できることから、生活指導や食事指導などの業務が円滑に行えるという評価が得られた。また、使用した高齢者からも安心感につながったという評価が得られた。在宅福祉・健康管理システムは、訪問サービスを補完するための一つの手段として有効であると考えられる。また、高齢者が日常的にデータを測定し蓄積することで、専門職にとっては効率的かつ適切なアドバイスが可能になり、高齢者自身にとっては健康意識が向上するなど、付帯的な効果を期待することができた。適切なアドバイスの実現とともに、高齢者自身の健康意識を向上させることは福祉サービスの質の向上に資する効果であるといえる。

 


 実証試験では、試験用に開発したソフトウエアの他、汎用的に利用されているMicrosoft社のMessengerを利用したが、実証試験前は高齢者や専門職にとって操作への不安があった。実際、通信システム等を含めたソフトウエアの操作性は課題が多く、実運用にあたって、より操作性の優れた専用端末の開発について検討する必要があると考えられる。一方、操作が難しい現時点の状態においても、実証試験でシステムの利便性を理解した参加者からは継続的に利用したいという評価が得られた。操作性の向上は必要であるが、情報機器の利便性についての普及活動も同様に重要であることが確認できた。

 こうした実証実験は関係者の調整、全体のコーディネートを行える人材の存在が非常に枢要であり、今回は町役場の企画情報課のスタッフがその任に当たり、スムーズに実証実験を行うことができた。あらためて地域内のキーマン、旗振り役の重要性を認識できた。

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パソコンに向かって、健康相談を受けている松下周子さん(73)。
後ろは情報ボランティアの道下友樹君と松下周平君。

 

情報ボランティアの山田茜さんが描いてくれた実証実験
(中村フサエ(69)さん宅)の模様。
小学校に掲載されていた。

 


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