３．結果と考察

　高根の森では全部で６種の樹木が確認できた．高木層ではアカマツ，コナラが優占しており，ハイネズを加えたこれらの３樹種はいずれも外生菌根形成樹種であった．亜高木層・低木層では陰樹のヒサカキがほとんどであった．また，林内では至る所で陰樹が除伐された跡が確認された．倒木なども一ヶ所にまとめられており，プロット内では目立った倒木は確認できなかった．
一方，のぞみヶ丘では高根の森より多くの樹種が確認でき，全部で７種の樹木が確認できた．しかし，アカマツはすべて枯死しており，菌根形成樹種はコナラしか確認できなかった．また，コナラ，ハンノキを除く樹木は，すべて陰樹であった．高木層ではコナラが優占していたが，亜高木層・低木層ではヒサカキやカクレミノといった陰樹が優占していた．林内では，常緑樹により被圧を受け，立ち枯れしたコナラが数本みられた．また，コナラやアカマツの倒木が12本確認され，いずれも腐朽が進んでいる様子が観察された．
各調査地における土壌の物理性について調査した結果を表−１に示す．リター層の厚さは，高根の森においては局所的に堆積している箇所はみられたものの，多くの場所で薄かった．一方，のぞみヶ丘では圧倒的に厚く（表−１），計測したどの地点においても，未分解の落葉などの有機物が厚く堆積している様子が観察された．土壌含水比においても，のぞみヶ丘の方が高かった．また，各調査地とも日当たりが悪く，リタ−が厚く堆積した場所において，含水比が高いことが確認された．

表-1　各調査地における土壌の物理性の違い
（平均±標準偏差）

以上の結果から，高根の森では人為的に雑木林が管理されているため，林床に有機物の蓄積しにくい環境となっているのに対し，のぞみヶ丘の林床環境は枯死した倒木が多く，有機物や土壌水分の多い富栄養な状態であることが明らかとなった．
キノコ相調査の結果，高根の森において採集されたキノコの総種数は23種であった．そのうち菌根菌のキノコはキヌハダトマヤタケ（写真−１）など12種で，約半数を占めた（表−２）．一方，落葉分解菌のキノコは，６月，８月から９月の降雨量の多い月に多くの発生が認められ，６種が確認された（表−２）．そのうち，４種がスジオチバタケなどの小形のキノコで，局所的に群生している様子が観察された（写真−２）．また，木材腐朽菌のキノコはプロット内に倒木がないため２種しか確認できず（表−２），それらの２種は除伐跡から発生していた．このように，高根の森では調査期間の６月から11月までの期間を通して，菌根菌のキノコの発生が多く認められ，菌根菌にとっては生育しやすい環境であることが明らかとなった．

写真-3　木材腐朽菌のキノコの一種の「カワラタケ」

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