2. 研究計画・方法

(1)本研究では, 以下の内容の調査研究と取り纏めを実施する.
1)在宅介護に関わる福祉情報論の体系的な構築とマッチングシステムのあり方の考察
2)ヒアリング調査の実施と知的資産ネットワークの利用による在宅介護サービス情報の収集とデータベース化の考察
3)インターネット, データベース等の情報技術を利用したニーズとサービスをマッチング(処遇)させるためのプロトタイプ・システムの構築と評価に関する考察

(2)研究計画・方法
1)行政や現場の第一線で活躍する福祉専門家による知的資産ネットワークを利用し, 彼(女)らの意見を重要視しながら, 在宅介護の枠組みを踏まえた福祉情報論の体系的な構築を行うためのブレーンストーミングを行う. 在宅介護サービス分野における情報システムの導入, ニーズとサービスとのマッチングにおける情報システムの効果的な活用, 情報提供のあり方, 関係機関を結ぶ情報ネットワークへのあり方などについて, 問題点と課題を整理し, 一定の方向性を見出す.
2)この知的資産ネットワークの活動により, 地域に存在する官民の在宅介護サービスの情報を収集する. より効果的で均質な収集結果を得るため, ヒアリングシートを別途作成する.
3)収集された在宅介護サービスの情報を効率的に管理するため, データベース化する構造と標準化法について厚生省の指針や他の事例を参考にしながら考察する.
4)効果的な Web とデータベースのリンクを実現するための方法について検討する.
5)プロトタイプとして望まれる機能を要介護者および家族の視点から検討し, 最新技術を適用したシステムを構築する.

(3)研究推進体制
 本研究の実施にあたっては, 5市 (知立・安城・刈谷・高浜・碧南) の福祉課に調査協力をお願いし, さらに研究会メンバーとして社会福祉協議会や在宅介護支援センターのソーシャルワーカーやコーディネータ等に参加を要請している. また, 福祉データの収集やシステムの概念設計などの実作業は, 社会福祉学部学生を中心で構成された研究グループ 「福祉情報研究会」 が取り行っている.



3. 社会的先進性

(1)行政枠を超えた福祉ナビゲーションシステムの構築
 福祉領域に 「どんなサービスがあるか分からない」 「窓口が多くて行き先が分からない」 という課題に応えるために, 生活情報からサービス・制度・手続き・介護機器までの情報を広範に含む 「福祉ナビゲーションシステム」 の構築というコンセプトを取り入れる. 福祉サービス利用のための選択権を利用者に提供し, 具体的にニーズに応じた関連情報を提示しながら, サービスを自分自身で選択するまでのプロセスをサポートする, まさに 「ナビゲーションシステム」 の考え方である. ここでは高浜市とその行政枠を超えた周辺地域を含む, 包括的で的確な福祉・生活情報の提供を行い, 市民生活面での利便性が得られとともに, 市民の QOL 向上に貢献できる.

(2)介護保険をカバーした福祉領域の地域情報化
 従来の措置制度に象徴されるようなパターナリスティックなサービス提供方式から, 今後の介護保険導入でサービス利用者のニーズや状況に応じた選択方式への転換が進むと考えられる. 次世代の高度な情報システムを駆使して多元的サービスの組み合わせを提案できるコーディネート機能が福祉業務の介護認定業務などの川上から介護給付事務などの川下にいたるトータルな分野で望まれる. 福祉サービスの提供者が最適なサービスを提供するためには, 在宅ケアと施設ケアが融合したり, 関係サービスの一体的提供が望まれ, 関係者間で情報ネットワークを構築し, 情報共有しておくことが欠かせない.

(3)福祉ニーズの把握と新しいビジネスチャンス (産業構造の変革) の期待
 次世代の情報システムは, 福祉分野に対する市民の新たなサービスニーズの把握が可能となるキャッチシステムとも位置づけられる. 市民ニーズに応じた, ハイクオリティな生活や福祉サービスを広域的に供給することが可能となる. これらを背景として, バリアフリーに関わるサービス提供を実施する新産業を創出することができ, 地域の活性化が図られる.

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