3. 本調査研究から期待するもの

(1)地域福祉情報化システムの構築
 ニーズの多様化が進むなかでは, 正確さ, わかりやすさ, 迅速さに配慮した情報公開を行い, 継続的にサービス事業体と住民の双方向のコミュニケーションをとることが大切である. それによって利用者の満足度とサービスの質の向上をめざしていく必要がある.

(2)介護保険制度の適正運用のために
 本格的な高齢社会への対応を目前にひかえ, 平成 12 年から公的介護保険制度の実施にむけて, 介護保険制度を効率よく運用していくための運営事業体を新たに創造していく必要がある. それは,1)個々の自治体ごとの高齢者要介護世帯の在宅生活を可能にするケアマネジメント・モデル事業の実用化をはかること,2)介護保険制度対象外の高齢者の健康づくりや虚弱高齢者の早期発見・早期対応のシステムづくりと家族介護者の介護困難を早期に解決していく地域情報化システムの構築を目指すこと,3)介護保険制度の中核的機能となるケアマネジメント・システムを広域圏で効率的に運営していくための課題を明らかにすることである.

(3)ケアマネジメントシステムの構築
 介護保険の導入により, これからの福祉サービスがより多くのニーズをカバーしていくためには, 市場競争力を持った利用コストの低い社会サービスを形成しなければならない. この利用コストの低さと同時に, サービス・利用価値・使いやすさ等総合的な質の高さの確保も追求する必要がある.



4. 第1次調査結果から読み取れる課題

1)病院等から退院して在宅で生活している要支援・要介護状態にある高齢者への介護は, そのほとんどが家族により担われている. 高齢者本人への在宅ケア・サービスはもちろんであるが, 家族ケアの負担軽減に関する社会サービスの開発と提供が必要である.
2)在宅サービスについてはあまり利用されておらず, また比較的利用率の高いのはひとりぐらし層であったことから, 在宅の独居高齢者向けの社会サービス情報双方向システムの開発が必要である.
3)身体的な状態と精神的な要因を併せ持った在宅要支援・要介護高齢者に対する社会サービスの働きかけの必要性が認められる.
4)高齢者のみ世帯の生活費については, ほとんどが年金や本人の仕事による収入に依存しているため, 就労ニーズをもつ高齢者個々人に見合った“適職や労働条件”の整備を推進することが必要である.
5)また, 高齢者のみ世帯層では, 家事・生活全般に対する日常活動が減少しており, さらに加えて活動の範囲も家庭内に片寄りがみられ, 地域社会関係の狭小化がみられる. この傾向は, 75 歳以上の後期高齢層及びひとりぐらし層に強く現れている.
6)ひとりぐらし層では日常生活のなかで世話や介護が必要になった場合, 社会サービスに依存することになるが, この場合, 日常生活の継続性と世話・介護サービスの提供を同時に考えていく必要がある.
7)さらに, 「自宅以外」 のところにいる層は要介護・要世話状態にあるものが多く, 要介護の状態像により居場所が流動化して (させられて) いるものと予測できる. このことからも, 在宅ケアと施設・病院ケアの利用方法のあり方に関する個別的・地域的な実践研究が求められる.

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