(4)コンテンツ作成について

本システムで使用している映像は, 格闘技系統の映像が主であり, 偏ったものであることはすでに報告した (平成 8 年度報告書). 映画等の映像を編集する方法にも, ある程度の限界があることから, CG による映像の作成を開始し, この第一段階として, 人間の動きを CG 化したライブラリを作成することとした. 図 5 は, CG 化の一例であり, ベンチプレスというトレーニング動作を示している. このような一連の動作を多数集めたライブラリと, さらに細かい部分の動きだけを集めたライブラリ, 例えば, ベンチプレスの腕の動きだけを取り出して, 肘関節の屈曲・伸展速度をさまざまに変えた CG を集めたライブラリを作成することを考えている. 後者は, リハビリテーションの過程で, 機能回復の程度が各人各様であることをふまえたものである. それぞれの程度に応じた CG を組み合わせることにより, 例えば, ゆっくりとした動きしかできない人にはゆっくりとした動きの CG を, また, 速く動かせる人には速い動きの CG を提示することにより, 適切な運動を提供することができると思われる.
 また, 機能回復が進み, 筋力が増加して行く過程を, 例えば, 徐々に腕が太くなっていくような CG で提示できれば, リハビリテーション実施者の動機づけを高めることにも役立つと思われる. また, 平成 9 年 6 月中旬に(財)マルチメディアコンテンツ振興協会が行ったマルチメディアコンテンツ作成支援事業に,(株)中広と共同で 『マルチメディアを利用した中・高齢者向け運動プログラムの開発』 というテーマで応募した. 概要は, “本運動プログラムは, 中・高齢者が, 在宅で, 楽しみながら運動し, 健康の維持・増進を図るためのものである. 物語等を CG により映像化し, 主人公の動きに, 運動実施者に行わせたい動きを含めておき, 運動実施者を, その主人公になったつもりで身体を動かさせ, 物語の内容の面白さに引き込むことによって, 知らず知らずのうちに運動をさせる.


図5 動作のCG化の1例

また, インターネットを利用し, 遠隔地の友人とコンピュータあるいはテレビの画面上で一緒に運動をさせる”というものであった. 残念ながら不採用となったが, 次年度,(財)マルチメディアコンテンツ振興協会より今年度と同様の公募があれば, 今年度の“産学共同開発”という方針を踏襲し, 内容を見直した上で再度申請をする予定である.

まとめ

平成 8・9 年度と,“マルチメディアを用いた明るく楽しいリハビリテーションシステムの開発”を(財)ソフトピアジャパンと共同で行ってきた. 今年度の研究開発の問題点としては, 心拍数の表示があげられる. 今回は, リハビリテーション実施者に心拍数, および心電図波形を提示したが, この必要性はあまりないように思う. その代わり, オペレーターが一台のコンピュータで複数人の心電図波形をモニターし, また, 心拍数を一括管理する方が実際は有効であろう. この他, 電極を装着して運動することと, “明るく楽しく”身体を動かすこととの整合性も考える必要がある.
動きを CG 化することに関しては, CG をより身近なものにするために, 工夫が必要である. 例えば, 肘を曲げた時に, 筋肉が収縮している様子をシュミレーションする等である. また, 人間と CG の相違にも注意する必要がある. CG はあくまで架空のものであり, 人間の息遣い・暖かみ等が伝わりにくいように思う. この点は, 実際に人間が登場する映画の映像の方が勝っている. 背景に実写を用いること等の工夫が必要になる.
ハードウェアに関しては, 考案したシステムを普及させるという観点から, コストパフォーマンス等を考慮し, パソコンをベースにシステムを構成した. このため, ワークステーションをベースにすれば問題にはならない点, 特に, 処理速度に関しては満足のいかないことが多かった. しかし, パソコンの性能の向上が非常にめざましいことをふまえれば, これらはすぐに解決されるものと思う. また, ソフトウェアも相当改良されてきており, ハードウェアが整っていれば, リアルタイムでのレンダリングも可能となっている. “マルチメディアを用いた明るく楽しいリハビリテーションシステムの開発”は, まだ始まったばかりである. 今後, 多くの方々の意見を取り入れて, よりよいものに仕上げて行きたいと思う.

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