2011年度作文コンクール入賞作品一覧
日本福祉大学学長賞 「みんながやさしい町」
知多市立岡田小学校 4年 後藤輝
ぼくの一番大切にしているものはトラネコのバロンくんです。バロンくんはまだ子ネコです。グルグルグルとのどをならしながらぼくの横で昼ねをしたり、れいぞう庫に行くだけなのにチョコチョコついてきたりしてバロンくんもぼくのことが大好きみたいです。学校の行き帰りで通る教会のたて物のすみっこにジーッと小さくなってぼくのことをこわいのをガマンしながら下から見ていました。こういう時はスーッと手をのぼしてはよけいこわがってしまうことをちゃんとぼくは知っています。
ぼくの家にはお母さんネコに上手に育ててもらえなかった子ネコや、コンビニの前にへそのおがついたまますてられていた生まれたばかりの子ネコ、つぼにとじこめられてえいようが足らずに大きくなれなかったネコ、いろんなすてねこ、迷いネコがかわるがわるやってきました。だからネコの目や耳の立ち方走り方やなき方で、うれしいのか、こわがっているのか、おこっているのか、あまえたいのかわかるようになりました。
バロンくんの前には水とシーチキンのカンがおいてありました。
「あぁあ・・・。だれかすてていったんだな。あ!口が切れてる血が出てる!こんなに小さいのに。ヒドイなぁ」
ぼくは心の中でここにおいていった人のことを考えたり、兄弟ネコはいないかなと周りをぐるっと見ました。バロンくんはひとりぼっちでした。お姉ちゃんも帰ってきて2人でどうしようかとそこで考えました。
今までの病気で死んでしまったネコや大きくなれなかったネコたちを思い出して
「このネコも口がずっと切れたままで死んでしまうかも知れない」
「でもこんなにぼくのこと見てる。助けてくれる男の子かなぁって思って見てるのかな」
「生き物だからいつかは死んじゃうと思う。でもぼくがやさしくしてあげれば、すてられてたこともわすれられるかな」
ぼくのまわりには命がいっぱいいっぱいあふれています。どんな生き物の命も死んでいなくなってしまうより楽しくすごしたりかわいがってもらったり、ジーッとながめてもらったり、なでてもらったりするときっとよろこぶと思います。ぼくもそうだからです。ほめられたり、ぼくのことを見ててもらうとうれしいからわかります。
ぼくのすんでいる町の人がみんなイキイキニコニコしていて、小さな生き物の命も小さいけど元気にかわいくいられることが本当にやさしい町だと思います。大切な世界でたったひとつの命をすててしまったりころしてしまうことはぜったいにしていけません
ぼくはそっとだっこをして家に帰りました。その日からずっとぼくとバロンくんはすごくなかよしです。