2007年度作文コンクール入賞作品一覧
日本福祉大学生涯学習センター長賞 「もずの巣立ち」
半田市立乙川中学校 2年 奥村桜子
もずという鳥を知っていますか。
ヒバリくらいの大きさで、尾が長く、灰褐色のような色をしている鳥です。
去年の冬、私の祖母の家で、一羽のもずが頻繁に庭へ来るようになりました。
きっと、新しい巣をつくる場所を探していたのでしょう、春になると、みかんの木の上に巣ができていました。そして、その中には一羽のひなが元気に鳴いている姿がありました。また、それと同時に二羽の親鳥が、毎日、日暮れ頃になるまで空を飛び交う様子も見られるようになりました。ひなのためにトカゲや虫などのエサを運び続けていたのです。
それは、見ている私たちを驚かせました。
毎日、暗くなるまでエサを運び続けるのは、きっと相当の体力がいるはずです。自分の命を惜しまず、必死にひなを育てる様子は、見ているこちらにも、胸を打つあたたかさと、命をつなぐ力強さがひしひしと伝わってきました。
やがて、10日ほど過ぎた頃、庭のすみを、ちょんちょん、と動いているものに気づきました。飼い犬いすずの激しく鳴く声で、私たちはそれが何であるかを知りました。
もずのひなの巣立ちだったのです。
私たちは、ひながおびえないように、行動するときには、みな注意をはらって、ひなをいたわるようにしようと話し合いました。
それは、必死にひなを育てる親鳥を見た、私たちの想いでもありました。
ひなを見ていると、飛びたつために、一生懸命歩き回りながら練習している様子が分かりました。
もずのひなというのは、巣立ちをしてから三日程、地面の上を歩き回ります。その間に他の鳥や動物に食べられてしまうことがほとんどで、その三日間は命がけの生活だそうです。
そんな中、親鳥から離れて、一人で生きようとしているもずを見て、いつのまにか
「がんばれ、がんばれ」
と応援していました。
小さくて弱い体の中で、らんらんと強く輝いている、生命の光を見たようでした。
――その二日後。
いつの間にかひなはいなくなっていました。親鳥も、もういません。
きっと、春の澄みわたるあの大空へ飛びたっていったのでしょう。それは、少しさびしい気もしましたが、私にも
「がんばれ」
と応援してくれたようで、胸の中に、あたたかいものがこみ上げてきました。