「福祉は介護だと思っていた」と語る西新さん。高校時代、先生に手渡された一冊のパンフレットから彼女の物語は動き出しました。長野県から愛知県へ…慣れない土地で彼女を支えたのは、同じ境遇の仲間が集まる「長野県人会」と、地元・長野での実習。4年間の歩みの中で見つけた、彼女なりの「ふくしへの想い」をたっぷりと語っていただきました。

「長野県」という安心感でつながった特別な絆

 1年生の時、友人に誘われて知ったのが長野県人会でした。そこにはいつも、同郷の学生や職員の方がいてくれるという安心感があり、私にとって大切な「居場所」になっていきました。

 「自分でもできることがあるんだ」と思えるような機会をいただいたりするうちに、もっと深く関わりたいなという気持ちが芽生え、自分が先輩にしてもらったように、入学したばかりの後輩たちの不安な気持ちを解消してあげたい、盛り上げたい、そんな思いで4年間活動を続けてきました。

 私にとって県人会は、学部・学年に関係なく関われる唯一の場所でした。長野から来て、ほとんどの子が一人暮らしをしていて。そんな同じ境遇にいる仲間と関わることができたのは、本当にありがたくて、特別なことでした。

 学部・学年を越えて友達になれるきっかけって、意外とありそうでないんですよね。普段の大学生活では交わらないような仲間が一緒になって笑っている姿は、外から見ていてもすごくいいな、と思っていました。

 ただ、今の課題は「県人会の認知度」かなと思います。一回来てみて「合わないな」と思うのは全然いいんですが、「知らなかった」から来ないというのは、すごくもったいない気がして。どうしても身内ノリになりがちな部分をなくして、誰でも気軽に参加してもらえる場所になれば、もっといいなと思っています。

大学祭で模擬店を出店
大学祭の慰労会にて

先生の言葉が導いてくれた、社会福祉の道

 もともとは保育に興味があったんです。でも、高校の先生に児童のこと、心理学のこと、自分のやりたいイメージを相談していくうちに「お前がやりたいのはこれじゃないのか」と日本福祉大学のパンフレットを持ってきてくれたんです。もしあの時、先生が声をかけてくれなければ、日本福祉大学に来ることも、今の仲間と出会うこともなかったんだなと思うと、本当に感謝しかありません。

 実際に入学してみると、講義が本当に面白くて。「福祉とは」というそもそもの仕組み、介護保険や生活保護、社会保障のことなど、今までなんとなくしか知らなかったことが、カチッと繋がる感覚がありました。高校時代の私は「福祉=介護」だと思っていたけれど、その視野がいかに狭かったかを知ることができました。

 もし高校生に福祉を伝えるとしたら…やっぱり「福祉」っていう科目が欲しいです。必修にしてみんな勉強すべきだと思う。自分が躓いた時にも一番下で必ず救ってくれるもので、「困った時ここを頼ればいいんだな」って安心に繋がるんだろうなって思います。

長野実習で知った、地域の底力

 「実家から実習施設へ通えるから」という理由で選んだ長野実習でしたが、実際に参加してみると、その言葉以上の魅力がいっぱいありました。

 私は保育実習で愛知県の園にも行きましたが、長野県での社会福祉実習は、地域の歴史や背景まで含めて「もっと知りたい」と思えるものでした。長野駅近くの就労施設や障がい者支援施設での実習を通じて、自分が十数年住んできた街なのに、知らないことばかりだったんだなと痛感しました。「ここではこんな活動をしているんだ」「こんなに頑張っている人がいるんだ」という発見の連続で。今まで見えていなかった障害者就労の現場や、地域に開かれたカフェの存在。身近なところにある福祉の営みを知れたことは、私にとって大きな財産になりました。

長野実習の仲間と
長野実習メンバーでスキー旅行

「してあげる」のではなく、共に歩む

 高校の時は「困っている子どもを助けたい!」という強い思いでこの分野に入りましたが、4年間学んできた今は、その言葉のニュアンスが少し変わりました。「助ける」というよりは「一緒に成長していきたい」と思うようになったんです。

 相手が子どもであっても、困っている一人の人間であることに変わりはありません。子どもに対して何かを「してあげたい」じゃなくて、一緒に乗り越えていきたいし、自分もその中で成長していきたい。実習先で、子どもたちが明るく過ごし、職員さんと信頼関係を築いている姿を見て、そんな風に思えるようになりました。

 卒業後は児童養護施設の「児童指導員」として働きます。世間にはまだ施設に対する偏見があるかもしれないけれど、私は中に入って、そのイメージが明るいものに変わりました。次は私が、その現場で子どもたちと一緒に歩んでいく番だと思っています。

自分たちで企画した子どもの居場所作り
親子サロンでのクリスマス会

高校生の皆さんへ~どうなっても大丈夫~

 受験生の皆さんは、今はテストの結果や偏差値ばかりを見て、不安になることが多いと思います。でも、結果も大事だけど、努力した過程も同じくらい大切です。もし行きたいところに行けなかったとしても、そこにはまた新しい出会いがあるし、新しい学びもあります。

 「どうなっても、それをどう自分のためにするか」を考えてみる。そう思えば、どんな進路も正解にしていけるはずです。私は、後悔するのが嫌なタイプ。だから、今この瞬間を大切に生きてきました。

 卒業してからも、「長野」という絆で繋がった縁は続いていきます。先日も同窓会イベントでOB・OGの方々にお会いして、「ここで終わりじゃないんだな」と強く感じました。まだ自分にできることがあれば、卒業しても関わっていきたい。そんなポジティブな気持ちで、新しい一歩を踏み出そうと思います。

インタビューを終えて

 県人会の「縁の下の力持ち」として、4年間ひたむきに活動を支えてくれた西新さん。控えめながらも芯が強く、いざという時に土台を支えてくれる頼もしさは、まさに「ふくしの心」そのものでした。彼女がこれから現場で育む新しい絆が、今から楽しみでなりません。

日本福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 子ども専修 4年
(現:社会福祉学部 社会福祉学科 現代社会専修)

西新 詩野さん

SHINO NISHIARA

  • 長野県/長野東高等学校出身

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<取材:松本オフィス>