INTERVIEW

鈴木修学先生 役

近藤 芳正 さん

YOSHIMASA KONDO

― 主人公の「浅賀ふさ」に関して、どのような印象をお持ちですか。

 失礼ながら存じ上げてなかったのですが、ともかくとてもすごいことをされた方ですね。
 お写真を拝見すると、非常におやさしそうな、ほがらかな、柔和な顔をされていて、厳しさというよりも、やさしさや、ちょっとお洒落な印象を受けました。
 あの時代の女性が、アメリカへいくことは相当な覚悟だったと思いますし、その原動力はすごいなと。また、婦人参政権運動をされたりとか、結核患者の方に力を尽くされたりとか、難しいことに立ち向かっていらっしゃるのですが、それなのに、険しいというよりは穏やか、かわいらしい、品がある。かっこよさもあり、もし実際にお会いすることがあれば魅了されていたんだろうなと思います。

― 役柄を演じられるうえで、何か意識されたことはありますか。

 僕もコロナ禍の時に、役者という職業がままならぬ状況になって、さてさてどうしようかなと思った時に、お坊さんになることが頭によぎったんです。得度してみてはどうかと。実際にはご縁が無くて、その話はなくなったのですが、今、住まいが京都で、そういうことにもすごく興味を持っています。
 先日、鈴木修学先生が得度を受けられた師僧のお寺にお伺いして来ました。祭壇の奥の方に白い綿帽子を被った仏像があったのですが、その白い綿帽子には赤い線が描いてありました。遠くから拝見していて、僕はその姿全体から、〇-円相を感じました。そして赤い線から、ドラマに出てくる「すべての正しいスタートライン」「同じスタートライン」という言葉を思い起こしました、鈴木修学先生の歩みをその仏様の姿から感じ、それを思いながら今日こちらに参りました。
 僧侶としても大荒行を何度もされ、何より母校の創立者という鈴木修学先生のお姿を、自分で表現できるかどうかはとりあえず置いておいて、それを演じさせていただけるということは、すごく緊張もしますが、ありがたいことだなと思っています。

― このドラマは日本における社会福祉の黎明期のストーリーですが、「これからの福祉」に期待することなどありましたらお聞かせください。

 あくまで外部から見ていてということですが、福祉の仕事は、自分の身を尽くしてやらないといけないし、人それぞれ異なる相手に向き合っていくのに、全てを網羅したマニュアルがあるわけではないので、大変なことだと思います。本当に身体と心が大切だと思うのですが、その自分の身体と心さえも、「とりあえず人のため」になりがちだと思います。
 以前、保育園の取材で、自分のことをほっておいて、子どものために尽くしてるというお話を伺いました。その中で、「ただ、やっぱり自分がまず良くならなければ、他の人に良い影響を与えられない」ということを仰っていました。
 鈴木修学先生と浅賀さんがお話しされている場面で、「自分が良くならなければ、他の人に良い影響を与えられない」というセリフが出てきますが、これはすごく大事なことではないでしょうか。これは本当に大切な言葉だし、改めて僕も良い言葉と出会ったなと思います。

― 今回のラジオドラマを通してリスナーの皆さんに伝えたいことやメッセージなどがありましたらお聞かせください。

 浅賀ふささんの活躍や、僕が演じる鈴木修学先生の行いがあって、日本福祉大学という成り立ちができるわけなんですけど、そのなかで本当にひとつひとつ大切にしたいセリフが出てきます。
 ケースワーカーはまず自分自身を知る作業が必要で、「自分を理解しないと偏見で人を見てしまう」とか、 「教えるということは、教えられるということです」とか、「一歩ずつ一歩ずつ」という言葉もそうですが、これらはどんな人も生きる上で、非常に大切なことだなと思っています。 「歳をとってもこれから」という言葉もあります。
 自分の人生の道しるべにしてもらえるような、すごくいい言葉が、いっぱい散りばめられているので、リスナーの方、それぞれに引っかかる言葉があると思います。「私はこれに引っかかったな」という言葉を探しながら、聴いていいただけるとすごく嬉しく思います。

― 最後に、日本福祉大学付属高校の後輩たちへメッセージをお願いします。

 僕は、名古屋市昭和区にあった立花高校(現 日本福祉大学付属高校)に通っていましたが、恥ずかしながら福祉の学校だったことも知らないまま、入学しました。
 一番印象的だったのは、いじめなどの問題が起きたときも、先生の関わり方が半端ない熱意で、クラス全員で誰も帰さずに、「なぜ起きたかのか、それはどうやったら解決するんだ。君たちで話し合え。」と言われ、ずっと1時間、2時間と残って全員で話し合ったことを覚えています。
 今でもそのことは鮮明に記憶に残っていますし、 非常に大切なことを教わったなと思っています。 そしてそれはやっぱり福祉の学校ならではの、修学先生の教えが根底にあったからだと思います。

PLOFILE

近藤 芳正

愛知県出身。
1976年の『中学生日記』出演をきっかけに、1979年に 劇団青年座研究所に入所。映画『ラヂオの時間』、 『THE 有頂天ホテル』、ドラマ『真田丸』、 舞台『笑の大学』など、三谷幸喜作品に数多く出演。 その他の主な出演作品に、ドラマ『GTO』『なつぞら』 『大豆田とわ子と三人の元夫』『カムカムエヴリバディ』 『おやじキャンプ飯』など。 現在は”ラ コンチャン”として舞台制作やプロデュース作品も 手掛け、時には作・演出にも関わる。また、俳優向けのワーク ショップも主宰するエンターテインメント界のオールラウンダー。
現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』に12月後半から出演。
また、12月2日より主演映画『事実無根』が公開予定。