36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツと わたし
第3分野 日常のなかで つながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
募集テーマ内容・募集詳細はこちら
応募状況
参加校一覧
HOME
入賞者発表
第3分野 日常のなかで つながる世界
審査員特別賞 強引なおばさん
兵庫県立北摂三田高等学校 三年 北本 歩

 遠くの道路がゆらゆらとゆれ、ひざしで溶けてしまいそうになる夏のあつい日、私はUSJに行った。

 新アトラクションができたこともあり、人が多い。海外の方も多く目立っていた。友人に列に並んでてと言われ、気が遠くなるような長蛇の列に一人で並んでいると、後ろから中国語だろうか。聞き慣れない言葉が飛んできた。

 その言葉のぬしはとても派手な色の服を着た四十代くらいのおばさんで、日傘をさしながら私に何かを伝えようとしていた。急に知らない言葉で話しかけられオドオドと、とまどっている私に、強引におばさんは日傘に私を入れてくれた。急のことでびっくりしたが、帽子もかぶらず並んでいた私に気を使ってくれたようだった。

 「ありがとうございます。大丈夫ですよ!」と、必死に言うがつうじるはずもなく、お言葉にあまえて入れさせてもらうことにした。

 おばさんはまた何か話しかけてくれているようだが、まったくわからない。なので少しの間、お互いにジェスチャーで会話をした。

 「ここにははじめて来たのよ」。「このアトラクションこわいのかしら」。「見てるだけで気を失いそうよ」と言っているようだった。汗だくになりながらも十分程会話を楽しんだ。いつもより短く感じた待ち時間で心がとてもあったかくなった。

 このような経験をするまで私は中国にあまり良い印象をもっていなかった。日本との領土の問題だったり、食品等の品質が良くないと、聞いていたからだ。そのことから中国人を見ると何も悪くないと分かっていても避けてしまっていた。

 しかし、おばちゃんは日本人の私に強引にやさしさをくれた。私にはあの強引さは今までの偏見をなくすのにはちょうど良かった。

 アトラクションよりも楽しく、自分を変える大切な思い出になった。

講評

 今まであまり良い印象を持っていなかった国や人たちだったのに、お互いにジェスチャーで会話をするうちに印象が変わっていくという自分の体験が素直に表現されています。実際に接することで、マイナスの印象がプラスに変わった大きな転換点が、イキイキとした会話文も交えながら書いてあるため、私たちもその列に並んでいるかのような印象を受けました。これからもステレオタイプな見方や周りの人たちの偏見に惑わされず、自分で体験し、考えることを大切にしてください。

UP