36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかでつながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

エッセイコンテストも今年で14回目。今回は新しい分野が設定され、新しい審査員を迎えたこともあり、フレッシュな気持ちで審査会を迎えました。審査員の皆さんに、作品を読んでいて感じたことを話していただきましょう。

審査員プロフィール

新しい第2分野にも多くの応募がありました。
二木 今年も8500点以上の作品の応募があり、力作ぞろいでした。今回は、従来の第1分野と第2分野を統合して「ひと・まち・暮らしのなかで」とし、第2分野を「スポーツとわたし」という新しいテーマにしました。今年はリオオリンピック・パラリンピックがあり、2020年のオリンピック・パラリンピックが東京に決まったこともあって、スポーツに対する関心が高まっていること、また、本学が今年8月に文部科学省から「スポーツ科学部」設置の認可を受けて、来年4月の開設を目指して準備を進めていることも、新たにスポーツをテーマに設定した理由です。

杉山 私は長年スポーツに関わってきましたから、「スポーツとわたし」というテーマが創設されたことを嬉しく思います。高校生にとって、スポーツは身近なものですから、書きやすかったのでしょうね。初めてのテーマにも関わらず、1940点という多くの応募がありました。

角野 統合された第1分野は、「おばあちゃん」を扱った作品が多かったのが特徴ですね。かわいいおばあちゃんのエピソードが多く、読んでいて楽しかったのですが、友達との関係や、見知らぬ人との出会いに心を動かされ、何かを得た話がもっと増えてほしいと感じました。

久野 国際協力を仕事にしている私は、第3分野や第4分野に興味を持って読みました。うまくまとめられている作品が多数ありましたが、心に響くほどの強烈な印象を与える作品が少なかったのが残念です。荒削りでもいいから、しっかり考えて、自分の意見を書いてほしいと思います。

二木 今年は18歳選挙権が施行され、第3分野の最終選考にも5点残りました。そうした新しい話題に積極的に取り組んだ作品が多かったことを嬉しく感じます。

エッセイにふさわしい作品とは?
二木 審査員全員が高い評価をする作品もありますが、審査員によって意見が分かれる作品もありますね。皆が高い点数をつけているけれど飛び抜けた特徴が無い作品より、賛否は分かれるけれど、審査員が惚れ込んで強く推す作品があったり。そうした審査員の異なる視点をお聞きできるところが、審査会の面白い点でもありますが。皆さんは、どんな点に注目して作品を読んでいらっしゃいますか?

坂垣 私は2つの視点で読みました。1つは「言葉」。今年、「保育園に落ちた」というブログが話題になりましたが、書かれている内容が良くても、乱暴な言葉を使っている作品は共感を得ることができません。言葉を吟味し、大切にする習慣を付けてほしいと思います。2つ目が作者なりの「気付き」があるかどうかです。特に第3分野は視点が大切です。気付いたことがあれば調べてみて、もっと掘り下げて考えたり、視野を広げると、話も広がって、良く なると思います。

杉山 私も同感です。第4分野では大上段に振りかぶって、社会に目を向けるのはいいことだと思いますが、社会に対する怒りを整理しないまま書いている人が見受けられます。怒りの言葉を並べるだけでなく、「それならどうしたらいいか」を考え、社会に向けて発信した作品を評価します。そして、板垣さんと同様に、言葉をろ過して、選び に選んだ言葉を使ってほしいと考えています。

原田 私は今年が初めての審査になります。作品を読んでいて感じたのは、SNSなどで自分の思ったことを書くことは習慣になっているけれど、人に伝えるという行為は慣れていないようです。「どう書くと読み手に伝わるか」「どう書くと面白く読んでもらえるか」まで考えて書かれた作品を評価しました。自分の思いの一歩先を意識すると、もっと素晴らしい作品になりますし、書くことで新しい自分と出会い、成長できると思います。

川名 できる限り具体的なエピソードを書き、そのことについてどう感じたかを豊かな感受性で受け止めた「体験に根ざした作品」を、私は評価しました。そういう目で見ると、説明文や解説文のようになっている作品もあり、残念です。それよりも、イキイキとした会話を書いた作品の方に魅力を感じます。

久野 私も同じです。まず体験があり、そこから発見があって、自分で分析して、また体験につながるという流れの作品がいいですね。そして、「エッセイコンテスト」ですから、エッセイとして読めるものであることも大切です。

角野 私が作品を読んでいて感じたのは、「エッセイって何だろう」ということでした。エッセイと論文は違いますね。私自身もはっきりした答えはありませんが、作品を読んでいる時に、においとか、風とか、風景を感じられる作品を高く評価しました。主義主張だけに終始した作品は論文であって、エッセイではないと思います。

題名の選定や改行にも気を配ることが大切。
二木 最後に、来年応募される方に対して、アドバイスがあればお願いします。私から言っておきたいことは、文字数です。文字数がオーバーするのは論外ですが、少なすぎる場合も評価が下がります。

杉山 今年は、改行が少なく、読みにくい作品が何点かありましたね。適度に改行した方が読みやすくなります。

板垣 題名がいいと、興味を持って読み始めます。逆に、ありふれた題名や分かりにくい題名だと、作品の評価にも影響します。題名も作品の一部です。時間をかけてしっかり考えてほしいと思います。

川名 最初の説明が余分で、2番目の段落を書き出しにすればもっと魅力的になったのに……と感じた作品をいくつか見かけました。やはり、出だしは大切ですね。

原田 「ある時から何かが変わった」というような話を書く場合、何がきっかけで、どう考えるようになって変わったかといった理由を書けば、もっと良くなるのにと思った作品がありました。事実や変化を書くだけでなく、その背景もしっかり書くと、話に深みが出ると思います。

角野 最近の若い人は、パソコンやスマホは見ているけれど、本は読んでいないと痛切に感じます。表現を磨くためには、たくさんの本を読んで、言葉の使い方などを学んでほしいと思います。同時に、心を動かして、物事を見つめる人が増えてほしいと願っています。

二木 今回は、各分野とも頭一つ抜けた作品があり、優秀賞や審査員特別賞も例年と比較するとすんなりと決まったような気がします。審査員の皆さんに指摘していただいた点を改善して、来年は審査員がどの作品を選ぼうか困るくらいの力作が集まることを期待しています。皆さん、本日は長時間ありがとうございました。
金澤 泰子

審査員 金澤 泰子
 若き学生のエッセイを一度にこれ程多く読ませていただくのは初めての経験でした。もちろん、色々考えさせられました。今の高校生達に思いを馳せました。総括的に申しますと、現代のこの作品を書かれた高校生は、総じてとても優しくて、温かくて、そして何よりも繋がるということに強い意識があるのだと感じました。私の学生時代は果たしてこれほど他者に対して優しかっただろうか、障害者や親に対して敬意を持てていただろうか、お年寄りに目を向けられていただろうかと自問しながら読ませていただきました。
 すべて読み終えて「この世は優しさに満ちている」と感じました。戦争や競争の多い中で個々の高校生はとても柔軟な優しさを持ち、こまやかなことに目が向き、他者を思いやることができるのだと分かりました。小さな日常の出来事の中に非常に高く、深く思いを広げることができ、皆が平等に繋がり、福祉ということを思い、考えることができていることに驚きました。レベルの高い作品に優劣をつけることは大変に難しいことでした。
※座談会当日ご欠席のため、後日、審査にあたっての講評をいただきました。
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