36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツと わたし
第3分野 日常のなかで つながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
最優秀賞 仕事と家庭の両立を目指して
横浜雙葉高等学校  三年  原田 依奈

 今年七月、介護休業制度の見直しが行われ、より多くの人が制度を利用できるように休業取得の条件が緩和されることとなった。

 このニュースを知った時、私は疑問を感じた。確かに休業制度は重要である。しかし介護休業といい育児休業といい、働きながら介護や育児をしたいと願う人が求めているのは休暇の日数だけなのであろうか。

 女性に焦点をあててみると、近年女性の活躍促進と世間で頻繁に言われているにも関わらず、M字型カーブの解消には未だ至っていない。どうして仕事と家庭を両立させることがこんなにも難しく、仕事に専念するか辞めるかの二択になってしまうのか、私はうまくいかない社会の仕組みに歯痒さを感じることさえある。

 私は将来医療職に就きたい。医療を通して患者さん一人ひとりと真摯に向きあい、私が生きている限り一つでも多くの命を救うことが使命だと考えている。一方で、私も一人の女性としていつかは家庭を持ち、育児もしたい。もっと先には親の介護もあるかもしれない。しかし、家庭の事情を理由に患者さんを残したまま仕事の場から去ってしまうことへの躊躇い(ためらい)や、仮に仕事の場に復帰したとしても、医療職としての腕が落ちてしまうことへの不安を感じずにはいられないだろう。

 細々でいい。細々でいいから育児や介護をしながら仕事を続けられないだろうか。少子高齢化が進み労働力の確保が難しくなるであろう将来、数か月単位で仕事から完全に離れてしまうよりも、可能な時に短時間でも仕事ができるほうが社会にとっても休暇をとる個人にとっても良いはずだ。仕事も家庭も十分に両立させられる社会を作るには社会全体の理解と認識が必要である。私個人の力は微量であるが、まずは周囲の認識を変えるべく、私は先陣をきる覚悟で今後医療人として社会に出てゆきたい。いかなる時も患者さんの存在を忘れない医療人であり続けたいのだ。

講評

 テーマの目の付けどころが良く、「数か月単位で仕事から完全に離れてしまうよりも、可能な時に短時間でも仕事ができるほうが社会にとっても休暇を取る個人にとっても良いはずだ」といった作者の主張に大いに共感します。内容に直結した具体的な話題から始まる出だしも良いと思いますし、「細々でいい。細々でいいから」という箇所に作者の気持ちがよく表れており、その表現にも心が引かれました。全編を通して「こうあってほしい」という作者の気持ちが痛いほど伝わってきて、完成度の高いエッセイです。

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