36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかでつながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
優秀賞 ちんすこうおばあちゃん
沖縄県立普天間高等学校 三年 平良 友

 人それぞれの「何か」。写真部に所属している私は、その「何か」を表現するためにシャッターを切る。その瞬間が大好きだ。被写体をただのモデルとしてではなく、写真の中で生きるように……。その一瞬に全てをかける。被写体とのコミュニケーションを大切にし、その人がその時何を思い、考え、感じているのか、ひたすら話を聞き、共感し、汲み取る。

 蝉が鳴き始めた国際通りで出会った一人の元気な女性。シーサー、島ぞうりを売る雑貨店で道行く人に声をかけていた。私が写真のモデルをお願いすると、「いいよ」と、手で白髪交じりの髪を整えながら、しわくちゃな優しい笑顔で快諾。私は接客している様子を眺めながら質問を始めた。まずは、この国際通りで店を始めたきっかけから。すると、「今はもう死んじゃったおじーの店を私が継いだんだよ」。ぽつりと言う。にこにこと客一人一人に接するその曲がった背中は、たくましくもあり、さびしそうでもあった。しばらくして、「でもね、ずっとやってるとこうやってかわい子ちゃんに出会ったり、おしゃべりできたりして楽しいさぁ。私のことはおばあちゃんって呼びなさい」。

 おばあちゃんの笑顔は、まだ十八歳の私にはない「何か」が溢れている気がして、私はその「何か」を写真という一つの形にしたくて、ひたすらシャッターを切りつづけた。

 帰り際、おばあちゃんが手にちんすこうを握らせてくれた。「ありがとうね。八十歳にもなった私を撮ってくれる人なんて全然いないからねぇ若返った気分よ。また来なさい」。いつものちんすこうよりもなんだかおいしい。やっぱりおばあちゃんは「何か」を持っているに違いない。

 出来上がった写真はどれも今まで撮った写真の中で一番輝いてみえた。その写真を手に、もう一度おばあちゃんの元へ行く。その「何か」を探しに……。

 「おばあちゃん、また来たよ」。

講評

 読み始めたらすぐに引き込まれ、最後まで楽しく、一気に読み通してしまいました。とても読みやすい文章と構成になっています。特に、「蝉が鳴き始めた国際通り」「手で白髪交じりの髪を整えながら、しわくちゃな優しい笑顔」のように、状況が的確に描かれているところが良かったと思います。国際通りの様子や雑貨店のおばあちゃんの姿が目の前に浮かんでくるようです。おばあちゃんとの会話も具体的に書かれていますから、とてもイキイキしたエッセイになっています。こうした気持ちを、これからも持ち続けて、多くの人と交流を深めてください。

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