2015年度に導入された「生活困窮者自立支援制度」は、これまでの対象別の福祉制度にいくつかの点でインパクトを与えつつあります。相談支援の横断化、家計相談支援をもとにした世帯支援、しごとづくりの政策化、住居確保の政策化、子ども支援への地域参加など、それぞれにおいていまだ端緒的な性格にとどまる部分もありますが、その可能性を拓いた点を評価する必要があります。さらに、これらの取り組みをより地域のレベルで進めるための新たな政策枠組み、地域共生社会の推進が政策化されつつあり、その制度的な基盤のための社会福祉法改正が進んでいます。こうした戦略性をもった政策展開をどのように受け止め、研究・分析を進めるかをテーマに、第13回の夏季大学院公開ゼミナールは企画されました。
受付を終了いたしました。
1日目【7月22日(土)】
鼎談 |
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「生活困窮者自立支援から 新たな地域共生への戦略」 |
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行岡みち子 | グリーンコープ連合・共同体常務理事 | ||
平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授 | ||
原田 正樹 | 日本福祉大学学長補佐・社会福祉学部教授 | ||
基調講演 |
「共生保障 地域から学ぶビジョンと戦略」 | ||
宮本 太郎 | 中央大学教授 | ||
研究者の語り |
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「私の行なってきた研究とその方法 −回想法・ライフレヴュー研究における 実践・臨床方法の開発を巡って−」 |
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野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
2日目【7月23日(日)】
分科会 |
A「量的研究(調査)法 −子ども・若者の貧困をどのように捉えればいいのか」 |
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末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
荒井 和樹 | 特定非営利活動法人全国こども福祉センター理事長 | ||
B「質的研究(調査)法− M-GTA手法の導入」 | |||
田中千枝子 | 日本福祉大学スーパービジョン研究センター長・ 社会福祉学部教授 |
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塩満 卓 | 佛教大学社会福祉学部 講師 | ||
鈴木 俊文 | 静岡県立大学短期大学部社会福祉学科准教授 | ||
山内 哲也 | 社会福祉法人武蔵野会 本部次長・ 障害者支援施設「リアン文京」総括施設長 |
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C「社会福祉士のキャリアパス − スーパービジョンの意義と醍醐味を実践から学ぶ」 |
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野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授・ 認定社会福祉士認証・認定機構 理事 |
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大輪 典子 | 認定社会福祉士・東京社会福祉士会会長 | ||
近藤 芳江 | 認定社会福祉士・ 前愛知県社会福祉士会愛知ぱあとなあセンター事業部長 |
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D「相談支援の包括化および地域力強化の総合的検討」 | |||
平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授 | ||
森脇 俊二 | 氷見市社会福祉協議会事務局次長 | ||
岡村 昭雄 | 江戸川区福祉部福祉推進課長 |
鼎談
10:30−12:30 |
「生活困窮者自立支援から新たな地域共生への戦略」 |
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行岡みち子 | グリーンコープ連合・共同体常務理事 | |
平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授 | |
原田 正樹 | 日本福祉大学学長補佐・社会福祉学部教授 |
生活困窮者自立支援制度の自治体レベルにおける取り組みを踏まえながら、相談支援の横断化、家計相談支援をもとにした世帯支援、しごとづくりや住居確保の政策化、子ども支援への地域参加などの成果を検証します。また、そのような成果を踏まえながら、登場してきた新福祉の提供ビジョン、地域共生を目指す地域力強化や包括的支援体制構築の諸政策の動向における戦略性や課題を読み解くことを目指します。
基調講演
13:30−15:30 |
「共生保障地域から学ぶビジョンと戦略」 |
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宮本 太郎 | 中央大学教授 |
生活困窮者自立支援制度をどう評価し、「地域共生社会」をめぐる議論の動向をいかに受け止めるべきか。社会的支出が増大するなかで困窮が拡大していく背景は何か。生活保障の目指すべきかたちについて、机上の議論ではなく、あくまで各地域での実践や施策化の成果から考えるならば、見えてくるのは共生保障ともいうべき方向ではないかと思います。ここでは、「トランポリン」型のワークフェアを超えて、支援と所得保障を包括化しつつ、就労と居住をめぐる新たな共生の場を作り出していく道筋を考えたいと思います。
研究者の語り
15:40−17:00 |
「私の行なってきた研究とその方法 −回想法・ライフレヴュー研究における 実践・臨床方法の開発を巡って−」 |
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野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
私と回想法・ライフレヴュー研究の出会いは、カナダのT市老人ホーム居住の日系一世のためのプログラム開発を依頼された約35年前に遡ります。ReminiscenceTherapyといわれる方法の認知症高齢者への応用は多文化を意識しての独学でした。以来、Dr.R.N.Butlerや国際回想法・ライフレヴュー協会に参画する欧米の研究者や実践家との知己を得て、国内においても領域を超えた多様な共同研究をもとに、施設や地域における実践プログラムの開発・効果評価の方法・倫理的視座・歴史的検証等を継続し、現在に至っています。今回は、回想法・ライフレヴュー研究の過去・現在・未来の時間軸を視野に、私が行ってきた研究の一端をお伝えしたいと思います。
9:30−16:00
A「量的研究(調査)法
−子ども・若者の貧困をどのように捉えればいいのか」
末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
荒井 和樹 | 特定非営利活動法人全国こども福祉センター理事長 |
今年は、子ども・若者の貧困をどう捉えていけばいいのかをテーマにします。午前の部では、調査方法に関する導入的な講義を踏まえた上で、質的調査による子ども・若者の貧困の把握について検討します。具体的には、本大学院の修士課程を修了され、様々な支援実践を行っている荒井和樹先生にご自身の研究を紹介していただきます。
午後の部では、量的なアプローチによる子ども・若者の貧困の把握について検討します。具体的には、愛知県の子ども調査等を参考に検討します。質量相互のアプローチを用いながら、どのようにすれば、子ども・若者の貧困を十分に捉えることができるのか。この問いを参加者の皆様と共に考え、今後の方向性を見出していきたいと思います。量的調査、質的調査、混合研究法、子ども・若者の貧困等にご関心のある方のお越しを心よりお待ちしております。
B「質的研究(調査)法− M-GTA 手法の活用」
田中千枝子 | 日本福祉大学スーパービジョン研究センター長・ 社会福祉学部教授 |
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塩満 卓 | 佛教大学社会福祉学部講師 | |
鈴木 俊文 | 静岡県立大学短期大学部社会福祉学科准教授 | |
山内 哲也 | 社会福祉法人武蔵野会 本部次長・ 障害者支援施設「リアン文京」総括施設長 |
本分科会では、日本福祉大学大学院質的研究会が出版した『社会福祉・介護福祉の質的研究法−実践者のための現場研究(中央法規)』を使い、質的調査を用いた現場研究の成り立ちを基礎的な枠組み・視点から解説していきます。本の内容に沿って話が進みますので、参加者は事前に本の購入が必要です。
実践研究を志す皆様に対して、質的研究法の“系統的学び”として、今年度はこの夏季大学院ゼミ分科会を含め以下のような「研修体系」を設定しています。5月28日(日)(名古屋)で質的研究初心者に対する「質的研究事始め」を実施し、これから質的研究を始める初心者向けのわかりやすい導入授業を行いました。続けて この夏季大学院の分科会で質的研究概論の講義とM-GTA導入演習を行います。11月18日19日の継続研修に向けて研究初心者のおさらいと、久しぶりに研究をなさる方たちへの復習授業と考えています。ここでは M-GTA による分析の基本を中心に学びます。
さらに具体的な質的研究(調査)法に基づき実際の事例を活用・体験できる継続研修会(11月18日・19日の 日間)に続きます。この研修会は各テーブルにチューターが付き、皆さんの理解が進むように、また質的研究(調査)の醍醐味が味わえるように、丁寧に進めていきます。このような研修プログラム体系全体を把握していただき、皆様の主体的参加をお願いします。
継続研修会 | : | 「質的研究研修会(第4回):『M-GTA 質的研究を活用する』」 |
日時:11月18日・19日/於:日本福祉大学名古屋キャンパス |
C「社会福祉士のキャリアパス
− スーパービジョンの意義と醍醐味を実践から学ぶ」
野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | |
大輪 典子 | 認定社会福祉士/東京社会福祉士会会長 | |
近藤 芳江 | 認定社会福祉士・ 前愛知県社会福祉士会愛知ぱあとなあセンター事業部長 |
「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案」に対する附帯決議を経て、2011年10月30日に認定社会福祉士認証・認定機構が設立、2017年4月11日現在、484名の認定社会福祉士を輩出しています。認定社会福祉士になるためには、スーパービジョン実績が必須であり、キャリアパスに関わる中核としてスーパーバイザー養成、スーパービジョンの研修等を含め、スーパービジョンの文化の醸成が実践・教育研究の双方で重要な課題となっています。本分科会では、社会福祉士のキャリアパスとして位置づけられる認定社会福祉士・認定上級社会福祉士制度におけるスーパービジョンの実際を踏まえ、東京と愛知で研修等に携わっている識者の協力を得て、スーパービジョンの意義と醍醐味について実践的な理解を深める場としたいと思います。
D「相談支援の包括化および地域力強化の総合的検討」
平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授 | |
森脇 俊二 | 氷見市社会福祉協議会事務局次長 | |
岡村 昭雄 | 江戸川区福祉部福祉推進課長 | |
新福祉の提供ビジョンにおける「包括的な相談支援システム」の予算化として、2016年度「多機関の協働による包括化支援体制構築事業」が取り組まれました。そのモデル事業に取り組んだ自治体・社会福祉協議会の実践をもとに、その包括化支援体制の独自モデルの考案の経過とともに、その成果を評価します。また、2017年度に導入される「地域力強化推進事業」への対応も視野に入れ、両者の総合的な検討を進めます。これらの国のモデル事業化が、今後の自治体の社会福祉行政が求められる地域共生にどのように貢献できるのかを、自治体レベルでの地域特性や地域での実績をもとに検討します。新たな地域福祉行政のあり方についても協議できる場としたい。
16:00−17:00
分科会まとめ
分科会終了後会場を北館8階に移し、各分科会の成果を確認します。
主催:日本福祉大学福祉社会開発研究所
後援:日本福祉大学同窓会
【会場案内図】 | ![]() |
日本福祉大学 名古屋キャンパス
名古屋市中区千代田5-22-35
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