夏季大学院ゼミナールは、「社会福祉の新たな研究方法」を模索することを目的にこれまで開催してきました。第12回夏季大学院公開ゼミナールでは、孤立化・困窮化する子ども・若者・家族の問題をどう把握するか、また課題を抱える当事者はその過程にどのように参加するのか、問題の接近方法のあり方が、子ども・若者・家族の支援のあり方にどう結びついているのか。地域子育て支援・スクールソーシャルワーク・若者当事者参加・コミュニティソーシャルワーク・家庭裁判所など、多面的な視点から包摂的支援のあり方を考えます。専門職と課題を抱える当事者、そして地域住民は、どのような関係を持つ中で、包摂的な支援プログラムは成立するのか。具体的な実践および実践研究をもとに考えます。
今回のテーマに沿って、若者当事者が自ら生み出す新たな包摂的支援プログラムの紹介を若者自身が語る分科会を用意しました。例年通り、量的調査と質的調査の方法に関する分科会を設けるとともに、今回は、認定社会福祉士制度におけるスーパービジョンの内容を深める分科会を特別に設置しました。積極的なご参加をお待ちしています。
受付を終了いたしました。
1日目【7月30日(土)】
基調講演 |
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「孤立化・困窮化する子ども・若者・家族の支援のあり方を探る −子育て支援の観点から」 |
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渡辺顕一郎 | 日本福祉大学子ども発達学部教授 | ||
討論者 | 原田 正樹 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | |
シンポジウム |
「“孤立化・困窮化する子ども・若者の 包摂的支援のあり方”」 |
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日置 真世 | よりそいホットライン全国コーディネーター・ スクールソーシャルワーカー・日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター客員研究所員 |
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野尻 紀恵 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授・ 春日井市等教育委員会SSW事業SV |
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コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所所長 | |
研究者の語り |
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「私の行ってきた研究とその方法 −家庭裁判所調査官時代から培ってきた研究とその方法」 |
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山田麻紗子 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所客員研究所員・ 前こども発達学部教授 |
2日目【7月31日(日)】
分科会 |
A「量的研究(調査)法への誘い −調査事例にもとづきながら」 |
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末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
早川麻依子 | 医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院 | ||
B「質的研究(調査)法− M-GTA手法の導入」 | |||
田中千枝子 | 日本福祉大学スーパービジョン研究センター長・ 社会福祉学部教授 |
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塩満 卓 | 佛教大学社会福祉学部 講師 | ||
瀧澤 学 | 神奈川リハビリテーション病院 MSW 高次脳機能障害相談支援コーディネーター |
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山内 哲也 | 社会福祉法人武蔵野会 本部次長・ 障害者支援施設「リアン文京」 総括施設長 |
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C「実践力・専門性をもったスーパービジョン −認定社会福祉士制度と個人スーパービジョンの実際−」 |
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野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授・ 認定社会福祉士認証・認定機構 理事 |
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岡田 まり | 立命館大学産業社会学部教授 | ||
D「若者当事者による包摂的プログラムの実践」 | |||
・北海道釧路市での取り組み | |||
日置 真世 | (NPO法人地域生活支援ネットワークサロン顧問)と若者当事者 | ||
・箕面市北芝地区での取り組み | |||
簗瀬 健二 | (NPO法人暮らしづくりネットワーク北芝 相談員)と若者当事者 | ||
コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所所長 |
基調講演
10:30−12:30 |
「孤立化・困窮化する子ども・若者・家族の支援のあり方を探る −子育て支援の観点から」 |
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渡辺顕一郎 | 日本福祉大学子ども発達学部教授 | |
討論者 | 原田 正樹 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
人口減少への対応が国家的な課題となる中、少子化対策だけでなく、女性の活躍促進などの政策が新たに打ち出されています。他方、子育てをする家庭の視点に立ってみるならば、保守的な性別役割分業が根強く残る社会においては、子育ての役割や負担は女性(母親)に集中しやすく、家庭の孤立化もあいまって様々な問題や矛盾が顕在化しています。基調講演では、本来、「子育て支援」は子どもの育ちと子育てを社会全体で支えることであり、児童福祉分野においては予防的機能が求められる視点に立ち、地域に根ざした「子育て支援」のあり方を考えます。
シンポジウム
13:30−15:30 |
「“孤立化・困窮化する子ども・若者の 包摂的支援のあり方”」 |
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日置 真世 | よりそいホットライン全国コーディネーター・ スクールソーシャルワーカー・日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター客員研究所員 |
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野尻 紀恵 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授・ 春日井市等教育委員会SSW事業SV |
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コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所所長 |
孤立化するあるいは困窮化する子ども・若者に対する包摂的な支援のあり方を多面的な実践を踏まえ、成果を生み出しえる包摂的支援の方法を考えます。具体的には、よりそいホットライン、スクールソーシャルワーカーによる実践・NPOによる若者主体の仕事おこしなどの実践からみた、子ども・若者の包摂的支援の新たなあり方を提起します。野尻氏は、子どもや若者をめぐる政策や研究の動向およびスクールソーシャルワーク実践の現状と課題について触れ、2つの実践研究@「貧困の中に育つ子どもを支えるSSWとCSWの連携支援プロセスの視覚化」A「子どもの貧困の連鎖を断ち切る『食でつながるコミュニティ』創出の研究」から子どもの育ちのために必要な包括的支援について提言します。
研究者の語り
15:45−17:00 |
「私の行ってきた研究とその方法 −家庭裁判所調査官時代から培ってきた研究とその方法」 |
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山田麻紗子 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所客員研究所員・ 前こども発達学部教授 |
私が長年にわたり取り組んできた事例(夫婦の離婚・子どもの引渡し調停、少年非行、児童虐待、成人の犯罪事件を中心とした犯罪心理鑑定など)の概要と、そこからの学びを紹介します。非行や犯罪の原因は単純ではなく様々な要因が、背景に複雑に絡み合っていることが分かります。そして、人々が患う精神病理、発達障害などが生起する背景には、それらの要因が複雑に影響している場合も少なくありません。「貧困」「児童虐待」「DVをはじめとした暴力」「孤立」は非行や犯罪だけでなく、多岐にわたって子どもの育ちやその後の在りように深刻な影響を及ぼしています。
それらに対して、ケースや鑑定の事例の検討、考察を中心とした方法、面接調査の方法や意義の検討、アンケート調査やヒアリングに基づいた児童虐待の実態や児童相談所の効果的支援の研究などに取り組んできました。これまでの研究内容から最近の研究内容や海外との比較研究まで、そこから分かった新たな知見を紹介したいと思います。
9:30−16:00
A「量的研究(調査)法への誘い−調査事例にもとづきながら」
末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
早川麻依子 | 医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院 |
本分科会では量的調査法について学びます。大きく2部構成になります。午前の部では量的調査法の基礎的な内容を学びます。具体的には、仮説の立て方とそれに応じた質問紙の作り方を中心に説明します。
午後の部では、子どもの貧困に関連した調査事例と多職種連携をテーマとした調査事例を通して、量的調査実施の実際を学んでいきます。多職種連携に関する調査事例に関しては、本学大学院で量的研究を用いて修士論文を執筆した早川麻依子氏をゲストスピーカーとして迎えます。どのように仮説を作り、どのように質問紙を作成し、どのように調査を進めたのか。そのプロセスを体験的に語っていただきます。量的調査全般および子どもの貧困や多職種連携に関する量的調査の実施にご関心のある方のお越しをお待ちしております。
B「質的研究(調査)法− M-GTA手法の導入」
田中千枝子 | 日本福祉大学スーパービジョン研究センター長・ 社会福祉学部教授 |
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塩満 卓 | 佛教大学社会福祉学部 講師 | |
瀧澤 学 | 神奈川リハビリテーション病院 MSW 高次脳機能障害相談支援コーディネーター |
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山内 哲也 | 社会福祉法人武蔵野会 本部次長・ 障害者支援施設「リアン文京」総括施設長 |
本分科会では、日本福祉大学大学院質的研究会が出版した『社会福祉・介護福祉の質的研究法−実践者のための現場研究(中央法規)』を活用し、質的調査を用いた現場研究の成り立ちを基礎的な枠組み・視点から解説していきます。本の内容に沿って話が進みますので、参加者は事前に本の購入が必要です。
実践研究を志す皆様に対して、質的研究法の“系統的学び”として、今年度はこの夏季大学院ゼミ分科会を含め、以下のような「研修体系」を設定しています。6月5日(東京)と12日(名古屋)で質的研究初心者に対する「質的研究事始め」を両会場同じ内容で実施します。これから質的研究を始める初心者向けのわかりやすい導入授業です。
続けて7月のこの分科会で質的研究概論の講義と導入演習を行います。9月の継続研修に向けて初心者のおさらいと、久しぶりに研究をされる方たちへの復習授業と考えています。ここではM-GTAによる分析の基本を中心に学びます。
そしてさらに具体的な質的研究(調査)法について実際の事例を活用・体験できる継続研修会(9月24 日・25 日の2 日間)に続きます。この研修会は各テーブルに1 名のチューターが付き、皆さんの理解が進むように、質的研究(調査)の醍醐味が味わえるように、丁寧に進めていきます。研修プログラム体系全体を把握していただき、皆様の主体的参加をお願いします。
継続研修会 | : | 質的研究研修会(第3回):『M-GTA質的研究を体験する』 |
日時 | : | 9月24日・ 9月25日/於:日本福祉大学名古屋キャンパス |
C「実践力・専門性をもったスーパービジョン
−認定社会福祉士制度と個人スーパービジョンの実際−」
野村 豊子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授・ 認定社会福祉士認証・認定機構 理事 |
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岡田 まり | 立命館大学産業社会学部教授 |
本分科会は日程を2つに分けて実施します。前半では、はじめに国内外のスーパービジョンの基礎的理論を学び、スーパービジョンに必要な倫理・知識・スキルについての理解を深めます。次に、認定社会福祉士認証・認定機構による「認定社会福祉士」・「認定上級社会福祉士」制度におけるスーパービジョン(実績)の現状について、最新のデータをもとにその課題を検証していきます。後半では、スーパービジョンで使用する具体的な様式(書式)の活用も含めて、認定社会福祉士の個人スーパービジョンの方法を体験的に学んでいきます。
スーパービジョン一般に興味をお持ちの方、スーパービジョンの職場での活用を意識してその理解を深めたい方など、広くスーパービジョンに関心のある方の参加を期待しています。
D「若者当事者による包摂的プログラムの実践」
・北海道釧路市での取り組み
日置 真世 | (NPO法人地域生活支援ネットワークサロン顧問)と若者当事者 | |
・箕面市北芝地区での取り組み
簗瀬 健二 | (NPO法人暮らしづくりネットワーク北芝 相談員)と若者当事者 | |
コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学福祉社会開発研究所所長 |
本分科会では、今回のテーマである「孤立化・困窮化する子ども・若者の包摂的支援のあり方」を若者当事者の視点から考えます。北海道釧路市と大阪府箕面市では、孤立あるいは困窮する若者自らが、仕事づくりに取組み、地域づくりの活動に貢献するプログラムをNPOの支援を得ながら実践しています。また両NPOを実践方法に関しての情報交換をはじめ、交流をしながら若者主体の活動に取り組んでいます。それぞれの実践について、支援者および若者の当事者の報告をもとに、包摂的な支援のあり方を検討します。
16:00−17:00
分科会まとめ
分科会終了後会場を北館8階に移し、各分科会の成果を確認します。
主催:日本福祉大学福祉社会開発研究所
後援:日本福祉大学同窓会
【会場案内図】 | ![]() |
日本福祉大学 名古屋キャンパス
名古屋市中区千代田5-22-35
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