この夏季大学院ゼミナールは、研究力(分析力)が現場での実践力を高めると考え、必要な研究方法を系統的に、講演・講義、演習を織り交ぜながら開催してきております。第8回になる今回は、現代的状況のテーマとなっている社会的孤立を取り上げ、その実践研究や研究手法を各方面から紹介します。自らの実践や研究に資する視点や考え方のヒント、実践力向上への道筋、そして体系的な研究方法論を学べる機会とします。
今回初めて、「研究者の語り(ナラティブ)」企画として、研究方法についてのご経験をお話しいただき参加者と交流できる企画を開催します。研究力の形成に役立てていただければと思います。
【7月28日(土)】 開催を終了いたしました
基調講演 |
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「社会的孤立と健康とストレス対処力SOC」 | |||
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山崎喜比古 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
シンポジウム |
「社会的孤立を捉える研究方法」 | ||
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シンポジスト | 斉藤 雅茂 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
山田壮志郎 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
大谷 京子 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
研究者の語り |
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「私が行ってきた研究とその方法」 | |||
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冷水 豊 | 日本福祉大学 研究フェロー |
【7月29日(日)】 開催を終了いたしました
分科会 |
A「量的研究(調査)法」 | ||
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末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
斉藤 雅茂 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
B「質的研究(調査)法への誘い −当事者のナラティブと名付けに関する体験の共有化−」 |
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田中千枝子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | ||
吉川 眞 | 広島国際大学医療福祉学部教授 | ||
C「ソーシャルワーク・スーパービジョン実践入門」 | |||
山口 みほ | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
浅野 正嗣 | 金城学院大学現代文化学部教授 | ||
D「社会正義とコミュニティソーシャルワーク −私たちのフクシマで起こっていること−」 |
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コーディネーター | 原田 正樹 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
報告者 | 福嶋美奈子 | 福島県社会福祉協議会主任統括生活支援相談員 | |
長谷部 治 | 神戸市社会福祉協議会地域福祉課 | ||
E「『安心生活創造事業』は社会的孤立にどこまで対応できたのか −事業の全国動向と氷見市の事例から」 |
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平野 隆之 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | ||
中島 修 | 厚生労働省社会・援護局地域福祉課 地域福祉専門官 | ||
山田 哲也・飯田 奈緒 氷見市社会福祉協議会 |
開催を終了いたしました
基調講演
10:30−12:00 |
「社会的孤立と健康とストレス対処力SOC」 | ||
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山崎喜比古 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
社会的孤立は社会的統合の対概念で、他者や社会とのポジティブな関わりが絶たれた状態にあることをいいます。一般に、社会的孤立は心身の健康とは負の、社会的統合は正のスパイラルな関係性を有することが知られています。20世紀最後の4半世紀に健康社会学者アントノフスキーが提唱し世界的にも注目されたストレス対処力概念Sence of Coherence(SOC、首尾一貫感覚)は、ストレスフルな出来事や状況にさらされながらもなお健康で明るく元気に生きていくことを可能にする力として、社会的孤立が心身の健康に及ぼすネガティブな影響を緩和するだけでなく、社会的孤立自体を克服する原動力たり得ることが示唆されています。講演では、SOCに関する知はヒューマンサービス分野に大きな示唆を投じていますが、社会福祉分野や「社会的孤立と健康」に関する分野も例外ではないということを話したいと思います。
シンポジウム
13:00−15:00 |
「社会的孤立を捉える研究方法」 | ||
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シンポジスト | 斉藤 雅茂 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
山田壮志郎 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
大谷 京子 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | ||
コーディネーター | 平野 隆之 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 |
ソーシャルネットワークの欠如した状態をさす社会的孤立は、失業や貧困などの背景要因とともにライフイベントや個人特性などの要因も含め、その関係は複雑で複合的であると言えます。制度の狭間から漏れ落ちたこうした状態について、社会制度側からの把握は困難であると言えます。
シンポジウムでは、そうした社会的孤立の捉え方について、研究者からの意欲的な報告によって考えていきたいと思います。高齢者の社会的孤立確認のための調査法や、ホームレス調査の方法などの報告とともに、専門職援助のあり方についての報告によって議論をしていきたいと思います。
社会的孤立問題への効果的介入の方途を考えていく上で、 その研究方法を検討していくことを通して社会福祉援助課題のあり方を整理したいと思います。
研究者の語り
15:20−17:00 |
「私が行ってきた研究とその方法」 | ||
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冷水 豊 | 日本福祉大学 研究フェロー |
私はこれまで、社会老年学を基礎にした実証的な高齢者福祉研究に取り組んできました。
そこでの主な研究課題は、サービスニーズの概念と測定、サービス評価の観点と方法、「地域生活の質」に基づくフォーマルケアとインフォーマルケアの連携・組み合わせなどで、これらの研究の基底には、「社会福祉の固有性は何か」という問題意識がありました。
研究方法としては、量的調査法を中心に、質的調査法としてのフォーカスグループ面接や事例調査、さらにデルファイ法やノミナルグループ法も取り入れたトライアンギュレーション研究法(多角的実証研究法)にも取り組んできました。
研究者の語り企画では、このような研究の内容とその方法について紹介し、参加者のみなさんと研究方法にかかわる交流の場としたいと思います。
開催を終了いたしました
9:30−15:30
A「量的研究(調査)法」
末盛 慶 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
斉藤 雅茂 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 |
最近ではさまざまな場面で量的調査が実施されていますが、質問紙を作成する段階での準備が不十分であったために実際には使えないデータになっていることが少なくありません。そこで本分科会では、量的調査における質問紙の作成の仕方に焦点をあてます。
構成としては、午前の部において質問紙を作成する際の注意点について講義します。午後の部では、受講者自身に質問項目を作成してもらい、それを午前の部で学んだことにもとづいて、受講者同士でチェックをし、それに対して末盛と斎藤がアドバイスを行います。
現場で何らかのニーズ調査や実態調査などを予定されている方、学術研究につながる量的調査の実施をお考えの方など、多くの方々の参加をお待ちしております(なお、夏季大学院終了後も量的調査に関する企画を実施していく予定です)。
B 「質的研究(調査)法への誘い
−当事者のナラティブと名付けに関する体験の共有化−」
田中千枝子 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | |
吉川 眞 | 広島国際大学医療福祉学部教授 |
質的研究法では、特定個別の状況を「あなたと私の2人の間の了解可能な」現実にし続ける過程を辿ります。今回は大掛かりな社会的排除の結果孤立をやむなくされた、ハンセン病の回復者の語りをもとに、歴史的環境的状況からみた社会的排除の実際とそれに伴う当事者の孤立の思いの展開プロセスに関する内実をデータとして、ミクロレベルで社会的孤立を捉える質的分析の実際を体験します。
また、この分科会では、次の継続企画の実施を予定しています。この企画にも参加されることを期待します。
継続企画: | 「質的研究を体験する〜カードワークの実際を通して〜」 11月4日(日)・12月2日(日):日本福祉大学名古屋キャンパス南館 |
C 「ソーシャルワーク・スーパービジョン実践入門」
山口 みほ | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 | |
浅野 正嗣 | 金城学院大学現代文化学部教授 |
本分科会では、特に「支持的機能」に焦点をあてながら実践的にスーパービジョンを学びます。前半にスーパービジョンについての基礎的理解のための講義、および、職場内・職場外の個別スーパービジョンと「地域ユニット型スーパービジョン」の実践例の報告を行い、後半にロール・プレイを取り入れた演習でスーパービジョンを模擬的に体験していただきます。スーパーバイザー役を担うことに不安を感じている方や、スーパービジョンは敷居が高いものだと考えている方の参加をお待ちしています。
D「社会正義とコミュニティソーシャルワーク
−私たちのフクシマで起こっていること−」
コーディネーター | 原田 正樹 | 日本福祉大学社会福祉学部准教授 |
報告者 | 福嶋美奈子 | 福島県社会福祉協議会主任統括生活支援相談員 |
長谷部 治 | 神戸市社会福祉協議会地域福祉課 |
ソーシャルワークにおける社会正義とは何かを問わない研究や実践、それらは「社会福祉」とは言いません。昨年、日本で開催されたAPC21(アジア・太平洋ソーシャルワーク会議)では、海外の参加者から「日本のソーシャルワーカーはフクシマをどう捉えているのか」という質問がありました。私たちはそれに即答することができませんでした。今、福島で起こっている一つ一つの生の行為(生活・実践・葛藤・絶望・希望)を通して、コミュニティソーシャルワークについて考えたいと思います。それは「福島県」を対象化するのではなく、同時代を生きる社会福祉関係者として、コミュニティとは何か、ヒューマンセキュリティや社会的包摂のあり方、そして地域福祉の本質と社会福祉協議会の存在意義を問う試みであります。
E「『安心生活創造事業』は社会的孤立にどこまで対応できたのか
−事業の全国動向と氷見市の事例から」
平野 隆之 | 日本福祉大学社会福祉学部教授 | |
中島 修 | 厚生労働省社会・援護局地域福祉課 地域福祉専門官 | |
山田 哲也・飯田 奈緒 氷見市社会福祉協議会 |
国が地域福祉推進政策の一つとして展開する「安心生活創造事業」は、「悲惨な孤立死、虐待などを1例も発生させない地域づくり」を目指して58の市町村で取り組まれています。本分科会ではこの事業が社会的孤立にどこまで対応できたのか、全国的な動向とモデル事業実施地域の氷見市からの事例報告を踏まえて、その成果と課題について議論を行います。3年間の事業が終了した後の事業継続と新たな展開のあり方についても、参加者と意見交換を交えながら深めていきたいと思います。
15:30−16:30
分科会まとめ
分科会終了後、会場を移し各分科会の成果を確認します。
【参加料金】 | 3,000円(1日のみでも) *本学院生・学生 1,000円(1日のみでも) ※分科会等の確定の上、参加証と参加費用振込用紙を送付します。7月20日(金)までにお振り込みください。 |
【申し込み期間】 | 7月20日(金)まで(但し、定員になり次第締め切ります) |
【申し込み方法】 |
開催を終了いたしました |
【問い合せ先】 | 平日10:00〜17:00 日本福祉大学研究課 担当:増村 〒460-0012 名古屋市中区千代田5-22-35 日本福祉大学名古屋キャンパス北館7F 福祉社会開発研究所 (問い合せ先)090-8499-2255 (FAX申し込み先)052-242-3076 (E-mail)kakidaigakuin@ml.n-fukushi.ac.jp |
主催:日本福祉大学福祉社会開発研究所
後援:日本福祉大学同窓会
【会場案内図】 | ![]() |
日本福祉大学 名古屋キャンパス
名古屋市中区千代田5-22-35
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