研究報告

高齢者の色彩認識特性の実験心理学的分析 研究代表者:中村 信次
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高齢者の色彩認識特性の実験心理学的分析
  −高齢者の色認識と色嗜好の関係−

Experimental analysis of color perception in elderly person
-relationship between color perception and color preference-

研究代表者:中村 信次 (情報社会科学部 准教授)
共同研究者:高橋 晋也 (名古屋大学大学院環境学研究科)

 
研究期間 2005年度〜2007年度

Abstract

 高齢者向け機器の色彩設計の指針を得るために、高齢者の色認知特性と色嗜好との関連を検討する一連の心理実験を計画・実施した.本年度は、昨年度実施した色知覚に関する実験を発展させ、被験者の特定の事物に対する色嗜好を検討する実験を行った.次年度以降、本年度の取り組みにより得られた課題に対応し、高齢者の色認知特性をより包括的に分析可能な枠組みへと、研究計画を展開していく.

目的
  本研究においては、高齢者の視覚認識にかかわる特性を心理学的に分析することにより、高齢者向け機器開発における設計指針を得ることを目的とし、高齢者の色彩認識特性を、1)知覚判断、2)認知判断、3)価値判断の3つの水準にわたり検討することを試みる.高齢者の色彩認識にかかわる問題を3つのレベルにおいて総体的に把握することにより、高齢者特性を単なる感覚レベルの問題でははく、知覚−認知−感情という心理過程全体の問題として検討することが可能となる.このような検討を通して得られた基礎的な知見に基づくことにより、高齢者の視覚特性に合わせた視覚表示を実現するとともに、高齢者にとってわかりやすい外観を備え、高齢者にとって好まれる色彩デザインを有する製品の開発を行うことが出来る.
  進捗状況
  本年度は、昨年度実施した色知覚実験に引き続き、特定の状況において色が被験者の価値判断にどのような影響を及ぼすのかを検討する実験を行った.具体的には、さまざまな特徴を持った色光照明下での料理写真に対する感性評価を課題として用い、「視覚による味覚評価」という感覚モダリティを超えた感性判断を被験者に求めた.また、色光照明環境を独立変数として操作することにより、昨年度検討した色の恒常性知覚と同一の刺激操作による価値判断の変容を検討することが可能であり、このようなアプローチを用いることにより、本研究の特徴である包括的な色認知特性の検討が可能となると考える.


実験
1. 目的

  我々は、実際には口にしていない食品に対し、視覚的印象からその味を想像し、「見かけのおいしさ」を感じ取ることができる.このような感覚モダリティを超えた感性判断は、いったいいかなる心理学的メカニズムに依拠しているのであろうか?視覚的な「おいしさ」判断と言う複合的な心理プロセスを検討するための試みとして、色光照明をシミュレートした料理写真に対する印象評価実験を行うこととした.

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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University