4.結果及び考察
(1)防犯ブザー実験結果及び考察

結果:防犯ブザーを任意の位置に装着した結果,ランドセル肩紐部分(5名)と腰位置(6名)となった.
防犯ブザーを作動させることができた学童は,ランドセル:5名中2名,腰位置:6名中5名となった.
考察:ランドセルと腰位置で操作の成功率に差異が生じた.ビデオ観察から,犯罪企図者に抱きつかれた場合,全てのケースで上腕を抑えられていた.その際,肘関節の動作は可能だが,それより上部に手を運ぶことが不可能となり,肘関節より下に位置するベルト周辺が到達範囲になる.そのため,腰位置周辺に装着することが望ましい.また,これらの結果から近年,小学校で配布されるホイッスルのような口元まで運んで使用する用具は,実用性が低いと考えられる.
防犯ブザーは本体を掴み,それに差し込まれている紐付きピンを引き抜くことにより音が鳴る仕組みである.音が出る部分は本体にあるため,掴んだ際に手でその位置を抑えると音量は61〜62.5dBとなり,本来発揮できる性能値(74dB)より10dB程度下がる.そのため,防犯ブザーを把持する方法も重要な要因となる.

(2)大声実験結果及び考察
結果:屋内での実験では「ウォー」や「キャー」のような咄嗟に出る声は,「助けてー」のような意味を持つ言葉より大きい音が出る傾向にあったが,屋外実験では2つの大きさの差異が小さい結果となった.
本実験は,被験者数が十分ではないので性差や年齢差(体格差)については判断が難しい.

 

 

 

表-1 大声実験結果

計測点
発生源からの距離
声の種類(単位:dB)
ウォー,キャー
(意味のない被験者に最も出しやすい声)
助けて〜
(周囲に助けを求める意味のある声)
20m
79
77
  • かなり大きな声で聞こえる.
  • 非常事態であることはしっかり認識できる.
40m
67〜69
66
  • しっかりと聞こえる
  • 非常事態であることは認識できる.
60m
51〜60
52〜60
  • ことばの内容に関わらず,声は聞こえにくい.
  • 特に,ウォー・キャーという声は遊んでいる声と変わらない.(周囲の音にかき消されてしまうので,危機感を感じない)

考察:都市部においては,どちらの声も周囲の生活騒音(暗騒音)に消されてしまい周辺住民の注意を喚起できない.特に「ウォー」などの声は友人と遊ぶ際に発生する声であり,より注意を引きにくい.
そのため大声と防犯ブザーの双方を同時に行うことで周辺住民に対し,通常とは異なった事態が発生していることを知らせることができると考える.
工学的に考えると以下の2つの理由(※1,※2)により,大声と防犯ブザーの併用は,音量が上がらず効果が薄いと考えられるが,観察者の官能評価では,この併用は効果が大きいとの報告がされた.
※1:2つの音源を用いた場合,15dB以上の差があると小さい音は大きい音に吸収されて,音量としての効果はない.
※2:2種類の音量(dB)が同等であれば,3dB上がる.

←前ページ

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University