震災時の安否確認システムの実用化についての研究

A Study about Practical Use of Disaster Safety Confirmation System
for Decision Support

研究代表者 大場和久(情報社会科学部 助教授)
共同研究者 柳本哲也(中京大学教養部 講師) 
       西村昌和(アドテック株式会社) 

研究期間 2003年度〜2005年度

Abstract
The information of safety confirmation is needed for the rescue operation at the early stage of the disaster such as earthquakes. Some safety confirmation systems using cellular phones are proposed. The drawback of these systems is traffic congestion in connection of cellular phones system. In this study, we design a disaster safety confirmation system that can use for the rescue operation and experiment on making the system practicable
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1. はじめに
 兵庫県南部地震では情報の不足と伝達ルートの偏りから,救助活動や被災者の支援活動に大きな支障が出た.震災時の情報の流れを,個人-町内会レベル-小学校区レベル-区市町村レベル-都道府県レベル-都市圏域レベルの階層間で考えると,個人の安否情報の上位層への伝達が最も困難である.
 個人の安否情報は,震災時の初期段階の救援活動のために必要である.救援活動のための安否情報の収集方法として市町村の行政職員の見回りによる収集方法や航空写真を利用した方法[1],個人間での安否確認として携帯電話のメイル機能を用いた方法などが提案されている[2],[3].しかし,非常時に参集できる市職員の数は人口と比して非常に少なく,航空写真を利用したシステムでは家屋の倒壊情報は収集できても住民の安否は確認できないなどの問題がある.震災の発生直後には携帯電話の利用が集中するため,輻輳などの問題から携帯電話の使用が困難な場合が多く,兵庫県南部地震,新潟中越地震,福岡県西方沖地震でもその問題が指摘されている.携帯電話の輻輳の問題に対して,無線アドホックネットワークを用いて知人の安否確認を行うことを目的としたシステムも提案されている[4].
 筆者等は震災時の安否情報を迅速かつ正確に収集できる安否確認システムの構築を行ってきた[5],[6].本研究は,安否確認システムの実用化のための検討とシステムの再構築,および,実地実験を行うことでシステム導入による効果を解析することを目的としている.提案するシステムは,電話回線,有線情報網,電気など震災時にその利用が確約できないインフラストラクチャを必要としない頑強性,初めての使用でも戸惑うことなく直感的に操作できる操作性という特徴を合わせ持つ.
 

2. システム構築の経過
2.1 システムの概要

 1995年の兵庫県南部地震以来,迅速かつ正確に住民の安否情報を収集する方法として,簡単な操作によって住民が自ら被災情報を発信できる安否確認システムを提案し,その有効性を検証する研究を進めている.研究開始当初から一貫して,簡便な操作性と頑強性を持つシステムであることを条件としている.
 また,システムの使用方法とその形態も研究開始当初からほとんど変更はない.図1に安否確認システムの概念図,図2(a)に送信機を示す.トランシーバへの改造は電波法上,禁止されているので,発信制御回路とトランシーバとの接続にはトランシーバ側に既存のマイクやスピーカの接続ジャックを利用している.システムを使用するにあたって,安否情報を送信する送信機を各家庭に配布し,学校や公民館などの情報を集約するセンターに受信機,パソコン,上層への情報通信のための機器などを設置する.送信機には「無事」,「要救助」の二つのボタンが取り付けられており,震災発生時には本人,もしくは隣人が送信機を操作する.
 安否情報を地図上に表示させるマッププログラムにはあらかじめ個人の住居の座標データベースが与えられており,受信したデータの発信元を自動的に地図上へ表示する.
 これまでに構築したシステムの特徴とその問題点について述べる.

 

 

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図1と図2


Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University