ナレッジマネジメントの導入によるプラントオペレーションの
システム化実践研究(概要)(中間報告)

Research and Development of the Knowledge‐based Plant Operation System

    研究代表者 伊藤 庸一郎(情報社会システム研究所 講師)
   共同研究者 佐藤 省三(情報社会システム研究所 講師),
日本リファイン株式会社   

研究期間 2004年度〜2005年度

 

 産業立国を標榜する日本において,少子高齢化は労働力の根幹を脅かす問題として認識されはじめて久しい.国策として少子化対策・外国人労働者の導入など様々な労働力低下対策は推進されているが,工業技術のレベルを維持する上でより重要な問題は,現在,技術者の中に蓄積されているノウハウが,技術者の減少により喪失していくことである.この技術伝承の問題は,情報システムのエンジニアリングを中心として2007年問題としてクローズアップされている.また,企業の海外展開においては,技術者の移転による技術流出の問題も発生する.このような情勢の下で,企業経営の方針として,減少する技術者を効率的に活用しつつ企業資産としてノウハウを蓄積し,伝承する外部システムを導入するといった工学的解決策が必要となってくる.これは,ナレッジマネジメントと呼ばれ1980年代のアメリカでは既にこのコンセプトが産まれていたとされる.1993年のピーター・ドラッガーの提唱により,経営革新の手法として位置づけされ,体系的な研究が進むこととなったが,ナレッジマネジメントの実践例は,現場の知識を情報共有するシステムの導入に留まることが殆どであり,知識資産蓄積により経営意思決定へ繋がる実践的なナレッジマネジメント事例は殆ど無い.情報社会システム研究所では,伊藤および佐藤を中心として,産業ノウハウのアーカイブと活用プロセスをシステム化することで,マネジメント・エンジニアリング・オペレーション等のパート毎の知識資産化および,それらを統合した知識の構築を可能とするための情報社会的なシステム研究を行っている.

 

 日本リファインでは,石油精製工場の海外展開に伴うオペレーションナレッジ流出のリスク回避,営業から開発,製造に至るプロセスノウハウの不一致による利益損失の軽減がニーズとしてあり,第一段階としてオペレーションノウハウの蓄積・活用によるナレッジプラントオペレーションのシステム構築を目的として共同研究を行ってきた.本研究においては,最初の研究プロトタイピング段階として,オペレーションノウハウの取得実験を手動計測により事例を取得し,知識ルールの抽出を実施した.同時に,プラントの計装データを自動的に取得するために必要な自動計装システムおよび操作インターフェース,ナレッジシステムの仕様要件定義およびシステム設計を行った.現在,自動計装プラント搭載の計装機器選定を初めとするSI作業,ナレッジプラントオペレーションシステムの設計をほぼ完了しており,システム開発のフェーズへ移行する段階である.システム開発後,試験運用と同時にオペレーション事例データの蓄積を開始し,製品製造のサイクルに従い,順次,製造オペレーションルールの抽出・分析を行っていく.ルールの適用に当たっては,シミュレーション値として基準を満たせば,OKルールとして,その対応オペレーションの実行が許可される.事例の蓄積とともにシステムが抽出したルールの実行許可が製品製造プロセスを網羅した場合には,最終的にシステムによる自律オペレーションが可能となる.平成17年6月プラント完成,その後約1年間でルール蓄積・活用に対するナレッジマネジメントを実施する予定である.

 

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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University