(1)ランドマークのアイコン化
今回のシステムでは,災害用に各種160種類のランドマークをアイコン化して,分類は,危険な建物,危険な場所,備蓄場所,公共施設,避難場所等を作成し利用した.アイコンは長岡造形大学の平井研究室,澤田研究室が監修した防災・防犯マップづくり用シェイプ集を活用した.
システムの描画機能で地図上の任意の場所に,アイコンと説明を追加できる機能を開発して,平時に調査したランドマークを,緯度/経度情報と共にデータベースに記録する.

(2)アイコンの表示レイア
 利用できる地図の縮尺によって,ランドマークアイコンの表示が密集し,地図自体が見難い状況が発生する場合がある.また,ランドマークの種類や表示の重要度等でアイコンの表示数を制限したいケースもあり,これに対応するために“複数表示レイヤ機能”を開発した.
 方式は,10枚の仮想的に作成した表示レイヤを,0〜9の表示レベルを指定することにより,重ねて表示するものである.これにより,地図の縮尺が充分に大きくない場合でも,ランドマークの種類や表示の重要度により,レイヤを切り替えて見やすい状態で,地図の表示を可能とした.

 

4.開発したシステム
4.1 開発したシステムの構成

 本研究で開発したシステムの基本構成は,平時に登録した災害弱者台帳などを前提に災害弱者・見守りネットワークへの安否確認や避難指示などを発出する一斉同報メールシステムと,危険エリアへ接近した場合や避難時間がかかり過ぎた場合などに,位置情報を本部で監視することにより,避難支援指示を行う位置情報監視システムである.

(1) 一斉同報メールシステムの機能
 このシステムにおいて,災害弱者/見守りネットワークへの避難開始,避難上での危険回避,メール指示の回答を実現するほか,Web連携の可能な一斉同報メールシステム(モバイルi-Call)を利用した.これはASPサービスで提供され,事前のメッセージ登録や発行時の変更に対して柔軟に対応できる.また,メール機能については,各社の携帯電話に対応しているため,見守りネットワークが利用する携帯電話は個人所有のものを利用し,操作についても習熟した端末を利用することができる.Web連携機能では,メールの返答の他に手話ソフトの連携も実験し,ドコモのFOMA*1を使った聴覚障害者への手話による避難情報提供を確認した.

*1 ドコモの第三世代携帯電話で,iモード,iモーション,テレビ電話機能が利用できる.

(2) 位置情報監視システムの機能
 このシステムは大きく分けると,GPSの位置情報を処理するパッケージ部分と開発プログラムの2つに分割できる.
 パッケージ部分は,ドコモのDLPサービス*2を経由して,GPS携帯電話に対して第三者検索を掛けて,結果として受信した位置情報(緯度,経度)をデータベースに保存する.
 開発プログラムは,以下の3つの機能から構成される
  @ 災害弱者台帳処理:事前情報を登録する.
  A 図形描画処理:ランドマークや防災マップの
             
登録を行う.
  B 避難監視処理:避難状況を監視して,
              各種アラームを発行する.

*2 DLP:「DLP(DoCoMo Location Platform)コンソーシアム」において取り決められた統一プラットフォームに基づき,企業に位置情報データなどを提供する法人向けサービスである.

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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University