2.新魚目町の厳しい状況

 長崎県中通島は五島列島の中で最北端に位置する。一部の海岸線には、火山を成因とする赤い断崖も見られ、島全体に急峻な地形が卓越して平地が非常に少ない。また、急斜面に民家が建っているケースが非常に目立ち、高齢者にとって上り下りが大変だろうと想像される。
 本土との連絡は、空路では長崎・上五島空港が
12往復、福岡・上五島空港が11往復となっている。船便は長崎市、佐世保市と接続されている。中通島には7往復したがフライトが悪天候によりキャンセルされることが2便あった。昨年のトータルの実績では約15%ものフライトが天候を起因としてキャンセルされており、私のこの数字は悲しいかな、妥当であったといえよう。そして船便に変更して向かうことになるが、高速艇が大波に翻弄されて、最悪の船酔いとの戦いとなる。
  中通島は新魚目町を含めて
5町で構成され、人口約27,000人である。新魚目町は、その中通島の北部の半島に位置し、全長30・の細長い地域に1,932世帯、4,996人(2001年)が点在して暮らしている。

新魚目町の中心部と半島先端部との間の公共交通手段は13往復のバスのみであり、住民にとって利便性が非常に悪い。地理的には本土から時間距離と、島内の移動距離が大きく、地理的なハンディがある。こうした厳しい自然条件が、江戸時代に迫害されたキリシタンにとって、格好の隠れ家であったと考えられる。島民の約3分の1はキリシタンで、上五島各地に29の教会がある。その建物は明治初期の古いものがあったり、木造でありながらヨーロッパのゴシックを真似たものがあったり、西日本で唯一の石造り教会があったり、建築学的にも非常に価値が高い。
  また、高齢化率は
24%で、かつ独居老人が多い。しかし、それに対応した老人を支える施設・サービスが少ない。人口減少・高齢化に伴い、地域の小規模小売店舗が衰退し、買物等が不便となっている。
  インターネットの接続では都市部で流行している
ADSLは不可能で、ISDNがかなり待たされた挙句、やっと工事をしてもらえる状況である。住民のブロードバンド実現が程遠い厳しさがここにもある。

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図1.新魚目町の位置

レンガ造りの青砂ヶ浦カトリック教会。どこの教会も自由に見学できる。


Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University