離島における福祉システムの構築
−新魚目町(長崎県中通島)における実証試験
後藤 順久(経済学部助教授)

 

1.プロジェクトの紹介
離島地域においては、豊かな自然環境や地域資源に恵まれている反面、社会資本整備の遅れや交通・物流面における地理的条件不利などを背景に人口の減少や高齢化などの社会的課題が顕著になっている。とりわけ、福祉・保健サービスについては、官民を含むサービス事業者の不在や離島の住民と事業者との物理的距離に起因するサービス機能の低下が生じている。
一方、近年の情報通信技術の進歩に伴い、遠隔医療や遠隔教育などを支える情報通信技術の開発が進められている。情報通信は時間と距離の制約を越えられるというメリットがあり、地域社会に大きな恩恵を与えるものである。離島地域にとって情報通信を活用した福祉サービスの提供に取り組むことは、地理的不利を克服し、サービスの向上を図るための手段として有効であると考えられる。

本プロジェクトは、国土交通省離島振興課から委託を受け、福祉・保健分野で情報システム導入時の課題等を抽出するため、情報システムが未整備な地域を対象に実証試験を2種類行った。東京都の新島・式根島では、象印マホービン(株)殿の協力を得て、iポット(通信機能を具備した電気ポット)を高齢者宅20軒に設置し、新島保健センタで毎朝、安否を確認するシステムの構築・実証試験を行った。長崎県中通島では、「在宅福祉・健康管理システム」を構築し、高齢者宅3軒と役所、在宅介護支援センタをテレビ電話で接続し、健康相談を受けられる実証試験を行った。以下では後者の実証試験について簡単に報告を行うものである。

次頁へ→


上五島で最も高い番岳(標高443m)から足元を望む。猫の額のような平地に民家が集中している。


Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University