また, 陶磁器業界は電気用陶磁器が主流であり, 食卓用陶磁器は, 各産地出荷額が伸び悩んでいる. 美濃・有田・唐津・瀬戸などが主なところであるが, 産地素地の特色を生かした製品を作り出してきた一方大量生産により, 特色が失われてきている. 釉薬は, 基本釉として透明釉があり市販されている. 主流はこの基本釉に産地毎の作家ごとに着色剤等を加えながら独自の釉を作っている. また, 作家は個人で数千からの釉を扱うと言われている.
 本研究は, 2001 年度に事業化調査を実施した. その結果, 産地としてのある程度の特色はみられるものの, 使用される素地や釉薬の素材については産地性が見られない. 基本的な土の種類や釉薬の種類等の汎用性は考えられるが, 製品開発には, 汎用性とは逆に蓄積されているノウハウで十分に対応出来ると考えられる. むしろ作家的な製品を創出する為の多様な需要に対応するシミュレーションシステムに位置付ける事が求められる結果となった. その為個別の需要に広範囲に応えることを目的としたインターフェースを構築し, ネットワークにて産地 (窯別) メーカー別・そして個人の陶芸家とコラボレーションを促進するようなシステムの色づけが必要な為, 基本の事例データベースやルールを用意するものの, ユーザーが任意にカスタマイズする事が可能なシステム構成で開発する必要がある.
 本研究開発の実験課題は, 陶磁器業界用製品プロトタイプ支援のプラットフォームとして, ネットワーク対応のナレッジ CAD システムを実現することである. この課題は, 工芸的な職能のデジタルアーカイブとして困難な課題ではあり, 経済的・産業的に自動車や家電製品の金型設計等の設計ノウハウをデジタルアーカイブする事を望まれるが, その効果は一般的に理解されやすいだろう.

  4. 運用フロー (実験課題開発の目的)
 実験課題の目的は, デザイナーによるデザイン工程にエンジニアリングノウハウを活用する事である. また, マーケティングから, ダイレクトに新商品企画から製品設計迄のプロセス内の意思決定を可能にするシミュレーションを実現する事である. また, デザイン工程のアウトソーシングが困難なこの業界において, 原因は生産技術に関するノウハウのオペレーション方法である. これはツールの特性上, 結果として, デザインされた製品をシミュレーションするのみであり, ノウハウは不可視状態の提供になり, ノウハウの漏洩への憂慮も必要無い. これに伴い, デザインハウスにノウハウが無くても純粋にデザイニングを発注する事を可能にする. 従来, 新製品開発時には, デザイナーとエンジニアとのチーム連携により, プロトタイピングを行っている. 運用がネットワーク化する事により, 公的試験研究機関等の生産技法もシミュレーション用のデータとしてリアルタイムに活用されるデータベースを構築する事が可能になり, この業界全体のプロトタイプコストの軽減を図ることができる.

 


5. 中間報告
 2000 年度・2001 年度と 2 年間に渡り, 実験課題を研究開発している. 2000 年度は, 事例学習とルール生成に関する機能を含め基本的な VR モデリング機能の開発が終了した. 2001 年度は, パラメトリックサーフェース関連のレンダリング機能を中心に, 機能開発を進めてきた. 2000 年度に約 100 パターンのテストピースの焼成と事例学習を行い, 2001 年度は約 700 パターンのテストピースの焼成, 釉薬別の粘性等の計測をを行った. 基本的には事例学習に終了は無い, 現在基礎釉に透明釉 2 種類を調合し, これを基本に着色材を配合し, 段階的な焼成を繰り返している. テストピースからテクスチャーサンプリング用のプラットフォームのインターフェースを現時点では開発中である. これの完成を持って, システムのネットワーク化を予定している. また同時にオーナメント(模様)データベースの併設も本格的に行う予定である.

 

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