(1)中国の国民生活における情報通信サ−ビスの利用実態調査

 本調査は, 中国における国民生活の情報化がどのような形で進み始めており, またその国民生活の面にどのようなインパクトを及ぼし始めているのかについての実態を把握することを目的に行った. 具体的には, 中国において情報化が進んでいるとされる代表的な地域の一つである北京市区を対象に, 市民生活における情報通信サ−ビスの利用実態についてアンケート調査を通じて把握した.調査票については, 先進国との比較分析もできるだけ行えるように, これまでに日本でなされた国民生活の情報化に関する調査事例(主に通信白書) も踏まえて設計した. また, 情報通信サービスの範囲については, 通信白書で定義されている情報通信サービスの中の電気通信サービスを主な対象とし, その中でも今日の情報化の進展状況を把握する際の主な調査対象となっている移動電話, パソコン, インタ−ネットの利用サービスを中心に調査を実施した.アンケート調査の実施概要は次のとおりである.

1)調査項目
 調査は, 次の 3 つの視点から行った.
(1) 情報通信サービスの利用状況
 情報通信機器の所有状況, 情報通信ネットワークへの加入状況, 主な情報サービスの利用状況 (利用の有無と理由, 利用サービス,利用頻度, 利用用途, 利用料金など), など
(2) 情報通信サービス利用のニーズと阻害要因  情報通信機器の所有や情報通信ネットワークへの加入の今後の意向, 利用したい情報通信サービス内容, 利用していない理由, など
(3) 国民生活へのインパクト  生活時間や様式, 生活行動への影響,など

2)調査対象地域
 北京市区の全区 (8 区:城内 4 区, 近郊外 4 区)

3)サンプル
 サンプル (世帯)の抽出については, 北京市区での実態像の把握, 実査の可能性, 学術調査としての信叶ォの観点から劉教授と慎重に検討し, 現在できうる最も適切と考



えられる方法を設定して行った.具体的には, 調査対象地域とした 8 区の各区ごとに二つのエリアを当該区の世帯の特性から選出し, その選出したエリアごとに調査対象とする世帯を無作為抽出した.抽出世帯総数は 320 世帯であり, 留置法により調査を行った. 有効回答票総数は 257 票であり, 回収率は 80. 3%であった.

4)調査時期
 2001 年 8 月〜9 月

(2)中国の情報化の動向に関する実態調査


 国民生活の情報化の動向を把握するためには, 情報通信サービスの利用者の利用動向だけでなく, その背景要因となる情報通信サービスの提供に関わる企業活動の動向, さらにはそのような情報化を促進させるような国家政策の動向などの背景要因についても把握・分析することが重要である. 今回の調査研究では, 市民 (利用者) の利用実態そのものの把握に焦点を当てて行ったが, その利用実態の背景を理解するという位置付けで, 中国の情報化を促す国家的な戦略の動向, 中国社会の発展における情報化戦略の意味, 情報通信サービスの普及動向, 情報通信サービス関連の産業/企業活動の動向などについても北京での聞き取り調査を通じて把握を試みた.  聞き取り調査は, 2001 年 8 月に, 関係政府部門の担当者, 大学や研究機関の研究者, 情報通信サービス関連企業の経営者を対象に行った. 具体的には, 関係政府部門の担当者としては国家情報化プログラムの策定に参画した国家信息センタ−の専門家や新しく再編統合化された国家信息産業部の関係者に, 研究者としては清華大学の社会情報学の専門家や中国社会科学院のメディア情報の専門家に, そして企業経営者としては情報通信サ−ビス業務を新しく開始した日中合弁会社, 大学 (清華大学や中国人民大学) の若き研究者が新しく起こした情報通信サ−ビス関連のベンチャ−企業, 電信サ−ビス事業の発展を促進させるために政策的に新設された会社, 中国で最初にできた商用インタ−ネット接続会社の経営者たちにインタビュ−を行った.

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