北京では民生銀行,同方情報システム公司,および嘉隆衣業公司を訪ねた.民生銀行は中国で唯一私営企業家の投資によって資金を集め,中小の私営企業に融資を行う民営商業銀行である.私たちのインタビューに応じてくれた融資部の副部長は31 歳.
不良債権処理の専門家であり,インタビューの最中,日本の銀行における不良債権処理や銀行の危機管理などの問題について逆に私たちが質問されてしまった.
同方情報システム公司は清華大学出身の企業集団によって創られた上場企業である.この企業は「北京のシリコンバレー」と呼ばれる中関村の広い敷地に,10 階建ての本社ビルを新築した.ここでは大学での科学技術の研究成果の商品化が最短期間で着々と成功している,という印象を受けた.インタビューに応じた副社長は32 歳で,視野が広く,考えが鋭く,行動が速い,いかにも「清華人」らしい超エリートだった.
嘉隆衣業公司はT シャツを縫製する小企業である.社長と副社長は以前台湾系のT シャツ会社での同僚だったが,二人は気が合い,独立して創業.

副社長は「簡単なものでも最高の品質でつくれるなら,やりがいがある」と語る.副社長は廃材料を使って,縮小した20 センチ長のミニT シャツを作り,土産として観光地で売り出し,かなりの成功を収めているようである.彼はこれで「ミニT シャツ」の特許を取った.
今回の調査は期間が短く,ハードな日程であったが,予想以上の成果が得られたと思う.はじめて中国を訪問した近藤教授は中国の発展ぶりに接し「訪問前に頭の中に描いていた中国という国のイメージとはかなり違っていた」と述懐.中国通の岩田教授も中国の若者たちの,日本の若者たちと対比して生き生きとした姿に,大きな感銘を受けたという.毎年中国に帰る私も,若い企業家の奮闘ぶりを見て将来に大きな希望を見出し,娘をぜひ中国の大学に留学させたいと思った
. 中国人は今大きく変わりつつあるというのが三人の一致した感想である.気持ちにゆとりができたのか,人々の表情が穏やかな感じになり,また身内以外の人間に対しても,広く信用を大切にする気持ちを持つようになってきているという実感がした.

T シャツ工場にて:写真中央右より一人おいて,陳,近藤,岩田.
 
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