中国現地調査レポート
 この夏,本研究所の2 つのプロジェクトチームが中国において現地調査を実施しました.一つは北京の清華大学との共同研究契約に基づく「中国における情報通信サービスに関する調査」研究チーム,もう一つは,「中小企業の発展に関わる社会システムに関する国際比較」研究チームです.各研究チームの代表者からの現地調査レポートをご紹介します.
 
中国情報化の契機は“第3の波”
中国清華大学との共同研究:「中国における情報通信サービスに関する調査研究」

情報社会科学部教授 近藤 悟


 中国での現地調査を行うために成田空港から北京に一人向かったのは,残暑がまだまだ厳しい8 月20 日であった.北京国際空港には,暑い日差しが残る夕刻の情景を眼下に眺めながらの到着となった.空港では,今回の調査をいっしょに行う本学大学院留学生の由波氏(情報・経営開発研究科修士課程2年)が元気に出迎えてくれた.
今回の調査は,北京清華大学と本学情報社会システム研究所との共同研究プロジェクトとして企画したものであり,共同研究者に清華大学経済管理学院の劉麗文教授を得て,情報化の進展が中国の社会に及ぼすインパクトについて,主に国民生活の情報化の視点から明らかにしようというものである.具体的には,北京市民(300 世帯)を対象としたアンケート調査を通じて,国民生活の情報化がどこまで進んでおり,国民生活にどのような影響を及ぼしつつあるのか,そして,今後国民生活の情報化がどのように進んでいくと予想されるのかについて調査分析しようというものである.また,国民生活の情報化の背景を理解するために,中国における情報通信サービスの普及動向や情報通信サービス産業の発展動向,情報化を促す情報通信政策の最新動向などについて,北京市にある大学や研究機関の研究者,関係政府部門の担当者,情報通信サービス関連企業の経営者などへの聞き取り調査を通じて把握することも研究計画に加えた.

この調査では,まず最初の1 週間で聞き取り調査を行うとともにアンケート調査票の中国語版を完成し印刷製本するという二つの作業を行い,その後約3 週間かけて留置法によるアンケート調査を実施する予定で現地入りした.アンケート調査票の中国語版については,劉教授に丁寧に吟味していただいたお陰で簡潔でわかりやすい表現に翻訳されたものを作成させることができた.中国語への翻訳原案を作成した由氏は「中国語らしい文章表現に直されている」と感心することしきりであった.ちなみに,「移動電話」は「手机」,「インターネット」は「因特网」,「ネットワーク」は「網絡」と表現される.
日本から持参したノートパソコンを利用しての原案の修正作業から最終版の印刷製本に至るまでには思いもよらないハプニングが続き,由氏とホテルでの夜遅くまでの作業が3 日程続いた.このアンケート調査結果については学会や紀要などで発表する予定でいる.
聞き取り調査については,当初予定を越える11機関の関係者の方々とお会いすることができ,大変実り多い聞き取り調査を終えることができた.
この聞き取り調査の成果の一端を報告しておくことにしよう.一言でいうならば,中国における情報化は,大都市を中心にここ7 〜8 年の間に物凄いスピードで進展しており,まさに中国の経済産業の活力を創出する牽引力になっているということである.
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