(2)心拍数の計測

バイオアンプに心拍数計測用のコードを接続し, 胸部誘導で得られる心電図波形を導出した. 心拍数は 1 分間当たりの R 波の数であり, 通常, 1 分間 R 波を数えるのが信頼性の点からも望ましいのであるが, これでは運動中の心拍数を知るまでに 1 分間の時間後れが避けられないことになる. そこで本システムでは, 20 秒ごとの計測値を 1 分値に換算し, 1 分間に 3 つの 1 分値を計測することとした. これにより, 常に心拍数をモニターすることができ, トレーニング実施者の状況を把握し, オーバーワークによる危険を回避しやすくなる. ただし, 20 秒値を 3 倍して 1 分値とするので, 誤差が多少含まれることは避けられない.

(3)コンテンツ開発

コンテンツは, 基本的には平成 8 年度に作成した映像を使用した. ただし, 日本語の字幕の入っている映像, トレーニング動作の説明, また, 特に変更を要する映像等は改善した. 変更を要した映像は, 主としてビデオのデジタイズが思わしくなかったものである. 平成 8 年度および 9 年度の共同研究開発の主旨ではないが, 今後の研究開発の方向性も考慮し, “人間の動きを CG 化したライブラリを作成する”ことを開始した. 実際は,(株)A&A 企画に OpenGL を用いた CG 化を委託したが, これは, "産学協同で研究開発を行ってほしい"という(財)ソフトピアジャパンの方針をふまえたためである. 今年度は, 人間の動きを CG 化したライブラリとして, 『器具のいらないウェイト・トレーニング 〜トレーニング with パートナー〜』 (指導:かんなり栄輝 (フジ・トレーニングセンター代表), 監修:窪田登 (早大教授)) というビデオの映像を基に, 種々の筋力トレーニングの動作の CG 化を依頼した. 内容は, 器具を使用せず, タオル・柔道の帯等を使い, 2 人 1 組で, パートナーがトレーニング実施者に負荷を与える (パートナー・レジスタンス・トレーニング法) トレーニング法を解説したものである. この方式では, パートナーが負荷を変えられるので, ケガの心配がなく, また, 特別な器具を使用しないので, トレーニングを実施する上での利便性が高い. CG 化したトレーニング動作は, 肩のトレーニングが 5 種類, 背のトレーニングが 4 種類, 大腿筋と大殿筋のトレーニングが 5 種類, 下腿・臀部・股関節周辺のトレーニングが 5 種類, 体幹 (胴) のトレーニングが 5 種類, 首・肩の回旋に関わる筋のトレーニングが 5 種類, 胸のトレーニングが 8 種類, 腕 (屈筋) のトレーニングが 6 種類, 腕 (伸筋) のトレーニングが 5 種類である


考 察

(1)ハードウェアについて

今年度は, Macintosh を中心としてシステムを構成した. 図 2 はこのシステムの一例である. 肘の屈曲動作の場面であるが, 左上の映像, および右上の Color Qcam による映像は平成 8 年度と同様の構成である. 左下が運動中の心拍数の生波形を, 右下が 20 秒値より求めた心拍数値を示している. 心拍数は, 有線方式で, AD 変換器を介して標準の SCSI ポートより取り込んでいるが, 計測上特に不都合はなかった. 問題は, 左上の映像, および右上の Color Qcam による映像であった. それぞれにメモリを相当割り当てたが, 映像の動きに滑らかさが欠けてしまった. 映像のデータは Jaz Drive から取り込んでいるので, 読み込みの部分での問題ではなく, CPU (PowerPC604) の問題であろうと思われた. しかし, より高速・高性能の CPU が矢継ぎ早に開発されている現実をふまえれば, CPU の問題はあまり重要ではないように思われる. PowerPCG3 で一度試してみたいところである.
無線方式に関しては, PCI バス対応の AD 変換ボードであるため, 信号の取り込み・AD 変換が相当高速で行える. ただ, コネクタに 68 ピンが使用されており, 68 ピンのコネクタ (米国 AMP 製) がまだ日本ではほとんど出回っていないところが難点である. 今年度は, コネクタ変換用のボックスを作成し, 68 ピンを 50 ピンに変換した. 従って, ボードのすべての機能を使用したわけではなかった.


図2 開発システムの一例
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