平成 9 年度 日本福祉大学・ソフトピアジャパン共同研究開発

『マルチメディアを用いた明るく楽しいリハビリテーションシステムの開発』

情報社会科学部助教授 岡川 暁

はじめに

平成 8 年度より, 財団法人ソフトピアジャパンと日本福祉大学との間で, 「マルチメディアを利用した明るく楽しい (ゲーム感覚の) リハビリテーションシステムの研究・開発」 というテーマでの共同研究開発を行ってきた. これは, 「病気・事故・生まれながらの障害を持つ人が, リハビリテーションを楽しく行うことにより知らず知らずのうちに効果をもたらすことを目指す」 システムを開発するものである.
これを具体化するため, “物語・映画・テレビゲームの主人公になって身体を動かさせるソフトの開発”というタイトルで研究・開発を進めることとした. その概要は, “トレーニングマシン等を使って筋力トレーニングをする際, トレーニングマシン等の前にコンピュータを設置しておき, 物語・映画・テレビゲーム等を提示する. これらの映像の主人公の動きに, リハビリテーションを行う部位の動きを含めておく. トレーニング実施者が主人公になったつもりで当該部位を動かしていることにより, 自然と筋力トレーニングが行えるようにする.”というものである.  これまで,“明るく楽しいリハビリテーションシステム”の研究・開発過程として,
1) トレーニング者が興味を持ちそうな内容で, 主人公の動きがトレーニング部位の動きを含むような物語・映画・テレビゲーム等を選択する. 場合によっては新規に作成する.
2) トレーニングのインストラクションを加えて, ソフトを作成する.
3) コンピュータにより, トレーニング中の筋力の発揮状態・トレーニング実施者の運動中の生理学的指標 (心拍数, 血圧, 他) をリアルタイムで計測し, トレーニング実施者が無理なく運動できるように制御する. オーバーワークになった場合は, すぐにトレーニングを中止させるような仕組みをソフトに含めておく.
4) トレーニングマシンをコンピュータで制御し, 負荷の設定を自動的に行えるようにする.
を設定し, このうち, 1) および 2) は平成 8 年度にすでに報告した (平成 8 年度日本福祉大学・財団法人ソフトピアジャパン共同研究報告書).
平成 9 年度の目的は, 3) の“運動中の生体信号をリアルタイムでモニターし, トレーニング実施者の安全を確保するための制御システムを開発する”ことである.


開発概要

(1)システム構成

1. ハードウェア
システムは, Macintosh (Power Macintosh 9500:144MB メモリ, 1GBHDD, 4 倍速 CD, 内蔵 JazDrive) に, 心拍数計測用のバイオアンプ, および AD 変換器を外部接続したもので, 有線方式により心拍数を計測するものである. AD 変換器は, MacLab/8 ((株) AD Instruments) を, 心拍数計測用には, 同 AD 変換器に接続できるバイオアンプ (Bio Amp: (株) AD Instruments) を用いた. (図 1) である. MacLab/8 では, 同時に 8 チャンネル分のアナログデータを取り込み, 処理することができる. また, アナログ出力用に 2 チャンネル使用できる.
無線による心拍数の計測を可能にするため, PCI バス用の AD 変換ボード (PCI-MIO-16XE-50: (株) 日本ナショナルインスツルメンツ) を装着し, 多用途テレメーター (RJ3200N: (株) 日本電気三栄) よりの心拍数の信号を計測するシステムを作成した. 本 AD 変換ボードは, 16 ビットでサンプリングし, 同時に 16 チャンネル分のアナログデータを取り込むことができる. また, アナログ出力用に 2 チャンネル使用できる.
2. ソフトウエア
有線方式では, Chart 3.5.4 ((株)AD Instruments) を使用した.
無線方式では, LabVIEW/J Full Development System for Macintosh/Power Macintosh, Ver. 4.0.1 ((株) 日本ナショナルインスツルメンツ) を使用した.


図1 心拍数計測用のバイオアンプ(上部)とAD変換装置(下部)


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