研究報告

実践的活動を通したアシスティブテクノロジー (支援技術)に関する
機器および要素技術の研究 研究代表者:渡辺 崇史
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2. 研究の方法
今年度においては次の 2 点を中心に展開した.
(1) AT の適合相談の実施と相談体制の整備
 何らかの障害を持つ本人とその家族および福祉医療関係の支援者等からの個人相談と, 福祉医療関連施設等からの相談を受け付け対象とした. 相談対応は, 福祉テクノロジーセンター, なごや福祉用具プラザ ((社福) 名古屋市総合リハビリテーション事業団の運営する介護実習普及センター) での来所相談と, 利用者の自宅や施設・病院への訪問相談を行なった.  特に今年度においては, 個別のニーズに対応しながら相談体制と関係機関との連携体制づくりを行なった.  また相談対応は, 単に聞き取りや評価だけに終わることなく, 利用者に適合した福祉用具の選定を行なうものとし, 必要に応じて福祉テクノロジーセンター所有の福祉用具・支援機器を一定期間貸し出しての試用評価や, 福祉用具や支援機器の製作改造等の工学的支援も行なった. 相談上での工学的支援は, 既存技術を用いて比較的短期間 (おおよそ 3 ヶ月以内) で対応できるものとし, 新たに何らかの要素技術を用いる必要がある場合や長期に渡る場合は, 潜在的ニーズとして今後の研究開発テーマとして取り上げるものとした. また, 相談内容から福祉用具や支援機器のみでの 対応が困難な場合は, 関連機関と連携を図り適宜対応した.
(2) 機器操作のための操作スイッチ用インタフェースの研究
 特に肢体不自由の障害を持つ人が, コミュニケーション機器やパソコン, その他活動を 拡大するための電化製品やおもちゃ, 環境制御機器等を操作するためには, 身体状況等に適合した操作スイッチを 選定または製作して適用する3).  しかし, 不随意運動や失調等の運動機能障害による誤操作を防止したり, 利用者の機器の利用目的に応じた操作を より良く実現したりするためには, 操作スイッチの入力信号および利用対象機器への出力信号を制御する必要がしばしば ある4). この課題に対応するために, 汎用マイコンを用いた操作スイッチ制御のためのインタフェースを試作し, 相談事例に導入する試みを行なっている5), 6)
 今年度においては, 今まで行なった操作スイッチ用インタフェースの導入適合事例を再吟味し, 不特定多数の利用者の個別性に対応し得る制御回路の仕様を決定するとともに, より汎用性の高い操作スイッチ用 インタフェースを開発することをねらいとして, 検討を行なった.

 

3. AT 適合相談の結果
2005 年 4 月〜2006 年 3 月の期間に行なった相談結果を示す.
個人相談者からの対応結果
  相談実人数 64 人に対応し, 相談のべ回数は 125 回であった (表 1). これらは, 単に情報提供のみで終了する相談ケースは除き, 相談記録を残しているか, 現時点で相談継続中の 相談事例である. 来所面接相談者は東海地区 (愛知・岐阜・三重) にわたり, 訪問相談は全て愛知県内である. “その他”とは郵送による機器の貸し出し, メールや電話による相談である.

表 1 個人相談者からの対応結果
相談実人数:64 人  
相談のべ回数:125 回 <内訳>来所面接:60 回, 訪問相談:59 回, その他:6 回
平均相談回数 (相談のべ回数/相談実人数) =1.95 回        (最大 6 回) ※継続中も含む

 相談対象者の主たる疾患・障害名を表 2 に示した. 実際には肢体不自由のみの障害ではなく, 知的障害, 高次脳機能障害, 言語障害 (構音障害, 失語症等), 視覚障害, 嚥下障害, 呼吸器障害 (人口呼吸器装着等), 感覚障害, 排泄障害等を伴う重複した障害を持つ.

表 2 相談対象者の主たる疾患・障害名
疾患・障害名
人数(人)
備   考
脳性マヒ
28
 
神経・筋疾患
18
  • ALS(筋萎縮性側索硬化症):8 名
  • 筋ジストロフィー(デュシェンヌ型):4 名
  • 脊髄小脳変性症, ウェルドニッヒホフマン病等, その他の神経
  • 筋疾患:6 名
脳疾患・脳障害後遺症等
6
頭部外傷者も含む
脳血管障害
4
片マヒ, 四肢マヒ者等
脊髄損傷
4
全て頸髄損傷者
免疫系疾患
1
関節リウマチ
欠損・切断
1
四指欠損
不明・その他
2
 
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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University