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『安全・安心な防犯まちづくり』 へ繋がる 『福祉のまちづくり』

 広島小一女児殺害事件(05年 11月),栃木小一女児殺害事件(05年 12月),長浜園児殺害事件(06年 2月),川崎小三男児墜落殺害事件 (06年 3月)など,近年の学童を狙った凶悪犯罪の増加を受けて,学童の安全登校,学校内での安全確保は,防犯を考える上で最重要課題となっている.
 不断に発生している犯罪を同等同時に押さえ込むことは不可能である.そこで特に犯罪被害に遭わせてはいけない対象者である学童の,通学路や校内・園内などの犯罪を起こさせてはいけない場所での安全確保を最優先に考える必要がある.
 近年では,犯罪予防研究では犯罪者の思考や生い立ちなどには視点を向けず,何故そこで犯罪が行われたのか,犯罪が行われた場所に着目し,犯罪が起こりにくい環境を創るべきという考え ―防犯環境設計― が広まりつつある. これは建築環境的=物理的に工夫を行い地域住民の監視性を確保する,侵入しにくい環境を創るなどの主に建築で行う物理的な防犯対策である.
 しかし,広島や長浜の事件のように物理的な防犯環境設計では十分に対応できないケースも増えつつある.従前の防犯環境設計に加えて,社会的な防犯環境設計を考えるべき時代にきていると筆者は考える.
 この社会的防犯環境設計では,福祉の視点が重要となっている.見守り合いを醸成させる地域計画を行うことは,単に学童の見守りだけでなく,地域の高齢者も見守り・見守られることになる. 地域福祉の一助となる福祉のまちづくりは結果として『安全・安心な防犯まちづくり』へ繋がるのである.
 このように福祉の視点を持った物理的・社会的防犯環境設計は,建築学だけ,社会学だけでは具現化は難しく,学際的知識が求められ,まさしく日本福祉大学でこそ学びえる領域ではないか. (T)

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