研究報告

筋電図と映像分析からみた介助動作の特徴
研究代表者:松井 健
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【方法】
1) 被験者
 被験者は, 健康な大学生男子 6 名とした. 被験者は, 体位変換や移乗などの介護支援未経験者であった. 被験者の年齢は, 20.0 歳, 身長は, 171.8±6.2 cm, 体重は, 63.6±8.2kg であった. 十分に研究および実験の内容を説明した後, 各被験者から参加の同意を得た.
2) 測定項目
 測定項目は, 体位変換動作では表面筋電図, 動作中の体幹と大腿のなす角度 (以下, 体幹−大腿角度), 膝関節角度とした. 車いす移乗動作では表面筋電図と動作中の頸部の高さを測定した.
 表面筋電図は, 両動作とも三角筋, 上腕二頭筋, 橈側手根屈筋, 腹直筋, 脊柱起立筋 (腰椎レベル), 外側広筋, 前脛骨筋の 7 箇所から得た. これらは全て右側 (右腕, 右脚, 右腹背部) を対象とし, 10 回の動作中, 全ての時間帯で測定した. 生体信号用マルチテレメーターシステム (WEB5000:日本光電社製) を用いて導出した各箇所の筋電信号を A/D 変換装置 (PowerLab システム:ADInstruments 社製) を介してパソコンに取り込み, 後の筋電図解析のために記録・保存した.

 

保存した筋電信号を全波整流して積分し, 筋電積分値を求めた. 積分区間は, 体位変換動作では上腕二頭筋の放電が始まる時点から, 膝を支えていた左腕が身体から離れるまでとした. 車いす移乗動作では, VTR 映像を確認し, 座位の対象者を上方に引き上げる準備が整った時点を動作開始時点とした. また, 車いすに要介助者を座らせて被験者が姿勢を元に戻す直前の時点を動作終了時点として定めた. これらの映像と筋電図波形の同期は, 動作開始前に発光ダイオードを光らせ, その光をデジタルビデオカメラで写し, 同時にスイッチ ON 時の電圧変化を前述の A/D 変換装置に筋電図波形と取り込むことで行った.  なお, 筋放電量の解析に際しては, 被験者間の動作時間の違いや複合的な動作であることを考慮し, 1 秒あたりの積分値 (iEMG/sec) として算出した. 体位変換時の体幹−大腿角度ならびに膝関節角度は, 被験者の体位変換動作を左側方から撮影した VTR 映像から, 上半身の引き上げ局面について分析した (図 1, 2).


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図1 体位変換動作の流れ
介助支援者は左手を膝下に入れて、 膝を引き上げながら、 右手を右肩後方へ回す (上段)
    要介護者の上半身を起こし、 後半に、 臀部を支点にして脚を回転させ、 足を床におろす (下段)


Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University