高齢者ケアマネジメントと地域福祉情報化システムの開発

− 第1次調査結果要旨 −

社会福祉学部教授 野口 定久

1. 調査研究の背景

 このレポートは, 日本福祉大学情報社会システム研究所 「地域情報化グループ」 の研究事業として実施した 『知多半島地域における地域福祉・情報システムの構築と開発に関する調査研究 (知多半島総合研究所との共同企画, 1997〜8年)』 の第1次結果報告書を要約したものである.
 今日, 社会福祉や社会保障の領域では, 少子・高齢化の進展, 核家族化や女性の社会進出による家庭機能の変化などにともなう福祉需要の増大と多様化に対応する社会福祉制度の改編の動きが相次いでいる. その主要な論点は, 1) 将来にわたって増大・多様化する福祉需要に的確に対応し, 国民全体の生活の安定を支える地域福祉システムの構築, 2) これまでの中央集権的な福祉サービス供給体制を地方分権化し, サービスの多元化と住民参加を志向した供給体制への変革, 3) 国民の自立支援, 選択の尊重, 4) 福祉サービス利用者の信頼と納得の得られる質の高い福祉サービスの効率的運営などである. これらの諸課題に対応するために, 政策・制度・サービス体系としては, 地方分権の促進と社会福祉の基礎構造全体の抜本的な改革, さらに, これらの問題を現実的に解決していくための市町村自治体レベルにおける地域福祉システムの構築と, その着実な推進が求められている. とりわけ, 本格的な少子・高齢社会への対応を目前にひかえ, 保健・医療・福祉を中心とした福祉関連領域におけるケアマネジメントと地域福祉システムの開発は, これからの介護保険時代に対応するための緊急の課題であるといえる. 今回の調査研究の報告は, 最終的な目標である 「介護保険時代における持続可能な地域福祉システムの構築」 の第一段階の結果をとりまとめたものである.



2. 調査の概要

(1)調査研究の対象自治体
 半田市,常滑市,阿久比町,武豊町,美浜町,南知多町の2市4町

(2)本調査研究のねらい
1)平成 12 年に介護保険制度の導入が予定されているなかで, 高齢者要介護世帯の在宅生活を可能にするケアマネジメント・モデル事業の実用化をはかること
2)介護保険制度対象外の高齢者の健康づくりや虚弱高齢者の早期発見・早期対応のシステムづくりと家族介護者の介護困難を早期に解決していく地域社会の体制づくりを目指すこと
3)社会的入院や老人ホームの待機者の解消をめざして, 介護保険制度の効率的な運用と総合的ケアシステムの構築を図ること

(3)本調査研究の全体構成
第1次調査:『中高年齢者の生活支援プログラムのための生活と健康に関するアンケート調査』 サンプリング数;2000 ケース, 調査票郵送回収法 (1997 年度実施済み)
第2次調査:『特別養護老人ホーム待機者の保健医療福祉ニーズと生活実態に関する調査』 対象者数;約 50 ケース, 訪問面接ヒアリング調査法
第3次調査:『虚弱・要介護高齢者の在宅介護と保健医療福祉に関するニーズ把握調査』 対象者数;約 150 ケース, 訪問面接ヒアリング調査法



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