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高木[慶應義塾大学教授](2006年)によれば、「訓練主題の含まれるケース教材を用いてディスカッション授業を行う体系的な教育行動」と定義されています。
訓練主題が埋め込まれたケース教材を用い、講師のリードを受けながら受講生がその背景にある顕在的・潜在的な要因を討論し、解決策を相互に模索し、
自らの意思決定力を向上させることを目的としています。
意思決定の本質は「より良い方法の選択」であり、多くの選択肢を準備し、何を選択するのか、
その価値判断やプロセスを言語化し、問題の背景や要因など多面的に分析することです。
ケースメソッド授業の条件は、次の4点を満たしているものです。
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1.ケース教材が用いられる
2.3段階からなるディスカッションで思考を深める
3.ディスカッションリーダーによる学びの舵取り
4.参加者は協働的な討論態度を貫く。
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異なる背景、価値観、教育背景を持つ参加者同士が討論することで、多面的な問題分析力、
情報統合能力、意思決定能力など実践力を鍛えます。参加者は他者の発言を受けて自らの考えを再検討し、
新たに構築された考えを発言し、さらに考えを深めます。これらを繰り返し行うことで、討論による相乗効果が期待できます。
このような実践力は、知識伝達型である講義では身に付きにくいものです。職種や領域を超えた意思決定が求められる、高度専門職業人に適した教育方法です。
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ケーススタディまたは事例報告のケースは、執筆者の分析、判断、解釈が書かれているものが多く、
一定の解決方法や意図が読み取れます。討論による異なる意見を引き出すのではなく、一つの解決策を導き出すことが目的です。
一方、ケースメソッドのケースは、討論のための資料として作成されるもので、問題状況に関する記述は詳細に書かれていますが、
執筆者の分析や解釈は書かれていません。討論する人が自由に解釈し、活発な討論を繰り広げ、参加者による相乗効果を体験しながら、
多面的な分析力や問題解決力を養成することを狙っているからです。
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高木晴夫、竹内伸一(2006):ケースメソッド教育ハンドブック.慶応義塾大学ビジネススクール
高木晴夫、竹内伸一(2006):実践日本型 ケースメソッド教育.ダイヤモンド社
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