プログラムの概要

1.日本福祉大学の取組テーマ 

「知多広域圏活性化にむけた学生の地域参加−学部の実践型教育の強化を通じて−」

 (1)取組の概要

本学のとりくみは、地域再生本部において認定された「中部国際空港を核とする知多半島観光再生計画」)の実現に係わる学生の主体的な活動を促進し、同時にこの事業を支える学部の実践型教育の充実を図ることにあります。
学生の主体的な活動参加においては、地域再生計画に関連する各地域・団体の集客型のイベントならびに地域づくりや地域振興事業の調査・提言活動にとりくみます。
 学部における実践型教育においては、@フィールド型授業については参加学生の拡大、地域の諸団体との連携の強化を、Aシミュレーション型授業についてはメディア教材の充実等による学生の調査・分析・提言能力の向上を図ります。
 本プログラムは学部における実践型教育―地域再生事業への学生の主体的な活動参加をもって、本地域再生計画の実現に貢献するとともに、学生の問題解決能力の向上を促すことを目的とするものです。

 

 (2 )プログラムとの適合性

 1.本プログラムの背景
 愛知県及び知多半島5市5町(半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町)の「中部国際空港を核とする知多半島観光再生計画」及び愛知県の「産業観光資源を活用した地域づくり」再生計画、またさらに愛知県による、常滑市の全域を区域とする「中部臨空都市国際交流特区」(構造改革特別区域)に見られるように、知多圏域は2005年の中部国際空港の開港と万国博覧会を契機として、大きく変動しようとしています。人口58万人の圏域に「1,200万人ともいわれる人の流れが新たに生じる」(地域再生計画)のです。知多圏域は新しい地域づくりの内容と方法の探究をまさに焦眉の問題としています。 
 この「地域再生計画」に先立って知多広域行政圏協議会は2001年に知多圏域を「エコミュージアム」とする構想を策定し、また経済産業省中部経済産業局では「魅力ある地域振興」のために、2002年3月には調査報告書「人・自然・産業がひびきあう知多半島ビジターズ戦略」を公表されました。これらの基本戦略を策定する上で、本学は日本福祉大学知多半島総合研究所(所長 堀内守)を中心に一定の貢献をしてきましたが、新空港開港など新しい環境のもと、知多圏域の地域振興の多様な政策を検討するうえで、福祉、経済、経営、情報系の学部を擁し、関連分野の研究者及びNPO団体、地域情報化、多様な地域ボランティアなどで活躍する学生を有する本学への期待はことのほか大きいものがあります。

[注1]知多ソフィア・ネットワーク:本学及び知多半島の博物館、美術館などが相互に協力し合うネットワーク組織(知多ソフィア・コンソーシアム)の下に置かれた経済、産業分野の地域振興を図る協力組織。

 2.本取組の目的・目標と本学の建学の理念
 本取組は、圏域の観光再生を課題とした地域再生計画に呼応するものです。この「観光再生計画」は単なる“観光産業”の再生計画にとどまらず、地域の伝統的な文化(財)の継承と発展、地場産業、伝統産業、関連産業の発展、地域景観の保全と創造に関する住民自身の活動や地域学習など、民・産・官・学すべてが共同で取組む、総合的で多様な地域づくりの推進を眼目としています。
 本学は1953年、中部社会事業短大として出発し、その後わが国において4年生の社会福祉学部及び大学院社会福祉学研究科の嚆矢となった歴史を有し、さらに本学が1983年に名古屋市内から知多半島、美浜町に移転した際、今後の大学づくりの基本方向として全学に提起された枠組みが「地域の共生・共創」という概念でした。
 それは大学が自己完結的な存在でなく、地域の経済、産業、文化、生活に深く結びついており、そうした開かれた回路を豊かに発展させることによってこそ大学は学問研究と教育実践を前進させることができるという、大学改革の基本的な考え方です。
 地域住民と国民の幸福―「万人の福祉」を創造することを建学の理念とした日本福祉大学が移転後20年を経て、いま取組もうとする「知多広域圏活性化にむけた学生の地域参加」事業は建学の理念の深化であり、新しい大学づくりのマニフェストにほかなりません。

 3.学部での最近のとりくみ
 経済学部では経営開発学科の福祉経営学部への改組(2002年)にともない、既設経済学科の改革を行ない、「地域・経済コース」と「金融・財政コース」の2コースを設置しました。
 地域経済コースでは2003年、新たに「地域学」(2年生配当科目)を開講し、地域の問題点を自ら発見する「まち歩き」を行い、地域で活躍する様々な団体、組織の方々をゲスト講師に迎え、最終的にはグループごとの「提言」をまとめる成果をあげてきました。
 また福祉経営学部では2003年〜2004年にかけて1年生のゼミナールにおいてフィールドワークに取組み、医療や福祉、企業系など多面的な問題に取組んできました。授業評価をみると、集団的な学習のスタイルについての共感や他者理解、社会認識が深められたことが明らかとなっています。
 また社会福祉学部の学生を先頭に、総合移転後、それまで全く基盤を持たなかった知多地域5市5町すべての自治体で障害者、高齢者、児童組織その他のボランティア活動が組織され、学内で日常の講義、ゼミを通じた学習とあいまって、持続的継続的な学習・実践活動が蓄積されてきました。(資料@)
 教員の活動では、1988年に開設された知多半島総合研究所には全学部から教員が参加して地域保健福祉計画策定、高齢者や障害者支援政策、子育て支援、地域史の掘り起こし、地域経済や環境対策などさまざまな新しい課題に取組み、毎年研究集会と成果刊行が続けられてきています。これらの地域研究に参加した教員はのべ200名に及びます。
 さらに1995年には現実社会の問題発見と問題解決を学部の基本的スタンスとする情報社会科学部を半田市との公私協力により設置し、付置研究所である情報社会システム研究所、半田市と提携した生涯学習センターとともに、研究教育の成果還元の事業に取組み、地域情報化や人材養成事業に成果をあげてきました。

 4.地域連携事業と大学教育
 現在わが国の高等教育をめぐる問題の一つに、学生の社会的体験の希薄化、学問研究や学習活動に関する意欲の減退、卒業後の進路についてのモラトリアム現象など大学が存立する内的な規範の危機の問題があります。本学もその例外ではありません。
 その中で本学はインターンシップ教育、社会福祉実習、教育実習など、学生が社会の現実に触れることで、学ぶことの意味や自己の目標などを自ら問い直し、学習のインセンティブを高めるきっかけとなっていることに着目し、本プログラムにおいて広範な学生が知多圏域の現実の事象に関わることで、学生の主体的な学習を促し、学生が本来秘めている自己実現への内的要求を実現させる実践的な教育活動=実践型教育を展開しようとするものです。
 またこのような実践的取組を成功させる為にも、「地域学」、「まちづくり・新事業創出」、「地域経済論」などの学部講義科目におけるフィールド活用・学生参加型の授業開発や「情報処理演習」、「経済統計」、「経済情報演習」での調査力、分析力の強化など、学生の問題認識、問題解決能力を育てる教育改革を併せて追求しなければなりません。
 本学ではこうした活動を発展させ、地域のNPO団体、企業、自治体、経済団体などの社会的資源を包括的に学生の教育の場とするコープ教育への発展を展望し、「地域に育てられ、地域を育む大学」を目指したいと考えています。
 学生プロジェクト・地域再生計画・地域振興・日常的な取組・学部教育の関連を図に示します。
 

 5.成果の還元
 本プログラムの進展に関しては可能な限り正確な事業実践の復元をおこない、経過と現状、課題の達成度と今後の研究テーマについて広く公開していきます。

そのため、本プログラムの成果と課題に関する研究集会、交流活動を活発に行ないます。

   
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