日本福祉大学

2006年度 事業計画

T.2006年度の位置と重点

 「現実的な近未来は、少なくとも、人類未踏の超少子・高齢社会の急接近であり、大学入学該当年齢(18歳人口)の減少傾向は、向後少なくとも4半世紀は続き、当初予測より2年早い平成19年には『大学全入』時代を迎える」(理事長・総長「所信」)。このように大学をめぐる環境は、引き続き厳しい状況にある。また、今年1月の中教審「我が国の高等教育の将来像」の答申に始まり、教員制度改革、教員免許制度改革、大学院改革など矢継ぎ早に大学制度改革に関する答申が出され、大学設置にかかわる規制改革の動向とあわせ注目がいる。平成18年度は引き続き、こうした経営環境と政策動向に留意した事業推進が求められる。また、県内の動きを見ると人間と福祉に関連する学部新設・再編が急増しており、この分野の新たな競争の激化の中で、改めて本学の役割と真価が問われている。

 本学は歴史的な50周年事業の多彩な展開を通して、環境整備事業やエッセイコンテストをはじめとした記念事業を積極的に展開すると共に、こうした取り組みの成果と50年にわたる教育・研究の到達を基礎に、文科省より、COEや5つのGP申請の採択を受け、その実績を社会的にも評価された。

 こうした到達を踏まえ、平成19年の全入、平成21年18歳人口120万人時代の到来という、厳しい時代に向け、確固とした経営・教学の進むべき目標や方針を確立すべく、学園戦略本部を中心に、学園の将来ビジョン並びに長期計画の検討を開始した。すでに、学園報72号においては、「21世紀学園ビジョンの策定にあたって(所信)」「学園経営のイデーと長期戦略へのメッセージ」(大沢勝総長・理事長)が発表され、基本構想委員会や企画委員会、各専門部会を設けての検討が本格化している。

平成18年度は、この学園ビジョンを策定すると共に、平成17年度内に策定される「ビジョン概要(骨子)」に基づく「短期計画」(平成18年度−平成20年度)の実施初年度でもあり、「緊急4課題」を中心とした諸課題を推進する年度である。あわせてこれらの改革の推進をはかるための安定的な管理運営体制を検討・整備する年度でもある。
厳しい学募環境の中で、積極的な広報活動、対外活動の展開により志願者を確保することを第1の経営重点とする。そのためにも大学・学校評価の重要な指標となっている学生就職の率・水準の向上に明確な目標を持って前進を図ると共に、その両者の源泉である教育内容・方法の抜本的改革、専門力量の強化、学生・生徒満足度の向上に本格的な取り組みを開始する年度である。このための諸改革を遅滞なく遂行すると共に、それを支える組織上、人事制度上の改革、評価システムの確立等を推進する。大学の社会連携諸活動をさらに総合的に推進する「福祉文化創成事業」の開始も重要な課題となる。また、学生募集が厳しい環境下にある専門学校、高校の改革も極めて重要となっている。

財政上も、創立50周年記念事業の遂行や周年寄付の終了、学募をめぐる厳しい環境、学費据え置き、通信の完成で新規事業での増収はないなどの点から、全体として帰属収入の増加は期待できず、引き続き経費削減、人件費総枠の適正化が重要な課題となる。あわせて学園の未来を創る長期計画財源の計画的蓄積、新たに設定した基金「教育改革推進事業特定資産」「先導的研究開発事業特定資産」の蓄積と活用が重要課題となる。
経営上は、私立学校法改正にもとづき、事業計画、事業報告、財政公開、監査システムなどの充実を図り、厳しい経営環境の中で確実な改革推進をはかるためのマネジメントサイクルの一層の整備を進める。

 以上、平成18年度は、学園の中長期の展望を作り出すと共に、直面する「全入時代」に対応する短期的改革を断行する、極めて重要な年度となる。現時点で基本構想等は計画段階にあるため、本年度末の確定を待って、本事業計画との整合を行う。

U.重点事業計画

  1. 「21世紀学園ビジョン」を策定する。学園ビジョン(骨子)に基づく、「学園新長期計画・短期計画」(平成18年度から平成20年度)を策定し、実施に移す。
  2. 短期計画に基づく学部・学科の改組・再編計画を具体化すると共に、大学院改組、新設に係わる文科省申請を準備、推進する。
  3. 教育改革の提案に基づく、教育力の強化と恒常的な教育改革・評価システムの充実、それを支える教員制度の検討など改革の具体化と推進をはかる。
  4. 科目精選とオンデマンド授業の推進など通信・通学融合の促進に取り組む。特色ある教育づくりのためのGP事業の推進と新たな取得に取り組む。
  5. 全卒業生に対する就職率80%以上を目指す。重点・優良企業・施設、公務員・教員などの就職実績の向上に取り組む。
  6. 学生募集・広報においては地域特別対策、高校個別対策を強化し、「ふくし」パンフやホームページの活用促進などの取り組みを通して平成17年度水準の志願者を確保する。
  7. 研究戦略を策定する。COEプログラムの確実な遂行を図ると共に、福祉専門職の養成プログラムの研究・開発等の諸事業に取り組む。
  8. 福祉文化創生事業の具体化と推進をはかる。長寿社会に係わる連携事業の推進、名古屋地区での先駆的福祉事業の展開、CO-OP教育の具体化などに取り組むと共に、それらの事業の計画化と評価手法の確立をすすめる。
  9. 情報の全学統合型「ネットワーク基盤」構築に向け年次的環境整備を進める。当面、eラーニングでのオンデマンド授業や教材開発の支援や学習環境の整備を図る。
  10. 専門学校長期計画の検討、専門職高度化プランの推進を図る。両専門学校の定員確保と教育の改善を進める。
  11. 付属高校においては、「青年期一貫教育」の発展、生徒の学力向上や進路実績の向上のための教育改革、授業改革を柱とする高校「短期計画」を策定し、その推進を図る。また、経営指標を上回る生徒募集に万全を期す。
  12. 職員人事制度の新制度への完全移行、教員人件費管理における総枠の管理指標の設定をはじめとする人事諸制度の整備を推進する。
  13. 財務においても厳しい経営環境下、引き続き経費削減、人件費抑制管理施策や収益性の改善に取り組む。事業単位別管理を充実させ、マネジメントサイクルの改善を進める。

V.領域別事業計画

1.新長期計画
  1. 1) 基本構想委員会での審議を踏まえて、「21世紀学園ビジョン」を策定する。
  2. 2) 学園・大学新長期計画(第二期)の短期計画を立案・確定する。
  3. 3) 大学院情報・経営開発研究科の専攻分離による新たな専攻等の設置について、文部科学大臣に対する設置認可の届出を行い、平成19年度開設を準備する。
  4. 4) 既存研究科博士課程の専攻を統合し、COE等の国際水準の教育研究を推進する大学院としての、本学らしい特色を持つ「総合大学院」(博士後期課程)を新設するための申請を、文部科学大臣に対して行い、平成19年度開設を準備する。
  5. 5) 既設学部・学科の改組計画を検討し、平成19年度中の計画決定・申請にむけて準備する。
2.大学経営
  1. 1) 教育改革の提案の中で提示している「本学の教育ビジョン」の実現に向けて具体化する初年度であり、これらの改革プランおよび計画を以下の大学経営領域別課題の遂行を通して実現することを最重点課題とする。

    【参考】「本学の教育ビジョン」

    1. 福祉社会開発を基礎に、人間の尊厳に基づく福祉コミュニティとネットワーク形成を担う指導的人材育成のアジア拠点をめざす。
    2. 多様な専門領域から新しい時代の福祉を総合的に探求し、時代のニーズに応える教育を開発・創造する。
    3. 地域社会に根ざした学びのネットワークを形成し、学生・大学院生・教職員が主体的に学びあうキャンパス創りをめざす。
  2. 2) 管理運営面では、現学長の任期満了に伴う次期学長選挙を行い、新長期計画と教育改革を推進するために大学運営体制をさらに改善、強化する。
  3. 3) 新たな大学・教育システムを推進できるよう教員の人事制度について検討を行い、新長期計画と教育改革の確実な推進をはかるため、毎年の事業評価の精度を上げる。
3.大学教育改革
  1. 1) 教育力の向上や学生への個別的対応、学生の主体的な「学びあい・育ちあい」の重視などを柱とする教育改革の提案に基づいて、決定した事業を実施するとともに、改革の具体化を推進する。
  2. 2) 経済学部創立30周年事業に取り組み、学部改革の推進に生かす。
  3. 3) 情報社会科学部の10周年の成果と課題を明らかにし、学部改革を推進する。
  4. 4) 大学院改組のための文部科学省への申請・届出、ならびにその改善・充実をはかる。
  5. 5) 科目精選とオンデマンド授業の推進を始めとした通信・通学融合の促進をはかる。
  6. 6) 選定されたGPプログラム(大学院含む)の着実な遂行と新たなGP取得をはかる。
  7. 7) 東アジアを中心とした優秀な留学生確保と新たな国際交流事業展開のための調査を行い、新たな制度を検討する。
  8. 8) 学生相談体制について改善する。
  9. 9) 学生の安心安全の向上と教育改革(長期計画)の進捗をふまえ、必要なキャンパス環境整備を推進する。
4.大学学生募集事業
  1. 1) 現行の学生募集構造に対応した積極的な募集を強化し、平成17年度水準の志願者を確保する。
  2. 2) 特に卒業生と連携した地域特別対策、地域高校訪問、高校出張講義などの学生募集事業を、2つの「ふくし」パンフの有効活用とあわせて強化する。
  3. 3) ホームページを始めとする学内外の広報活動を強化する。
5.大学就職・キャリア開発事業
  1. 1) 全卒業生に占める進路の決定率について80%をめざす。
  2. 2) 福祉経営学部の第1期卒業生の高いレベルでの就職実績をめざす (90%以上) 。
  3. 3) 重点企業・施設、優良企業・施設への就職実績を向上させる(目標未定)。
  4. 4) 公務員・教員の就職実績を向上させる(目標未定)。
6.大学通信教育部事業
  1. 1) 新設する精神保健福祉士資格課程対応、在籍学生数の増加に対応する学習指導体制の 整備、実習履修者の増加に対応する実習指導に万全を期す。
  2. 2) 特色GP事業の推進と連携しオンデマンド授業の科目の新規開発、スクーリング会場の増設など教育内容を充実し、平成17年度入学生規模の安定的な学生確保をめざす。
  3. 3) 平成19年以降の大量の定年退職者層(「団塊世代」)を、本学通信教育事業の新たな「顧客」として獲得する方策につき、教学機関等との連携を図りつつ、21世紀初頭における学園戦略の重要な一環として位置づけ、検討する。
7.大学研究事業
  1. 1) 研究戦略を策定する。
  2. 2) COEプログラムの着実な遂行をはかる。人材育成には特に力点を置く。
  3. 3) 福祉人材(福祉専門職)の先進的養成プログラムの研究と開発を行う。
  4. 4) 学術フロンティア事業の継続を準備する。
8.専門学校事業
  1. 1) 平成17年度確定する長期計画における改革プランの確実な推進を行う。
  2. 2)  財務構造の改善を中心とした中央福祉専門学校社会福祉士科夜間課程ならびに高浜専門学校介護福祉士学科の抜本改革プランの検討、推進を行う。
  3. 3) 専門職養成の高度化(新たな専門職養成の可能性ならびに大学事業との融合等)プランの検討、推進を行う。
9.付属高校事業
  1. 1) 経営指標を上回る生徒募集に万全を期す。
  2. 2) 「青年期一貫教育」を学園教学戦略の柱の一つとして発展させる。高校教育と大学教育を有機的に融合する新たな教育体系を構築する。
  3. 3) 国公立大学や難関私大への進学を図る指導を強める。
  4. 4) 進路・学習のモチベーションを高めるキャリア開発指導の充実を図る。
  5. 5) 授業改革をいっそう推進し、基礎学力の向上を結実させる。学習不振者に対する学習指導を強める。
  6. 6) 建学理念を反映した「学園倫理」について研究し、生活指導業務の質を高める。
  7. 7) インターネットの活用など不登校生徒の学習指導の新たな方策を検討・実施する。
  8. 8) 教科指導力・進学指導力・マネジメント能力の向上を図る計画的な人材育成(研修)事業を開始する。
  9. 9) 保護者等への学校運営全般に関わる情報公開と説明の責任を果し、連携の基盤強化を図る。
  10. 10) 「短期計画」「事業計画」に基づく(特に「目標」に基づく)運営管理を強めるとともに、管理職・主任等への中堅・若手の登用を図る。
10.社会連携事業
  1. 1) 21世紀学園ビジョンと平成18年度からの学園・大学新長期計画の短期計画および中期計画の策定にあわせ、福祉文化創成事業をはじめとするネットワーク事業を展開する。その際、福祉関連施策の動向に留意するとともに、選択と集中という視点から既存事業の具体的評価に基づく再編などに着手する。
  2. 2) 知多地域や高浜地域における取り組みを活かし、名古屋から知多半島(三河を含む)を 中心に長寿社会に係わる「プラットホーム」(仮称)を形成する。推進にあたっては、愛知県をはじめとした「健康長寿」に関する取り組みとの連携に留意する。
  3. 3) 同窓会や提携自治体等と連携した生涯学習型全国ネットワークの具体化を行う。
  4. 4) フィールド学習の抜本的強化のために、本格的なCO-OP教育実現の具体化を行う。
  5. 5) 全国的な福祉・医療人材養成の新たな動向を踏まえ、福祉・医療人材養成を軸とする先駆的な事業の展開を図る。このため、社会福祉総合研修センターの再編等、名古屋における事業拠点施設の拡充を検討する。
  6. 6) 短期および中期の基本計画の取りまとめにあわせ、推進体制など必要な見直しを行うとともに、あわせて事業評価手法を確立する。
11.支援組織
  1. 1) 卒業生システムの改善に努めるとともに、学園重要顧客データベースの整備に向け必要な協力を行なう。
  2. 2) 地域同窓会の活性化に必要な支援を行なうとともに、経済学部および福祉経営学部卒業生の組織化をはかる。
12.情報化事業
  1. 1) 全学統合型WEB・DBシステム「新日本福祉大学ネットワーク基盤」の構築と安定化をやや長期の課題とし、平成18年度は、平成19年度4月に予定される通信教育部機能の本稼動にむけて、ネットワーク基盤の「基本型」開発を遅滞なく完了すること、次期「教育研究情報環境」更新に向けた要件定義と業者選定を進めること、を目標とする。
  2. 2) eラーニングにおいては、「メディア教育センター 教育デザイン研究室(以下、IDラボ)」を軸に、オンデマンド授業や対面授業教材の開発支援体制を確立する。
  3. 3) eラーニングを活用した自学自習のためのパソコン学習環境について必要な整備を行う。具体的には、パソコン台数不足の改善、起動時間の短縮、校地間の帯域の拡大を段階的に行う。
  4. 4) 新たな学園ネットワーク基盤の核となる次期「統合情報システム」の要件定義を事務局全体で行う。システムは、同窓生や重要支援者を含む顧客DB、法人DB、福祉関連DBなどと一体化させ、戦略的な情報分析機能の実現を目指す。
  5. 5) セキュリティが強固なネットワークシステム、管理体制の確立をさらに進める。
  6. 6) 学生、教職員、同窓生、重要支援者等を対象にしたICカードシステムの導入を検討する。
13.学園経営(人事・業務)
  1. 1) 職員人事制度の新制度への完全移行を行う。
  2. 2) 平成19年度以降の事務組織改革プランを提起する。
  3. 3) 短期計画完成年度(平成20年度)における教員人件費総枠の管理指標を設定し、 それを実現する政策ならびにその管理体制・手法を検討・確定する。
  4. 4) 3)を前提としつつ、教育改革促進のための新たな人事制度プランを提起する。
  5. 5) 役員制度(評価制度を含む)プランを提起する。
  6. 6) 監事監査規定等条件整備、ならびに内部監査システム、体制を整備する。
  7. 7) 平成18年度予算編成とあわせて確定される次期経費削減計画を実施する。
14.学園財務
  1. 1) 厳しい経営環境の下、収益性の維持・改善にむけた取組を進める。
    消費支出の半分を占める人件費について、管理の適正化を図る。
    施設維持に係わる管理コストを中心に経費の削減を追求する。
    学費制度や学費水準の適正化などについて検討を進める。
    通信通学融合教育における新たな学費制度・学費水準を検討する。
    外部資金導入を追求する。
  2. 2) 短期計画の実施に向けて、資金調達方法の多様性を検討する。
  3. 3) 財務の安全性に対する一層の取り組みを進める。
    事業の収益力(新規事業等の可否)を審議(評価)する仕組みを整備する。
    マネジメントサイクル(PDCAサイクル)による迅速な経営改善を進める。
  4. 4) 社会信用力の向上と経営の透明性を高める。
    実質流動資産の増加を進める。
    財務情報の開示等の改善を行う。
    学校法人会計基準の改定に伴う必要な取り組みを進める。

W.予算の概要

予算書概表・予算説明 参照

以 上

CGI