社会福祉発達史Ⅰ

科目名	社会福祉発達史Ⅰ

単位数	学年配当	開講期間	担　当　教　員
2	1	前期開講	伊藤文人

テーマ

近代資本制社会における社会福祉の歴史的形成過程とその社会的機能を理解する

科目のねらい

＜キーワード＞
大学で受講するということ、学ぶということ　　社会（伝統社会／近代社会／現代社会）と社会福祉との関係を歴史的に考察すること
福祉国家とそのエージェントとしてのソーシャルワーク専門職の盛衰史

＜内容の要約＞
本講義は、「社会福祉」と言われるようになった一連の領域が、（１）どのような時代背景（社会変動）で、（２）どのような人物や団体・組織（国家を含む）の動機、思想、利害、のもとで形成されてきたのか、（３）それが人々（民衆）の生活にどのような影響を与えてきたのかを講じます。現代社会は、「少子高齢化」「貧困格差社会」（社会変動）のもとで、「生きずらさ」を感じて「傷ついた」人々を生み出しています。社会福祉は、こうした人々に対する、個人／団体／国家を媒介とした社会的救済制度やサービスの総体であると位置付けることができるかもしれません。本講義は、こうした疑問に答えるための視点と方法を＜歴史的時間軸＞（＝物事を捉える時間的スパン）を50年、100年単位で巨視的に捉えていくことで、＜いま、現在＞の課題を解決していくための糸口を英国（や他の欧米社会）の歴史を題材にして探ります。＜現在の問題から将来の解決策を想像していく鍵は歴史のなかにこそあります＞。本講義は社会福祉全体を視野に入れた歴史を講じます。歴史的視点を学習すれば、皆さんが受講される他の科目の課題の半分以上が理解できる素地ができます。なお、社会福祉発達史Ⅱは、これを踏まえて日本の社会福祉の歴史的展開過程をやや詳細に講じます。社会福祉発達史Ⅰ＆Ⅱを受講しておくと、社会福祉の全体の構図が立体的に理解できるようになり、社会福祉原論Ⅰ＆Ⅱ、社会福祉方法原論やその他の専門科目の内容がより理解されやすくなるでしょう。

＜学習目標＞
社会福祉の歴史的形成過程をぞれぞれの時代区分毎に理解できる
社会福祉を学ぶための基盤的認識枠組を理解できる（課題への歴史的接近方法）
社会福祉政策とソーシャルワークが社会で果たす機能を理解することができる

授業のながれ

オリエンテーション①ーー大学とは何か？大学で学ぶとはどのような意味か？社会福祉発達史での学習とは何をすることなのか？（目的・目標・方法・評価方法）
オリエンテーション②ーー大学とは何か？大学で学ぶとはどのような意味か？社会福祉発達史での学習とは何をすることか？
福祉発展の巨視的構造①：伝統社会における「社会福祉的なるもの」を理解する
福祉発展の巨視的構造②：近代社会における「社会福祉的なるもの」を理解する（その１）
福祉発展の巨視的構造③：近代社会における「社会福祉的なるもの」を理解する（その２）
福祉発展の巨視的構造④：近代社会における「社会福祉的なるもの」を理解する（その３）　ケン・ローチ「1945年の精神」から考える
福祉発展の巨視的構造⑤：現代社会における「社会福祉的なるもの」を理解する　ケン・ローチ「1945年の精神」から考える
イギリスにおける社会福祉の形成①：貧民問題の発生とエリザベス救貧法の誕生
イギリスにおける社会福祉の形成②：新救貧法（改正救貧法）の展開
イギリスにおける社会福祉の形成③：民間社会福祉活動の展開（ＣＯＳとソーシャルセツルメント）
イギリスにおける社会福祉の形成④：貧困理解の変遷（個人的貧困から社会的貧困観へ）
イギリスにおける社会福祉の形成⑤：救貧法改革、自由党社会改良政策、ソーシャルワーク専門職の誕生
イギリスにおける社会福祉の形成⑥：総力戦と社会福祉（福祉国家の誕生）
イギリスにおける社会福祉の形成⑦：戦後の社会福祉の展開（貧困の再発見、サッチャー主義、コミュニティケア）
まとめと展望：日本の福祉発展への示唆と教訓（社会福祉発達史Ⅱへの橋渡しとして）

準備学習の内容・学ぶ上での注意

（１）開講中は講義に集中し、講師が毎回どのようなことを伝えようとしているのか、その「メタメッセージ」をキャッチするように努めてください。聴講後は、講義で触れられた内容を参考テキストや資料と照らし合わせてする作業（復習）を実施しましょう（「リフレクション（振り返り）＆トークボックス」に提示されている「問い」へ回答する）。これを「こつこつ」積み重ねていけば、「定期試験前の一夜漬け」的お勉強に依存することはなくなるでしょう。具体的な学習方法については、講義のなかでお話します。（２）講義の時には、高校生が使用する世界史の副読本（「図説世界史」帝国書院、900円）を毎回使用しますので購入してください（講義トピックスの史的背景を理解するためです）。（３）授業中の私語は厳禁です（ただしディスカッションの時間は大いに議論してください）。（４）講義内容で分からないことがあれば、講義終了後直接聞きにきていただいても構いませんし、メールで内容を送信していただいても、できるだけ回答はします。ただし、後者の場合は、必ず要件名、学生番号、所属学部学科、氏名を明記した上でメールを送信してください。勉強の質問なら大歓迎です。（５）講義は基本的にテキストとレジュメを併用します。前者のテキストは、社会福祉原論Ⅰ＆Ⅱでも継続して使用できるものです。（６）毎回授業後にリアクション・ペーパーを執筆してもらいます（Google classroom経由）。リアクション・ペーパーを毎回書いておくと、自然に「書くちから」が身につきます。これは定期テスト対策としても有効です。

事前事後	学習内容	時間数
事前	講義レジュメを事前に提示しますので、各自それを読んでおくこと。分からないところはチェック！	15
事後	教員が講義中に話した歴史的事項や専門用語は、すぐにテキストの＜索引＞を利用してその意味や背景を調べて、テキストには付箋を貼りましょう。そうした作業を積み重ねないと立体的に物事を捉えることはできません。テキストやその他の資料に依拠しながら「リフレクション＆トークボックス」にチャレンジしましょう。	15

本科目の関連科目

社会福祉原論ⅠⅡ、社会福祉方法原論ⅠⅡ、社会保障論ⅠⅡ、公的扶助論など、考察対象が広く、扱う内容も抽象的な科目を履修する必要性が学生諸君にはありますが、そういった科目を学習していく前提条件として、社会福祉発達史Ⅰ・Ⅱは、有効な視点と方法を提供するでしょう。

成績評価の方法

期末試験（筆記・Web・レポート・最終授業内）	80％
授業内でのレポート・課題等	0％
その他	20％

①Google classroomを併用します。開始30分以内に出席を完了しない場合は、欠席扱いになるので注意してください。 ②毎回のリアクションペーパーの内容も成績評価に関連します（出席を含めて最大20％）。 ③試験問題は、講義レジュメにある「リフレクション＆トークボックス」に書いてある内容から出題される可能性が高いので事後学習で取り組んでください。

テキスト

■テキストを使用する
■レジュメを使用する
□未定（最初の授業で指示する）

＜著者＞児島亜紀子・伊藤文人・坂本啓毅編著　＜テキスト名＞『現代社会と福祉』　＜出版社＞東山書房