科目名 障害者福祉論

単 位 数 学年配当 開講期間 担 当 教 員
2 2 前期開講 金山 正美

テーマ
障害者総合支援法が施行された。この間、障がい者の法制度がめまぐるしく変化しているが、法制度だけの理解だけでは、ソーシャルワーカーに必要な基礎知識とはならない。「障がい」の捉え方、国際的動向、「自己決定」等の理念、施設・地域生活の理解など、総合的に学習する。

科目のねらい
<キーワード>
ICF(国際生活機能分類)  障害者基本法
障害者権利条約  福祉の思想
施設生活と地域生活支援の実際

<内容の要約>
 私は、長年、身体障がい者の支援に携わってきた。特に障害者支援施設(入所)と、次に地域生活支援センター(地域)の部署において、ソーシャルワーカーとして、生活しづらさに対する支援にあたっていた。施設では重症心身障がい者、地域では高次脳機能障がい者の支援が主であった。重症心身障がい者は、重度の知的障がいと肢体不自由が重複した障がいである。重い障がいであるため、支援者自身も支援方法を見出せず困るケースがある。従って、ADL(日常生活動作)に着目し、そこから支援が組み立てられるケースが多い。特にオムツをしない取り組みにより、排せつ行為を媒介とした非言語的コミュニケーションにより生活の質の向上に取り組む方法を行った。重い障がいになればなるほど環境の豊かさがコミュニケーションを豊かにしていく。施設生活において、ケアワークを中心とした一人の人としての発達を保障していく人権擁護の極みがここにある。  高次機能障がい者は、主に交通事故の後遺症として、記憶障がい、注意障がい、遂行機能障がいなど、認知に関するものと社会的行動障がいが伴うものがある。日常生活動作の障がいとは異なり、身体に障がいがなくても社会環境とかかわり合う時に、現れる特徴がある。従って、身体的な障がいが回復した場合、認知障がいによって記憶の出し入れが困難になり、複雑な仕事を求められる元の職場に復帰できなかったり、外からは分かりづらいため、周りの人たちとのトラブルが起きる。支援では、福祉サービスの活用や年金を受け取ることも考えられるが、現行の制度を上手く活用できない問題を抱えている。また、国は、三障がい(身体、知的、精神)以外認めていないため、高次脳機能障がい者には、やむを得ず精神障害者保健福祉手帳を取得せざるを得ない。          以上の事例は、障がい者支援制度の一部に過ぎないが、ソーシャルワーカーとして支援を開始した場合、障がい特性、手帳制度、福祉サービスの種類、地域生活、障害者運動まで幅広い知識が求められる。障害者福祉論では、こうした総合的な理解が得られるよう講義を行う。

<学習目標>
障がい者のニーズと障がい福祉計画の関係について理解することができる。
障がい者関連の施設実習を行う場合、生活問題をミクロからマクロにかけてその背景を理解できるようになる。
障がい者当事者が、権利を主張する中で、多くの思想が生まれてきたプロセスを理解できる。
障害者総合支援法が理解できる。
障害者虐待防止法・障害者差別解消法について理解できる。

授業のながれ
1. オリエンテーション
2. 第1章 障害の概念と理念
3. 第2章 障害者の生活実態・ニーズ
4. 第3章 国連・障害者の権利条約と障害者権利保障の歴史
5. 第4章 障害者福祉の法
6.      〃
7. 第5章 障害者の福祉サービス(障害者総合支援法と障害者支援)
8.      〃
9  第6章 障害者の福祉と労働
10. 第7章 障害者の所得保障
11. 第8章 障害者の社会生活参加
12. 第9章 障害児の福祉サービス
13.      〃
14. 第10章障害福祉の整備計画と障害者運動
15. 第11章障害者福祉現場で働く職員

準備学習の内容・学ぶ上での注意
 健康科学部の学生は、障がい者との関わり方は多様である。社会福祉士の資格を取得したい気持ちを持っている学生、リハビリテーションの場面における障がい者理解の知識を得たい学生もいるであろう。  障がい者支援は、高齢者支援ではみられない出生前からはじまる全てのライフサイクルで起きる様々な障がいによる生活のしづらさに対して行われる。従って、大学2年時で、全ての現場の雰囲気を理解することは困難であるが、自分の関心のある領域について、障がい当事者、家族が執筆した手記を中心に、事例を通して学ぶことは可能である。また、新聞を通して最新の情報を入手できる。特に、国連で承認された「障害者権利条約」は、2014年日本においてもの批准された。「障害者差別解消法」が2016年4月から施行されている。「合理的配慮」がされない場合、「差別」と認定されることになる。次に、難病患者医療費助成の見直し、また、障害者虐待防止法が施行されてからの自治体の対応課題についても紙上に掲載されている。常に幅広く関心を持ち続ける必要がある。  次に、講義中は私語は慎むこと。他の学生の講義を受ける権利を妨害していることになる。ソーシャルワーカーの卵として、基本的権利を奪うことはしてはならない。

事前事後 学習内容 時間数
事前 テキストの章ごとの予習 1
事後 レジュメの確認 1

本科目の関連科目
 社会福祉方法論はもとより、福祉行財政論、福祉計画論などを学ぶことにより、制度改革の意味を理解することが可能となる。また、就労支援サービスに関しては、今後ますます障がい者の社会参加を促進する際に重要な知識となる。

成績評価の方法
期末試験(筆記・Web・レポート・最終授業内) 100%
授業内でのレポート・課題等 0%
その他  0%
2単位の講義であるので、前期終了後、持ち込み不可の試験を実施する。

テキスト
■テキストを使用する
□レジュメを使用する
□未定 (最初の授業で指示する)
<著者>峰島厚・木全和己・冨永健太郎編 <テキスト名>「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」 第4版 <出版社>弘文堂



(C) Copyright 2021 Nihon Fukushi University. all rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。