科目名 外国史特講

単 位 数 学年配当 開講期間 担 当 教 員
2 2 前期開講 望月 秀人

テーマ
西洋史におけるナショナリズムの意義と限界

科目のねらい
<キーワード>
ナショナリズム  想像力
民族  国家
植民地支配

<内容の要約>
 ナショナリズムは一般的に使われる単語であり、とりわけ学習指導要領では愛国心という形で最近重視される傾向にある歴史用語でありながら、その具体的な基準は曖昧であり、翻訳の難しい言葉である。本講義では、人種主義、国民主義、民族主義、国家主義といった概念の差異に配慮しながら、ナショナリズムの定義と範囲の問題を考えたい。そのうえで、主としてアンダーソン『想像の共同体』論に依拠する形で、中世から現在に至るナショナリズムの歴史的展開をたどることで、その意義と限界を明らかにしたい。その際、主な事例を西洋近代史から採るが、絶えず日本史との比較を試みたい。そうした講義を通じて、ナショナリズムの安易な濫用にも安易な否定にも距離をとる態度を学生に身につけさせることが、本講義の課題である。

<学習目標>
ナショナリズムや愛国心の意義と限界を冷静に論じることができる。
西洋近代史の展開をナショナリズムの展開という視点から、整理して理解できる。
西洋近現代史の特色を、西洋前近代史との差異という視点から、特徴づけられる。
西洋近代史との比較において、日本近代史を理解できる。
イデオロギー装置の役割について、理解できる。

授業のながれ
ガイダンス:シラバスの説明、ナショナリズムの一般的な定義、学習指導要領における愛国心とナショナリズム、グローバル化時代との関連
ナショナリズムとは何か:要素による定義の系譜(フィヒテ、スターリン、スミス)とその批判(ルナン、アンダーソン)
ナショナリズム以前1:封建制とエトノス
ナショナリズム以前2:絶対王政と主権
ナショナリズムの近代的起源1:環大西洋革命とヨーロッパ
ナショナリズムの近代的起源2:環大西洋革命と中南米
ナショナリズムを喚起する装置1:文学作品の事例
ナショナリズムを喚起する装置2:地図や記念碑の事例
帝国主義と公定ナショナリズム:多民族帝国における国民化
帝国主義と植民地支配:人種主義と国民主義、国家主義
世界大戦の衝撃:総力戦と国際法の展開1
世界大戦の衝撃:総力戦と国際法の展開2
グローバル化時代のナショナリズム:国民国家の限界
地域の時代:EUと補完性原理、地方分権
ナショナリズムの将来:ナショナリズムの意義と限界

準備学習の内容・学ぶ上での注意
 事前学習としては、テキストや高校世界史教科書の熟読、新聞等による時事問題の知識の取得を指定したい。近年、インターネットなどで根拠薄弱な知識をお手軽に仕入れ、分かった気になる学生が多いが、大学生、とりわけ教職志望の学生には、根拠のしっかりした文献を読んで内容を理解するだけの能力が求められる。加えて、教職志望の学生であれば、世界史の教科書を手元に置き、確認したいことがあれば頻繁に手に取る態度が望ましい。教科書を理解できなければ、生徒にそれを教えることもできないはずである。さらに、新聞等で時事問題に関する知識を身につけることで、問題関心を養うことも重要である。最後に、講義を受講する態度としては、私語や徘徊などにより、他人に迷惑をかけるような言動は慎むことを求める。遅刻・欠席した場合には、他の学生にノートを見せてもらい、独力で勉強しなければ、試験に対応できなくなると考えるべきである。

本科目の関連科目
 日本史や外国史、政治学などとの関連が深いため、それらを履修していることが望ましい。

成績評価の方法
課題・小テスト
レポート
中間試験
定期試験
そ の 他
0%
30%
0%
70%
0%
  成績評価の基準は、レポート30%、定期試験70%とする。レポートは、大学に所属する歴史教員の書いた歴史学の本を出典とした上で、特定の地域や時代のナショナリズムの意義と限界を論じることとする。字数は2000字以上とする。当然のことながら、出典を明記し、盗作などは厳禁とする。定期試験は紙媒体のみ持ち込み可とし、講義内容に即して論述で回答するものとする。得点は講義内容に即して回答した部分で付けるため、望月と異なる立場から自分の意見を書いたとしても、その部分では減点も加点もしない。

テキスト
■テキストを使用する
□レジュメを使用する
□未定 (最初の授業で指示する)
<著者>ベネディクト・アンダーソン <テキスト名>定本想像の共同体 <出版社>書籍工房早山(9784904701089)



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