科目名 | 厚生経済学 |
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単 位 数 | 学年配当 | 開講期間 | 担 当 教 員 |
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4 | 2 | 後期開講 | 丸山 優 |
テーマ |
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一人ひとりの、また、社会全体の幸福=福祉の増進のための経済学 |
科目のねらい |
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<キーワード> ウェルフェア(幸福=福祉=厚生) 資源配分上の効率性 分配上の公平性 ウェルフェアの基準 市場の失敗 <内容の要約> 一人ひとりの、また、社会全体のウェルフェア(福祉=厚生)を高める道を客観的に明らかにしようとするのが経済学であるが、ウェルフェアなり福祉=厚生なりは、もともと「幸福」を意味する以上、いろいろな面をもち、消費手段の量や所得で代用しきれない。では、その増減をどう測定したらよいか――そこから、数学的な経済学が生まれた。まず古典的な功利主義が生まれ、次いで近代経済学を生む「限界革命」が生じ、さらに、その内部批判としてミクロ経済学が成立した。ひとまず経済学史を兼ねて、今日のミクロ経済学の源流を訪ね、そこからミクロ経済学の構造を読み解く。 ミクロ経済学は完全市場の虚構から「最善の道」を明らかにし、現実の経済のメカニズムを接近する。だが、現実には常に市場を欠くか完全市場に抵抗する部分が常に存在し、「市場の失敗」が常に存在する。したがってまた、徹底した市場化でこれを処理しようとする動きも生まれる。厚生経済学は、そうしたダイナミズムを解明する。 続いて、経済発展との関連において、所得格差拡大の共存、少子・高齢化、社会保険・社会福祉などの社会保障の行き詰まりなどの現代福祉国家の切実な諸問題にどう切り込んだらよいかを明らかにする。 さらに、有権者の個人的選好を集計して社会的決定=選択に至る過程に官僚や圧力団体が介在するメカニズムを解明し、また、「囚人のディレンマ」論に象徴されるゲームの理論などの経済理論の新展開を採り込んで、社会的決定=選択のあるべき姿を模索する。 <学習目標> @ミクロ経済学の教科書の内容を、より深く理解することができる。 Aミクロ経済学に関わる公務員試験問題に――計算問題であれ正誤問題・論述問題であれ――比較的容易に正答を見出すことができる。 B複雑で難解に見える問題でも一つの単純明解なモデルを組み立てて切り込む術を知り、社会問題に切り込む経済学的アプローチ(解明方法)を理解することができる。 C福祉国家・福祉社会の在り方について、自分なりの意見をもつことができ、さまざまな論者の見解を論評することができる。 |
授業のながれ |
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T 厚生経済学とは何か 1 経済学のなかの厚生経済学の位置と役割 2 「福祉(ウェルフェア/ウェルビーイング)」の意味の移り変わり U 厚生経済学から見た経済学の歴史 3 ピグーの厚生基準(旧厚生経済学) 4 所得の再分配による社会的厚生(ソーシャル・ウェルフェア)の増進 5 効用とは何か――ベンサムと古典的功利主義―― 6 パレートの厚生基準(新厚生経済学) 7 エッジワースの契約曲線 8 ヒックス=カルドアの厚生基準――補償原理―― 9 費用・便益分析――補償原理の応用―― 10 サムエルソンによるヒックス=カルドア基準の批判 11 厚生経済学の基本定理 12 社会厚生関数における効率と衡平――配分的正義と分配的正義―― 13 リバタリアニズム vs. 平等主義 14 ロールズの社会厚生関数 15 センの潜在能力アプローチ(新々厚生経済学) 16 中間総括(中間試験を含む) V 市場の失敗――原因と対策―― 17 外部性/外部効果 18 コースの定理をめぐって 19 公共財 20 収穫逓増/費用逓減産業――公共料金―― 21 情報の非対称性――逆選抜とモラル・ハザード(「倫理の欠如」)―― W 幸福=福祉の経済学 22 所得格差と貧困 23 ローレンツ曲線とジニ係数 24 少子・高齢化 25 少子化の原因と対策 26 保険 27 社会保険と社会福祉――社会保障―― 28 「民主主義の経済学」は存在しうるか X 厚生経済学の展開 29 社会的選択の理論 vs. 公共選択の理論 30 ゲームの理論と厚生経済学 |
学ぶ上での注意・担当教員からの希望 |
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@ミクロ経済学の教科書を使ったか、現在使用中の学生であることが前提である。教科書――使用済みのもので構わない――を傍らに置き、どのページが授業内容に照応するか確かめて、常に参照すること。 A板書する内容が説明の基本なので、配布するレジュメの保存だけでよしとせず、ノートを用意して、正確に書きとめること。 B授業中でも時折、解き方を解説したうえで計算問題を出題する。頻出問題から精選した設問のつもりなので、必ずまず自ら解いてみて、さらに復習し、解き方を習得してほしい。 Cこの科目を置く経済学部は日本ではほとんどない。その理由は、厚生経済学が不要だったり学生の学力にそぐわない高度な内容であったりするからではなく、ミクロ経済学で取り扱われる建前になっているからである。だが、角度を変えると透明になることがよくあるように、案外分かりやすく、「ああ、そうだったのか」と膝を打つようなことが多い内容であるはずなので、面倒くさい議論をする講義と決めつけて敬遠するよりもむしろ、本学経済学部の挑戦を積極的に受け止めて、得意科目にする決意で臨んでほしい。 |
本科目の関連科目 |
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成績評価の方法 |
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中間試験30% + 定期試験70% |
テキスト |
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□テキストを使用する ■レジュメを使用する □未定 (最初の授業で指示する) |
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