日本福祉大学 経済学部

外 国 史

単位数学年配当開講形態教員名
22集中 木 勇 夫

テ|マヨーロッパの身体的経験を追体験する

講義のねらい
 現代人は自分自身の身体について、 じっくり考えることが許されない。 具合が悪くなって初めて、 健康な身体のありがたみが分かるという体たらくである。 皮肉なことに 「健全な精神は健全な身体に宿る」 という名文句が、 私たちの身体を前期的な荒々しい資本主義社会の価値観に縛りつけてきた。 最も身近なものでありながら、 最も疎遠になってしまった身体をめぐる観念の歴史を、 もっぱらフランスに事例をとりながら、 さまざまな角度から検討していく。
 重点を置くのはフランス史だが、 この国の経験はあくまで具体例として引き合いに出されるだけである。 公衆道徳や衛生観念など、 従来は歴史の素材と見なされなかった抽象的な概念を好んでとりあげるように見えるが、 問題となるのはつねに学生諸君のからだそのものである。 諸君の経験の背景を知るために、 日本の近代史にもしばしば言及する。
 とくに今年度は、 17・18世紀の宮廷社会から説き起こし、 19世紀のブルジョワ社会の成立を軸として、 20世紀の大衆社会にまで問題の領域を広げていくつもりである。 いまや私たちの常識と化してしまった、 それだけに学問的な考察の対象にもされなかった主題を、 あえて提示する。 歴史の新しい領域、 すなわち教官の独自の視点から構築された身体史の成果に注目してほしい。

講義のながれ
1〜3 精神と身体: (1) 時間の観念
             (2) 空間的想像力
             (3) 身体論と身体史
4〜6 ヨーロッパの身体文化: (1) フレンチ・パラドックス
                   (2) バレエと劇場空間
                   (3) 宙を舞う<からだ>
7〜9 歴史と身体: (1) 大いなる閉じこめ
             (2) フランス革命の意義と限界
             (3) ジェンダーにまつわる近代神話
10〜12 自然と身体: (1) アントロポメトリー
               (2) 国民体育運動
               (3) 近代オリンピックの誕生

学習条件・履修上求められるもの
 他人のことは批評できても、 自分を見つめることは難しい。 身近な主題ではあるが、 なじみの薄いヨーロッパ史にそくして身体の歴史をたどるので、 できるかぎりテキストと参考文献に目をとおし、 疑問点をぶつけてほしい。

成績評価
 採点では、 ヨーロッパ身体史の用語の説明に40%、 小論文形式の論述に50%、 そして出席に10%を配当する。

テキスト高木勇夫 『宙を舞う〈からだ〉〜フランス身体文化史序説』 叢文社
 (ただし2002年7月刊行予定につき 講義同始時点で購入希望をつのる)



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