厚生経済学

単位数	学年配当	開講形態	教員名
4	2	通年	丸　山　　　優

テ┃マ

福祉概念の変遷を見据えて､福祉社会の経済学を構想する

講義のねらい

　講義は､厚生経済学の歴史に焦点を絞った経済学史の部分と､自由主義社会あるいは福祉国家に関連する社会認識に焦点を絞った制度論の二つに大別される｡いずれにおいても､数式を用いたフォーマル／テクニカルな説明は最小限にとどめ､｢なるほど､そういうことだったのか｣と膝を打ってもらえるように平易な解説に努める｡
　厚生経済学史では､Ａ・スミスからＡ・センまでの流れを眺望して､経済学への新たな関心を喚起する｡特に功利主義との結合によって貧困化したといわれる経済学が｢民主主義の経済学｣でもあることに注目する｡
　制度論では､現代的厚生経済学を解説しながら､福祉社会の後ろ盾となる社会制度と公共政策を展望する｡特に､ロールズやセンの議論を引き継いで､所得格差の是正を中心とした分配理論をどう改めるべきか検討する｡

講義のながれ

Ⅰ　　厚生経済学の概要
Ⅱ　　厚生経済学の歴史～福祉概念の変遷～
　Ⅱ-1 　アダム＝スミスと経済学の誕生
　Ⅱ-2 　ベンサムと功利主義
　Ⅱ-3 　功利主義と経済学
　Ⅱ-4 　マーシャルとピグー～旧厚生経済学～
　Ⅱ-5 　ロビンズやケインズによる厚生経済学の批判
　Ⅱ-6 　パレートと新厚生経済学
　Ⅱ-7 　社会厚生関数とアロウの不可能性定理
　Ⅱ-8 　ロールズによる功利主義批判
　Ⅱ-9 　センによる厚生経済学の内在的批判
　Ⅱ-10 　今後の厚生経済学
Ⅲ　福祉社会の経済学
　Ⅲ-1 　社会的選択の理論
　Ⅲ-2 　公共選択の理論
　Ⅲ-3 　｢民主主義の経済学｣の問題点
　Ⅲ-4 　福祉国家の経済学
　Ⅲ-5 　平等と自由の再検討
　Ⅲ-6 　福祉社会
Ⅳ　福祉社会を支える政策
　Ⅳ-1 　｢市場の失敗｣ (1) ～古典的事例～
　Ⅳ-2 　｢市場の失敗｣ (2) ～現代的事例～
　Ⅳ-3 　産業政策 (1) ～古典的事例～
　Ⅳ-4 　産業政策 (2) ～現代的事例～
　Ⅳ-5 　社会政策 (福祉政策)
Ⅴ　まとめに代えて

学習上の留意点

　新たに開講する科目なので､既存のテキストを使用せず､毎回手探りで講義を進める｡したがって受講生には､ノートをとって､さらに情報・知識を補ったうえで､可能な限り質問や批判を浴びせてもらいたい｡
　

成績評価

　通年 1 回の筆記試験 (持込自由) で成績を評価する｡ただし､質問や批判が書面で寄せられた場合､その内容に応じて加点の形で成績評価に反映させる (ノート提出の機会を設けるかどうかは検討中)｡
　

テキスト

アマルティア・セン『福祉の経済学』岩波書店