医療経済学

単位数 学年配当 開講形態 教員名
4 2 通年 中 西 悟 志

テ┃マ 少子高齢社会における医療の役割とその改革方向

講義のねらい
 1776 年、 現代経済学の源流にあたる 『諸国民の富』 が出版されました。 この本の著者は、 いうまでもなくアダム・スミスですが、 当時の彼は、 経済の専門家としてではなく、 一級の道徳哲学者として知られていました。 スミスが問題としたのは、 人々の幸福をもたらすために、 どのようにすれば豊かな社会が作り出せるかという問題だったのです。
  『諸国民の富』 が出版されて約 200 年の後、 医療経済学の古典的論文 「不確実性と医療の厚生経済学」 が発表されます。 ここで 「厚生経済学」 とは、 人々の幸福・福祉を研究する経済学を意味しています。 この論文の著者は、 20 世紀を代表する経済学者であるケネス・アローです (私見ですが、 ケインズなんかよりアローの方がずっと優れた経済学者です)。 アローは、 人々がより幸福に生きるために、 医療はどのように生産され、 提供されなければならないか。 そのためには、 どのような条件が充足される必要があるかを検討したのでした。 このように医療経済学は、 人々の幸福を研究する経済学の流れの本流に位置しているのです。
 本講義では、 医療経済学の入門として、 わたしたちが暮らしている日本の医療システムの概観とこれからむかえる超高齢社会に備える方策について考えてみたいと思います。

講義のながれ
 1 医療と経済、 その関連
 2 日本人の生と死
 3 誰が医療を提供しているのか
 4 誰が医療を使用しているのか
 5 誰が費用を負担しているのか
 6 医療支出はどうして増えるのか
 7 患者にとって医療とは何か
 8 医療における医師の役割
 9 医療保険の役割
10 医療保険の病理
11 医療サービスの生産と費用
12 病院の競争戦略
13 病院で働く人々
14 新しい医療技術の出現と普及
15 日本の医薬品産業
16 医療システムの変革をめざして
17 世界のなかの日本医療
18 高齢者の医療と介護
19 医療はどの程度役立っているのか
20 日本の医療の将来像

学習上の留意点
 医療経済学は比較的若い学問分野で、 未発達・未整理な領域も多いのです。 さらに医療制度は大きな改革が進行中でもあります。 教科書を理解すれば、 それで十分というわけにはいきません。 雑誌や新聞の記事を読む必要もありますし、 あたらしい統計情報を知る必要もあります。 それらの資料は適宜講義時間中に配布し、 説明します。 ですから、 講義には必ず出席するように。 また、 講義内容について学生諸君と議論したり、 レポートを提出してもらったりしたいと思います。 自宅での勉強時間を十分に確保してください。

成績評価
 成績は、 講義時間中の発言、 レポート、 定期試験を総合して評価します。 講義内容を理解するのは当然重要ですが、 自分の考えを、 筋道だって、 他者に伝える能力を高く評価します。
 

テキスト 漆 博雄編 『医療経済学』 東京大学出版会、 1998 年


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