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地域の未来をビジネスでつくる―「地域課題解決」を仕事にする企業の挑戦と大学の学び

地域の未来をビジネスでつくる―「地域課題解決」を仕事にする企業の挑戦と大学の学び

2026年3月22日、総合政策学部のオープンキャンパスでは、総合政策学部開設記念トークセッション「地域の未来をビジネスでつくる――社会課題解決を仕事にする企業の仕事と大学の学び」と題して、NIPPONIAのブランドで古民家再生を通じたまちづくりを全国展開している株式会社NOTEの藤原さんをお迎えしました。
藤原さんからは、地域の空き家問題や人口減少といった地域課題を、ビジネスを通じて、逆に新たな社会的な価値創造のきっかけにしていく取組についてお話いただきました。また藤原さんからは、これからの課題解決には、学部分野を超えた幅広く総合的な知識や経験が必要であること、単に課題を解決するだけではなく「課題を解決し続ける仕組みづくり」も重要であるとのご指摘もいただきました。
続いて、学生ともに様々な地域活動を「『地域デザイン』ゼミ」として展開している総合政策学部(仮)の宮國康弘講師から、地域での人と人とのつながりから、地域の課題解決と新たな価値創造を両輪で進める取り組みについてお話いただきました。その後、藤原さんと宮國講師で、トークセッションを行いました。話題は、まちづくりやビジネスを通じた社会課題解決、学生に対する期待、そして資本主義の未来にまでおよびました。(記事の後半はオープンキャンパス終了後に「トークセッション延長戦」として収録したものです)

SPECIAL GUEST

株式会社NOTE 代表取締役

藤原 岳史

「NIPPONIA」事業で古民家再生を軸とした地域再生を全国展開。持続可能なまちづくりを牽引する地域創生の第一人者。テレビ・新聞などメディアでも多数紹介。

総合政策学部(設置届出中)

宮國 康弘講師

予防医学の観点から、地域のつながりと健康の関係を捉える研究者。
長野県飯田市を中心に、学生とともに地域社会をより良くする地域デザイン活動を積極的に展開している。

トークセッション

地域への「入り方」

司会

お二人ともありがとうございました。総合政策学部で大事にしている学びのポイントは、地域での学びです。こういう地域での課題解決の仕事や学びの魅力をお二人にはトークセッションでお話いただきました。とはいえ地域での活動には難しい面もあります。たとえば、 NOTEさんが地域で古民家をホテルにするときとか、古民家にはもともと住んでる人がいらっしゃったわけですから、元住民や近隣の方の中には、そこをホテルにするとかいう時に躊躇されたりされる方もいらっしゃると思います。また宮國さんの「地域デザイン」ゼミ活動の中では、学生というよそ者と、地域に長年住んでいる人との距離感というか温度差があるということもあるのではないかと思います。お二人にお伺いしたいのですが、地域、いろんな思いとか、いろんな文化、いろんなつながりのある地域に、よそ者として入る場合、よそ者を送り込む場合に、大事にされていることとか、そこから生まれる可能性とか、どういうふうに捉えておられるかなというのをまずお伺いしたいと思います。

藤原

わたしたちは基本的にはよそ者として入っていくんですけど、一番大切にしているのは、その地域の過去、たとえばその地域がなぜここに人が住み着くようになったのか、という視点です。この祭りは、この神社はいつから何を祀っててあるのか、多分そこにその地域のDNAがあると思うんです。そこを徹底的に調査します。地域の人にとっては地域の文化は刷り込まれていて、当たり前すぎて気づいてない状態。それを我々は、町史とか市史とか町の歴史を調べる。ここは縄文時代からあって、江戸時代どうだったのか。その辺に地域のアイデンティティがあって、そこからキーワードがつけてきます。それをベースにして、「あなたたちの地域はこれが誇りですよね、アイデンティティですよね」って確認をする。私たちが入って地域の本質を変えるんじゃなくて、別の確度の光を当てる、当ててみませんかっていう提案をします。そうしたなかで結構、地域の方との距離感っていうのは近づくのかなって思っています。

宮國

外から来ているので、何かを持ち込もうとする意識でいくと、ダメですね。関係性がないまま入っていこうすると、もう全然ダメです。地域の人たちとの関係性がまずあって、あの人だったら来なよ来なよっていうようなものがまずないと、地域の方も面倒くさいって感じの雰囲気になっちゃう。まずは自分たちで足を運んだりして、地域で大事にしてる文化などを大事にして、祭りに行ってみるとか、一泊して話を聞くとか、そういうのがあって、関係性の構築がまず先にないと、手前でも失敗しちゃう。なので関係性をつくるところを一番大事にしています。あと地元の方々も、「なんでこんな何もない地域に来るんだよ」っておっしゃるんですけど、学生から自然いっぱいあるじゃんとかでそんな話をすると、「自然っていい」って気づくんです。そしたら若い学生たちから「自然界隈」(なんとか界隈って言葉があるらしいですけど)っていう言葉があるって言って、自然そのものをインスタとかSNSとか撮って、アップする。そういうのを地域の住民がみて「あ、そっか。うちって何もないと思ってたでけど、あるんだな」って気づくっていう側面がある。学生にとっても地域にとっても、いろいろいい要素が生まれるような状況を作ることが大事だな、って思っています。

地域での学びを「楽しむ」

司会

ありがとうございます。やっぱり私たちが行って「何かサービス提供しますよ」みたいな形だけとか、「学生が来ますから何とかしてください」っていうだけじゃなくて、地域の側とか受け入れ側に対するリスペクトが大事、ということですね。受け入れ側の地域が持ってるものから私たち自身も学ぶ、というような姿勢がめちゃくちゃ大事だと改めて思いました。お互いそうした学び合う関係みたいなものとか、お互いのリスペクトみたいなところをどういう風に作っていけるかというところが、すごく大事なポイントだなと思いました。そこで次の質問ですが、学生が地域の中に入っていくために、学生に持っておいてほしい力や知識というものはあったりするんでしょうか。

宮國

事前に勉強しておかないといけないっていうのは、私の場合あんまり意識してなくて、とにかく楽しむ力っていうことの方が大事だと思います。地域の人と喋るとか、イベントごと楽しむとか、その場所そのものを楽しさを見つけるっていうか、楽しむ力がないと「行かされている」感じになってしまう。楽しむ力っていうのが一つキーワードかなと思います。

藤原

私もほぼ一緒かなと思います。やっぱり関心を持ってその地域の方と関わろうとするかどうか。「その祭りなんでしてるんですか」とか、聞いてみて話を続けていくと、地域の人もうれしく感じる。自分たちが大切しているものに関心を持ってもらえるっていうところから、地域の方との共感が生まれる。そこからいろいろな地域の方からも意見が出てくると思うので、そういったところを一緒に学んでいくということが結構重要なのかなって気がします。

大学で何を学ぶか

司会

ありがとうございます。それこそ総合政策学部が提供したい学びです。地域に出て学びながら、そして楽しみながら、そこからフィードバックして持ち帰って、感じていることはまとめて発信するとか。そこからまた勉強するというのでもいいと思っています。そうしたいろんな学びが提供できる場所にこれから総合政策学部をしていきたいなというふうに改めて思いました。ありがとうございます。公開でのトークセッションの時間の最後に、お二人から、大学4年間のうちにこういうことを学んでおいてほしいなとか、お話いただけますか。

藤原

そうですね、たとえば行政がどういうふうに考えて、どういう風に制度作っていくのかとか、知っておいた方がよい。あとはコミュニケーション。先ほどから話がでているように、地域とのコミュニケーションを取るためにどういった心構え。ファイナンスの知識も大事ですね。結構そこは重要なところで、お金が回らないと持続していかない。単純なことなんですけど、ここを基礎から,学んでいただければ、自分たちがやっていることの価値にもつながる。それが対価としての給料にもつながります。大学時代にそういったところを十分に学ぶことが大切なのかなというふうに思います。

宮國

こういうの振られた時にいつもこの話してるんですけど、何に見えますか?(絵を見せて会場に質問→絵は表示可能?著作権上大丈夫か確認)。何か見えるか。何だろう。なんか波打ってる感じ?人の顔に見えた人はいますか?反転させると…おお、人の髪ね。はい、すごい。これをアメリカの先住民という人もいれば、モコモコの服を着ている人という人、向こう側の洞窟に向かってるっていう人もいれば、ウサギという人もいれば、鳥という人もいる。おばあちゃんという人もいれば、若い女性が斜め後ろを向いてるっていう人もいる。
言いたいことは、同じものを見てるはずなのにみんな違ったように見えるということ。自分の視点、自分の経験から見ている。大学っていうところは違う地域で育った人たち、あるいは先生たち、地域の人たちがいっぱいいて、それぞれ見え方が違うはずで、同じ現象でも全部見え方が違う。ぜひそういうのを学んでほしいなと思います。学ぶという意味は、人とたくさん関わる、人の話をたくさん聞く。いっぱい刺激を受けて、自分の見方だけじゃない、他の見方もたくさん見ていくというのが非常に大事かなと思います。そうすると違う見え方が熱して、とっても世界が広がるので、そういうのを経験してほしいなと思います。

司会

ありがとうございます。僕はもうまとめるまでもなく、うまく宮國さんにまとめていただいたと思います。いろんな経験ができる学び、いろんな経験ができる学部にしたいと思っています。

(ちょっとディープな)トークセッション延長戦

地域住民を巻き込むソーシャルビジネス

司会

オープンキャンパスはとても興味深い話をお聞きできました。ありがとうございました。ここからはオープンキャンパスでのトークセッションの延長線ということで、お二人ともう少し突っ込んだお話ができればと思います。さて「総合政策」っていうと、なかなか行政と近いところに思われがちなところもあったりします。課題解決をするのは行政だけではない、といいながらも、実際はビジネスで社会課題解決するには、面白さもありますが難しい面もある。そのあたりからお話をお伺いできればと思います。宮國さんは,会社潰したこともあるということなので、会社を潰したことのある経験から、こういうところがソーシャルビジネスの難しさであり面白さだ、っていうところをお伺いしていいですか。

宮國

私の失敗の場合、ちょっと背伸びしすぎたかなって感じがありました。私は会社をどんどん大きくしたかったんです。社会課題解決ってきっとビジネスになり得るだろうと思ったんです。だけどビジネスになりにくいからこそ、税金とかが投入されているような面があるので、うまく仕組みができてないと成功はなかなか難しい。なので、ちょっとその反省という意味では、身の丈にあったことをちょっとずつやって、大きくというよりは、個人で生計立てられるような状況を目指す、というやり方の方がよかったかな…という思いがあります。なのでビジネスの大きさというよりも、身の丈にあった事業規模というのをいかに意識しながら、社会課題の解決にも繋げるっていう視点が、とっても大事だったなと今は思っています。

司会

ありがとうございます。藤原さん、どうでしょうか。

藤原

そうですね。今のちょっとお話でいくと、我々、基本的には新しいまちでまちづくりを行っていくときに、ビークル(乗り物)って言ったりするんですけど、同じ器に乗る台というか、会社を作る。それはNPOの場合もあるんですけど、基本的には株式会社を作る。このとき作る会社の規模は、実は資本金の額が,平均100万から200万です。100万ぐらいだったらおじいちゃんおばあちゃん10万ずつ持ち寄ればできちゃうんですよ。もちろん開発には2億くらい必要になって、地元の金融機関さんとかから中心に資金調達するんですけど、最初の100万、200万がとても重要なんではないかと思っています。
ソーシャルインパクトというかインパクト投資(解説※1)みたいなことって、ほっとっても起きません。地域の社会的価値を創造する可能性があるのに、ほとんどの金融機関はすぐには多分お金出さないです。そういう意味で、まずは小さくはじめて、それを呼び水にする。さらに、本来資金を出すべき行政や金融機関を説得してお金を引き出すために、地域としてこういうビジョンを持って、ここ十年後こうなっていきたいね、こういう計画を進めていきたいねっていう、まちづくり計画なるものを作るんです。わたしたちはまちづくりのプロとしてそれをサポートし、具体的なレポートを作成します。開発規模に対する我々の報酬としては、10%とさせていただいています。
でも「まち」っていっきに再生するわけではないじゃないですか。丹波篠山の城下町ホテル(リンク)も、だいたい10年ぐらいかけて順次開発を進めてきいます。地域で開発プロジェクトを進めるなかで、地域内で自発的にそれを進めるひとが増えてくるんです。最初は、我々がプロジェクトマネジメントに入って進める。その時絶対に、地域の関心事ある人とか面白そうみたいな人を横に連れて一緒に進める。そうすると、いっぺん横でやると、ちょっとコツやり方わかってきたぞっ感じになる。じゃあ2回目のプロジェクトを一緒にやるってなったときは、一回目と比べて我々の仕事量減るので、減った部分、例えば仕事量が半分減ったならば、10パーセントあった我々の報酬分の半分の 5パーセントを、あなたの報酬ね、ということで渡す。で、今度3回目ってなったときに「俺もちょっとほぼほぼ一人でできるかも」って言ったら10パーセントどうぞ、って感じになる。そのとき、その人はの地域再生のプロになっている。

宮國

なるほど。

司会

NOTEさんって、全国でプロジェクトされているんで、1社でものすごい大きなプロジェクトを運営されてる感じですけど、実際藤原さんたちは、NOTEだけでやってるわけではなくて、地域のいろんな人に利益を分配しながら。巻き込む人をどんどん増やしていくっていう仕組みづくりをされていまね。最初のトークセッションのときに、「社会課題を解決し続けるしくみづくりが必要」って話をされてましたけど、まさにその継続できる仕組みを、地域の人を巻き込みながら、地域に合わせて展開されている。

ソーシャルビジネスの社会的評価

司会

お話の中で少し、社会的な意義みたいなものをどう評価するかみたいなところ、ソーシャルインパクトとかインパクト評価の話もありました。宮國さんに、そのあたりの専門家としてお伺いしたいのですが、やっぱり、社会課題解決とか社会的価値の創造っていうのってすごく大事ですが、なかなかその評価測定が難しい。こういうソーシャルビジネスやソーシャルインパクトの評価みたいなもの課題、というものについてどのように捉えていますか?

宮國

事業を評価する場合、量的に評価することが多いですけれども、そもそも社会課題解決や社会価値創造について、それを評価できる土台となるデータがないんですよ。なので質的にその人たちがどんなふうに変わったのかなっていうのを住民さんたちの声を聞いていくみたいな評価方法をとることが多いのですが、他方で,それこそ、さっき人のつながりみたいな話しましたけど、人のつながりが豊かな高齢者とかって認知症とかになってないんですね。さらに寝たきりにもなっていない、みたいな成果を示すことはとても重要です。一見、ふわふわしたようにみえるプロジェクトやその成果が、実際の健康にも関係するっていうのがデータ上で明らかになった場合、たとえば一人要介護状態にならなかったら行政は200万円浮くんですよ。2人抑制できると400万ですね。例えばこれ10人だと2000万円ですね。100人ってなったらどれぐらいかとか、1000人とかなったらどれぐらいかみたいなことを考えながら、プロジェクトを進めることが大事です。もともとかかってた費用がこんなに減らせましたよ、と。そして、プロジェクトの成果が明確ならば、その費用節約できた分の一部を頑張ってる人たちにバックしませんかみたいなことも考えることが可能になる。内閣府とかpay for success (解説※2)という取り組みをやり始めてるんですけど、そういう成果と報酬を地域で循環させる仕組みを作っていって、その人たちが健康とかウェルビーイングとか豊かになっていくことで元々かかってた額が減りましたよ、その一部をまた地域づくり回しましょうね、っていうそういうサイクルを回していくような状況が作れたらとってもいいなと思います。でも、その土台となるにはやっぱり行政が持っているデータです。データを一緒に使わせてもらうとかが必要になります。また、多部門のセクターごとのつながりをもっと促していかないと、そういう状況はなかなか生まれないなって思います。民間とかだけじゃない、行政だけでもないみたいな、非営利セクターみたいなところも一緒になって、循環性の仕組みっていうのがきっと必要だと思います。

司会

データ分析の必要性のお話がありました。これから総合政策学部の学び、とくに社会調査士養成課程での学びで、そういうデータ分析の力はみにつきますか?

宮國

そうですね。調査は、どうやってデータを集めるか、ということか大事になります。それこそ今AIがすごいスピードで発展している感じなので、そういったものを学びながら、地域にあるふわっとした情報をどんなふうに数値として捉えられるかっていう力をつけるのは、やっぱり社会調査士の取得に関わる学びが一つポイントになるんじゃないかなと思います。

司会

宮國先生担当科目の「健康格差社会論」(解説※3)も割とデータ分析とかそういうのを中心とした学びですね。いま宮國先生がお話になった社会調査やデータ分析からの社会課題解決の学びができるカリキュラムは総合政策学部で用意してます。今のは健康面の話が中心でしたが、地域の活性化みたいなところで、現状のインパクト評価などに対する課題感とか、何か期待感みたいなところ、藤原さんの方で,何かあったりしますか。

藤原

全国でまちづくり系に近い学科やられてるところって、どっちかっていうと観光の振興というところから入ってきてるケースが多いんですね。でも「観光」だけの視点だと、プロジェクトを評価する指標が合わないんところが出てくるんです。たとえば「観光」でみると、それを単なる観光の入り込み数でカウントするんですけど、そうじゃなくて、もう少し関係人口(解説※4)みたいな話で、例えばもう少し地元の方であったりとか、そういったところで結構定期的に関係を持ってくださっている人のカウントって取るべきじゃないか、と思っています。先ほどの話でいうと地域活性化で、健康、例えば高齢者の死亡が減りましたとか、こどもの「引きこもり」が減りましたとか、それも大事な指標ですね。これやっぱり多元的な評価軸が必要で、3つとか4つの指標で社会的なインパクトを評価をしていくんだみたいなことが必要なフェーズに来てるんではないかなと思っています。ここは民間でできないんですね。大学と行政が作り上げる必要がある。そういう意味で今回作られる、総合政策学部に、期待する部分があります。また我々自身もそういう大学とか行政とかと連携しながら、たとえばNIPPONIA(リンク)でいえば、北海道から沖縄まで、今どういう状況なのか、同じようにアンケート取って分析してみるとどうなるかとかいうものも、やってみたいですね。

司会

なるほど。どうしても事業の評価となると、金銭的なというか財政的な指標に還元しがちなところはありますけど、関係人口の話もそうですし、幸福のこともそうだし、長寿のこともそうだし、いろんな指標で事業の成果を図る必要がありますね。そのあたりはやっぱり大学として研究しなければいけないところも大きいんじゃないかなと思います、それこそ総合政策学部でいろんな社会評価のこととか、いろんな価値があるぞということも含めていろんな教育なり研究なりが展開していきいたいですね。

まちづくり企業から「まちづくり業界」へ

司会

たとえば、NIPPONIAのプロジェクトで地域を活性化が成功して、その地域はうまく回るかもしれない。けれども、他の地域全てにNOTEさんが手を入れて、全てNOTEさんの力で日本を再生できるわけではない。「地域を活性化させる」というところと、社会全体マクロな視点での社会課題解決や社会価値創造ということの関係を、どういうふうに考えておられるかというところを、少しお話をお伺いしたいと思うんですがいかがでしょうか。

藤原

その地域での中でやっている部分と、もう少し広い、こう「日本」っていうところで見たときに、我々がやっていることっていうのは、表現としては「キャップストーン」(解説※5)を作る。たとえばその地域が50年後こうなったらいいねっていう、ピラミッドの頂上というか、北極星というか。これができると、たぶんそれに沿って裾野が多分広がると思うんですね。たとえばNIPPONIA自身は、地域の安く売らない価値を作っていく。そこからそこに関わる人にもお金が循環していく。それは給料にも関わっていく。NIPPONIAでアンケートを取ると、普通のホテルだと、たとえば「宿泊に伴って何に期待しますか」っていうと、美味しい料理とか、サービス、品質とか接客とかって話になってくる。だけどNIPPONIAのお客さんはそこが一番低くて、地域の文化であったり、人との地域でのコミュニケーションであったり、その地域や歴史とはどういうアイデンティティなのかっていうところに一番関心がある。彼らは要するに1泊で6万円を払って、その一部が,寄付ではない形で、地域の人たちに行くことがわかってるんですよ。なんかそういった意味では、規模は100室も200室もできないんです[MY5.1]けど、まずここまでビジネスとして行けるよっていうのを示すことができる。それを見て他の人が「じゃあもうちょっとカジュアルな価格でこういったものができたらいいんじゃないか」ってやってみて、どんどん競合会社が広がっていくみたいな。こういった形で「まちづくり業」が広がっていければいいなという思いです。そんな感じで「ちょっと儲かってんだ、うちも参入しようかな」みたいな話で、競合他社が増えて「まちづくり業界」という業界を作っていく。それが産業になっていく。自分たちはこういう形で会社と存続してるし、うまいこといくっていうのと儲けるのと違うかもしれないですけど、ある一定経営できている。そこに対して社員たちが幸せになってくれる。それをみて「まちづくり」に参入するひとたちが増えていく、そういう広がりを目指しています。

司会

社会課題解決や社会価値創造を目指す「まちづくり業」を作る、という視点はとても面白いですね。話は大きいかもしれませんけど、新しい経済の形、というものにもつながりますね。

古くて新しい金融のかたち

司会

「まちづくり」をビジネスとしてやるとすると、やはり「お金」の話はついて回ります。お金の話で言うと、最初のところでちょっとお話があったと思いますが、会社を立ち上げるのときに、地域の方が10万とかポンと出してくれる可能性がある、という話があったりすると思うんですけど、それって結構あることなんでしょうか。

藤原

あると思いますね。銀行とかからお金を借りるとすると、もちろん担保とか個人保証使わないといけないみたいな話がよくありますけど、そんなのも古くて、そうじゃなくて、僕らがほとんどやってるのはプロジェクトファイナンス、要するにこのプロジェクト楽しそうでしょ、これむっちゃ意義あるでしょっていうことをベースにお金出してもらうっていう、方式。これって、利益重視じゃなかったとしても、事業が続く蓋然性があるのであれば、金融機関はそれをあてにして資金を出してくる。でも融資の形だと、貸付期間が短い。僕らだと最長借入期間が15年なんですよ。銀行からしたら15年でもまだ長い方。でも僕らは,結構短いなって思っていて。なぜかっていうと100年とか1000年続いてる地域の再生を、たったか5年しか15年でしか見ないって言うのって結構きついですね。これが30年になるとほぼ補助金なくても資金調達できると思います。100年だと子どものスマホ代金みたいな金額で支払えたりするかもしれない。こういう仕組みってよく調べてみると、昔の庄屋さんがそれをやってるんですよ。あの、あそこに橋を作ろうとか、この水路を作ろうって。それってたぶん、庄屋さん一人の人生でみると採算は絶対合わないんですよ。でも自分のこども・孫の代になって帰ってくるから、っていう感じで投資してるっていう。百年のスパンでやってる。

司会

なるほど。江戸時代とかの頼母子とか無尽とかもそういうところありますね。やっぱり少しずつみんながお金出し合って、そこで助け合いでものを作ったり。しかも長期的にはそのリターンがいずれ戻ってくるっていう仕組み。何かそういう頼母子とか無尽みたいなものを現代版にどう作るかっていうところもすごく大事だと思いました。宮國さんも、地域で活動するときに資金調達した、という話をされていましたね。

宮國

お金集めっていう意味では、さっきの関係人口の今の話にも何かつながりそうだなと思うのが、いかに共感を得るかっていうところです。儲けるぞみたいな感じよりはやっぱり面白そうだねとか、いいよね、みたいな、それこそプロジェクト型っていうか楽しさ応援したくなるみたいな感じの共感をどこまで得られるかっていうのがとっても大事だと思っていて。共感を得るためには、データだけじゃダメなんですよ。データは説得力はあるがつまらない。そこに共感を得られるかっていうところには、ストーリーが加わってこないと反応がないんです。データだけじゃない、その裏にある、質問に回答してくれた人の、なんとかさんの顔を思い浮かべながら、このデータを語るとか、こんなエピソードがあるんだよねっていうのを喋った上で、データがポンってあると、あ、なるほどねって感じになる。
共感を得る。そこから応援してくれる資金みたいのが集まってくる、っていうような順番かなって感じがします。

司会

とても大事な話ですよね。やっぱりデータだけじゃなくて、顔の見えるデータ分析というか、地域とのコミュニケーションがあって、かつその背景にあるストーリーがどのように見えるか、っていうことも大事だ、という話だと受け止めました。そう考えたときに、藤原さんのお話にあったように、実は今の金融の仕組み、資金調達の方法自体、今日の社会的ニーズ少し合わないところもあって、それをもしかしたら変えていく可能性や必要性があるのかもしれないっていう発見にもつながる。人が残した「空き家」というものはミクロな問題、それを地域でどう再生するかっていうのはメゾレベルの課題ではありますけど、じゃあそれをどう持続的に解決していくシステムを作るか、っていうことになると、いまの金融システムでいいかどうかっていうマクロの話になりますし、それこそ地域と行政、民間と行政という枠組みを超えていかなければならない、というさらに大きな課題もみえてくる。

総合政策学部への期待

司会

お二人のお話を聞いて、改めて、地域と学術研究を往復する総合的な教育みたいなものがやっぱり必要だなと、と思いました。まとめとして総合政策学部に期待することをお伺いしていいですか

宮國

「福祉大学」ある総合政策学部っていうのが結構大事だなって思っています。やっぱり冠は「日本福祉大学」。そこの中の総合政策っていう分野をどう確立していくのかなっていうのが、チャレンジングなところかなって思っています。それを実践していくことで、きっとこの大学なりの、総合政策っていうのがきっと見えてくるだろうなと思うし、その意味を問い続けないといけない。また学生と一緒に教員も学びながらやっていかないといけないんだろうなって思っています。期待することっていうよりは、そういうのにチャレンジしていかないといけないなっていう、自分の頑張らないとなっていう思いが出てきたっていう感じです。

藤原

総合政策学部のパンフレットに記載してあるキャッチフレーズ、「未来を変える主人公になる」っていうところ、これは我々自身も結構共感するところです。我々の言葉で言うと「未来資本」。今は「未来資本」は可視化できてないけども存在する。それを皆さんでしっかり見える化して、それを見える化したものを未来に届けていく。これが結構重要なんじゃないかなと思います。そういった「未来資本」の在り方を含めて、ポスト資本主義みたいなことも考えることもできる。資本主義そのものは変わらなくても、その在り方や捉え方について、若い人たちに感じてもらって、考えてもらって、彼らが社会に出たときに新しい発想で、新しい資本主義の形ってものを担ってほしい。そういう人材を輩出する学部として、日本福祉大学総合政策学部へは大変期待をしていますし、我々自身も、もし何かあの力になれる、協力できるとこあれば、一緒になって新しい社会を作っていきたいなと思います。

宮國

お金集めっていう意味では、さっきの関係人口の今の話にも何かつながりそうだなと思うのが、いかに共感を得るかっていうところです。儲けるぞみたいな感じよりはやっぱり面白そうだねとか、いいよね、みたいな、それこそプロジェクト型っていうか楽しさ応援したくなるみたいな感じの共感をどこまで得られるかっていうのがとっても大事だと思っていて。共感を得るためには、データだけじゃダメなんですよ。データは説得力はあるがつまらない。そこに共感を得られるかっていうところには、ストーリーが加わってこないと反応がないんです。データだけじゃない、その裏にある、質問に回答してくれた人の、なんとかさんの顔を思い浮かべながら、このデータを語るとか、こんなエピソードがあるんだよねっていうのを喋った上で、データがポンってあると、あ、なるほどねって感じになる。
共感を得る。そこから応援してくれる資金みたいのが集まってくる、っていうような順番かなって感じがします。

司会

ありがとうございます。地域やビジネスの話から、そして最後に大きな経済のあり方の話までしていただきまして、本当に楽しかったです。ありがとうございました。

用語解説

  • 解説1
  • ソーシャルインパクト
    プロジェクトを通じた社会課題解決から生み出される、社会・環境に対する具体的で測定可能な成果 
  • インパクト投資
    ソーシャルインパクトと経済的リターンの両立を目的とする投資
  • 解説2
  • pay for success
    行政が事業の成果(アウトカム)に応じて対価を支払う成果連動型の事業手法。事業開始時の資金は民間資金などが担い、あらかじめ設定した目標が達成された場合にのみ、公的資金が支払われる。
  • 解説3
  • 健康格差社会論
    総合政策学部の開講科目。所得・雇用・教育などの社会経済的条件の違いが、人々の健康状態や寿命にどのような影響を与えるかを統計的手法も用いて学ぶ科目。
  • 解説4
  • 関係人口
    特定の地域に住んではいないものの、継続的に関わりを持ち、応援や支援、交流を行う人々を指します。観光客でも移住者でもない「第三の人口」として注目されている。
  • 解説5
  • キャップストーン
    プロジェクトの最終的な理想像・完成形。

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