• コラム

「災害福祉」が地域を強くする

「災害福祉」が地域を強くする

防災から自立・生活再建へ

 今年6月、社会福祉法が改正され、災害時の福祉支援が新たな段階を迎えた。これまで災害対策というと、命を守るための避難や救助、インフラの復旧が中心であった。しかし近年の大規模災害では、それだけでは被災者の生活は守れないことが明らかになった。

 能登半島地震では、高齢者や障害者、生活困窮者、外国人など、もともと生活上の課題を抱えていた人ほど避難生活が長期化し、自立・生活再建にも大きな困難を抱えた。福祉施設も被災し、介護や障害福祉サービスが停止したことで、地域全体の暮らしにも大きな影響を及ぼした。災害は新たな支援ニーズを生み出すだけではなく、平時から抱えていた課題が災害によって一気に深刻化させる。

 こうした教訓を受け、昨年5月には災害対策基本法等が改正され、救助の一つに福祉サービスの提供が位置づけられた。さらに今年6月の社会福祉法改正では、災害時の福祉支援体制の整備が明確に位置づけられ、災害派遣福祉チーム(DWAT)の法定化や、防災と地域福祉の連携が盛り込まれた。

 この改正の意義は、「福祉が災害を支援する」ということだけではない。

 平時から地域で相談支援や見守り、権利擁護、地域づくりなどを進めている福祉関係者が、災害時にも切れ目なく被災者を支え、生活再建まで伴走する仕組みへと発展させようとしている点にある。こうした考え方を「災害福祉」という。

 災害福祉とは、避難所での介護や福祉サービスだけではない。被災者一人一人の生活課題に寄り添い、住まい、就労、健康、人とのつながりなどを総合的に支えながら、自立と生活再建を後押しする取り組みである。

 東日本大震災や熊本地震、能登半島地震では、社会福祉協議会を中心に、災害ボランティアセンターや生活支援相談員、地域支え合いセンターなどが被災者に長期間寄り添い、孤立防止やコミュニティーの再生にも大きな役割を果たしてきた。

 災害は行政だけでは対応できない。企業、NPO、ボランティア、地域住民など、多様な主体が力を合わせることが不可欠である。福祉は、それぞれをつなぎ、人と人との関係を再構築する「媒介者」としての役割を担う。

 これは企業経営にも無関係ではない。近年、企業では事業継続計画(BCP)の策定が進んでいるが、従業員やその家族が安心して暮らせる地域であってこそ、企業活動は継続できる。地域の福祉力は、地域の防災力であるとともに、地域経済を支える基盤でもあるのだ。

 人口減少と高齢化が進む日本では、災害は繰り返されるだろう。そのたびに支援体制をゼロからつくるのではなく、平時から地域で築いてきたつながりや支え合いを災害時にも生かすことが重要だ。

 今回の社会福祉法改正は、その第一歩である。防災と福祉を一体的に進め、誰一人取り残さず、被災後も安心して暮らし続けられる地域をつくること。「災害福祉」は、持続可能な地域社会と経済を支える不可欠な基盤となる。

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高橋良太 福祉経営学部 教授

  • ※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2026年8月6日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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