• コラム

スポーツが紡ぐ共生社会

スポーツが紡ぐ共生社会

アジアパラ競技大会が地域に残すもの

 2026年、愛知・名古屋アジア競技大会に引き続いてアジアパラ競技大会が開催される。多くの人は競技やメダル獲得に注目するだろう。しかし、パラスポーツの国際大会が持つ価値は、競技成績だけではない。愛知・名古屋大会を契機として、地域社会にどのような変化を残すことができるかが重要である。大会は、アジア地域における障害者スポーツの発展を促進するとともに、障害への理解を深め、障害のある人の社会参加を推進する機会として期待されている。

 スポーツ庁の調査によれば、20歳以上の障害のある人の週1回以上のスポーツ実施率は35.0%であり、一般成人の51.7%と比べると依然として低い状況にある。スポーツに親しむ機会や環境は改善されつつあるものの、誰もが気軽に参加できる状況には至っていない。愛知・名古屋大会を一過性のイベントとして終わらせるのではなく、地域で継続的にスポーツに参加できる環境づくりにつなげていくことが求められる。また、大会開催を契機として進められる施設のバリアフリー化や情報保障の充実も重要である。障害のある人が利用しやすい環境は、高齢者や子育て世代など、多くの人にとっても利用しやすい環境となる。

 私はこれまで、パラバドミントンをはじめパラスポーツの指導や普及活動に携わってきた。その中で実感しているのは、スポーツには人と人、人と地域をつなぐ力があるということである。障害のある人とない人、子どもから高齢者までが同じ場所で活動し、交流することで、新たなつながりが生まれる。スポーツは競技力向上の手段であると同時に、社会参加や人と人とのつながりを促進する重要な機会でもある。

 例えば、近年、名古屋市では、障害の有無や年齢、性別、国籍などにかかわらず誰もが参加できるユニバーサルスポーツの普及が進められ、多くの区がユニバーサルスポーツのイベントを導入している。私自身も学生やスポーツ推進委員とともにユニバーサルスポーツの体験会や講習会に関わってきた。そこでは共に学び、新たなつながりが生まれている。こうした取り組みは、スポーツを楽しむ機会を増やすだけでなく、多様な人々が自然につながる地域づくりにもつながっている。

 愛知・名古屋大会の準備や運営を通じて、さまざまな出会いや関係団体の連携が生まれるだろう。大会そのものは7日間で終わる。しかし、その準備や運営を含め、そこで生まれた人と人、組織と組織のつながりは、大会後も地域の中で生かすことができる。行政、教育、福祉、医療、企業、スポーツ団体、地域住民が連携し、障害の有無にかかわらず誰もがスポーツや地域活動に参加できる機会を広げていくこと、その積み重ねこそが共生社会の実現につながる。人や組織のつながりと、それを支える地域の仕組みをいかに地域に根付かせていくか。それこそが大会後に問われる大切な課題ではないだろうか。

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Profile

兒玉友 スポーツ科学部 准教授

  • ※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2026年6月29日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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