図4 モバイルの画面の一部

6. モバイル導入による効果
 一般に福祉領域の情報化は, 福祉課などの管理部門で推進されるケースが多いが, 今回, 構築したモバイル情報環境により, 情報化が現場まで拡大されることで, 在宅ケアの川上から川下までトータルな情報化福祉が実現する. 開発したシステムは, 技術上の制約があるため, 委員会で取り上げられた, 理想とする機能を付加することができなかったが, 実証実験の結果, 個別ニーズの重視と事務作業の効率化が図られた. 具体的には次のような効果が認められた.

  1.  訪問時の各利用者情報のペーパーレス化
  2. モバイルとサーバーのデータベースとのリンクによる情報共有の迅速化とそれによる直行直帰業務の効率化
  3. 訪問時の情報の記録化による介護サービス計画の変更の迅速化
  4. コンピュータの活用による情報加工と分析の効率化
  5. 事務業務と訪問業務の分業化
    があげられる.

 


 特に今回の特長としては,2の緊急対応の迅速化と4の分析の効率化があげられる.
 2については, 各ヘルパーが各利用者の情報共有することにより, パート形態で勤務するホームヘルパーが直行直帰でも業務遂行ができ, さらに, 当社会福祉協議会が実施している 24 時間巡回サービスを支援する 365 日完全輪番体制で緊急対応が可能となるという点があげられる.
 3については, コンピュータ技術の活用と情報の蓄積と集中により, 各利用者の情報について, 時系列単位でのニーズなどのデータの分析と, その情報のモバイル端末への反映が一部可能になり, ニーズ変化の予測とそれに基づいたサービス開発が可能になったことがあげられる.
 4については, 情報共有の効率化だけでなく, 訪問後記入された特記事項などのサーバーのデータベースへのダウンロードにより, 介護記録の転記の事務作業が軽減し, 介護計画の変更, レセプトの作成などの作業を昼間に別の職員が一括して行うことが可能とがあげられる.
 5の事務の分業化が図られたことについては, 今まで訪問介護員が行っていた紙媒体記録のホストマシンへの入力業務が効率化され, 利用者ごとの提供表の総括の一部が自動化され, 自動化できなかった業務については, ホームヘルパーに変わる, ホストマシン担当の事務職員が集中的に行うことができるようになり, ホームヘルパーの業務の負担が減り, より利用者と関わる時間が増えることにつながった.
 このように実際に効果があがったことから, 本事業を先行的なモデルケースとし, 成果を全国に展開することも可能であろう.

2 今後の課題

短期的課題
  • サービス利用票など他の関連業務も対象とした総合化を推進 (ケアツールとして明確化)
  • 手書き文字のデジタル化 (入力の容易性追及)
  • モバイル情報環境を生かしたワークフローの創出 (業務改善)
  • 次期サーバーとのマッチングの問題  
長期的課題
  • 通信機能を搭載して, 同期が外出先でできる工夫が必要 (リアルタイム性の追及)
  • Web ページとの連携 (サーバー側の問題)  
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